Short Story:小寿朗とリトルコジ
小寿朗が仕事についてしばらくすると、壁にぶつかり始めた。小寿朗は悩み、鬱積してくる自分を自覚した。
悩むまま帰り道にある公園のベンチに寝転んだ。公園で寝ていたところ、リトルコジという少年に起こされる。リトルコジは、小寿朗の心の声が聞こえるのか、不思議な能力を持っていた。今考えていたことが、もうリトルコジに伝わっている。小寿朗の気持ちをよく理解してくれている。
仕事に行き詰まったときに、公園に立ち寄ると、どこからともなくリトルコジが現れた。リトルコジと雑談していると、心のコリが溶けて行くのが分かる。
小寿朗の会社で政府部門と取引している部署がある。その部署が汚職で摘発された。飛び火のように小寿朗の部署にも及んでいた。同期の上司に喧喧諤諤(けんけんがくがく)方針を議論した。上司は現実主義者だった。会社の他部署に先駆けて、火消しに走った。
小寿朗には正義感があった。腫瘍の一部を残すようなことをしたくはなかった。小寿朗は同期の上司と対立し、強く根こそぎ悪弊を取り除きたかった。言い合い、ぶつかりあうごとに不信感が増幅していった。
深夜まで働き、帰りに公園に立ち寄った。椅子に座って考え込んでいると、どこからともなくリトルコジが現れ、「もう少し背後に目を向けなさい」と伝えてきた。リトルコジは小寿朗に騒動の奥が見えるように、見るように語りかける。
翌朝、早く出社すると、同期上司が件の部署所属の後輩と話していた。後輩は汚職のあおりをもろに被っていた。見ると、後輩は辛うじて泣くのを堪えている。歯がゆさから興奮しているのが手に取るように分かる。同期上司は後輩が泥を被らないように苦心惨憺していた。
小寿朗はリトルコジの言葉を思い出していた。事情を察知した小寿朗は同期上司とタッグを組む決意をした。小寿朗は同期上司と後輩と三人で汚職の処理を進めていった。
無理強いをされていた汚職の当事者も、事の重大さを認識し、役員会を説き伏せに掛かった。役員は役員会で責任を取ることを条件に再起を図るよう進言した。役員会を終わったときには、汚職を指示した上役員と共に、役員を辞した。
連日来ていたマスコミも静かになっていった。小寿朗も同期上司も後輩にも新しい辞令がおりた。交付式で、三人は別々の部署に配属された。任地へ移動する前日、立ち話する機会があった。「今度、出張で本社に来たら、三人でラーメンでも。お酒のみながら・・・」三人ともラーメンが大好きだった。
小寿朗は新しい任地でも問題があると、公園で一休みしていた。ベンチに腰掛けていると、リトルコジが現れたが、小寿朗に優しく接するだけで声を掛けることはなかった。
3年が経ち、後輩が出張と言って小寿朗を尋ねてきた。会うと寂しげな表情をしている。「先輩が・・・」後輩は言葉を詰まらせている。同期上司は異動先でがん検診を受け、精密検査をした結果、ステージ4を通り過ぎていた。闘病空しく、同期上司は亡くなっていた。
あまりの寂しさに小寿朗は仕事帰りに公園に立ち寄り、ベンチに腰掛けてリトルコジを待っていた。しかし、リトルコジは現れなかった。しかし、小寿朗は心が解けて平穏になっていくように感じた。
2年が経過し、小寿朗は元の任地に戻ってきた。相変わらず、仕事はキツかったが、なんとか熟すようになっていた。ある日、難しい案件が持ち上がった。小寿朗は難しい案件を抱えたまま自宅へ帰っていく。途中で公園の側を通る。小寿朗の目にはベンチが浮かび上がった。小寿朗は無意識にリトルコジを探したが、夜燈に照らされるベンチしか見えない。
「もう、迷わないでしょう」リトルコジの声がするようだった。
---終わり
*改とリトルカイの物語