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習作・采女の夢

画像:NHK「光る君へ」第(不明)回から。

昔むかし、千珠(ちず)という少女がおりました。まだ幼さの残る7才でした。

父は豪族でした。祖父が武功をあげ、遠江の領地を与えられていました。祖父は千珠を良くかわいがってくれましたが、千珠の聡明さに気づき、ことあるごとに文字や花など様々なことを教えていました。

父もそんな千珠を可愛がり、慈しんでいました。母は千珠の秘めたる清明さに気づき、都から女房あがり「万寿」を招き、それとなく、洗練された振る舞いができるように育てていました。

万寿は都に上がった頃、田植えの神事で、「早乙女」を務めていたことがあります。千珠は行儀作法を教えてもらいながら、和歌についても多く教えて貰いました。

千珠が12歳になった時、都で悲しい出来事がありました。祖父がつかえていた公家がなくなってしまいました。父は急いで都に行き、公家の跡取りと縁を結びました。※「氏族」がいいのか。

千珠が15才になった時、天皇が代わりました。千珠は見め麗しく、清明さに磨きが掛かっていました。公家の跡取りは千珠の父に「千珠を采女として推挙する」ことを伝えます。

*「采女(うねめ)」は、奈良時代において天皇や貴族に仕えた女性を指します。特に「采女」は、天皇のために特別に選ばれた女性で、年に一度行われる「采女の行事」に参加していました。この行事は、天皇のために神に祈りを捧げるために、特別な儀式が行われる重要なものでした。

源氏の君は、見目麗しい采女がいると聞き、3人の采女の日頃の様子を侍従にお聞きになられていたということです。

采女は、それぞれ、教養(和歌が詠える)と特技を持っていました。千珠は和歌を詠むことができ、お花にも長けていました。

千珠が廊下で小花(萩)を活ける担当をしていました。何を思われたのか、朝廷もないのに源氏の君が侍従を連れて近づいてきます。この廊下の向こう渡って行くと、親しき貴族の住まい。

源氏の君は千珠の傍で立ち止まり、萩の蕾を見て御座る。しばし、嘆息。なんぞ嘆息。ふと源氏の君は思い出したような素ぶりで、廊下の端で控えていた千珠を見やりながら。上の句を詠めと仰せになる。千珠は落ち着き、上の句を詠む。

「君慕い 薄紫の 色に似て

源氏の君は咄嗟の言葉を飲み込み、采女・千珠を褒めながら、下の句を。

 蕾が開き 想いも開く」

源氏の君は「葵い句じゃ」と言葉残して、散策しながら貴族の屋敷に向かう。

千珠は反芻する。

「君慕い 薄紫の 色に似て 蕾が開き 想いも開く」

3日後、千珠の元に使者が来た。「萩を持て。と仰せだ」

千珠は八分咲きの萩を手折る。3本和紙に包んで源氏の君へ。源氏の君は女房付きに活けさせた。示し合わせたように、皆が下がる。

千珠は活けられた八分咲きの萩に目を移す。源氏の君は、八分咲きを語る。

「蕾も開け、想いも開け」

源氏の君の右手が采女・千珠の肩に添える。