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Photo by
mizunouta
影法師の道
夏の終わり、夕暮れの畦道を歩く二人の少年、タケルとシンジ。彼らは中学校の野球チームでバッテリーを組んでいた。タケルはピッチャー、シンジはキャッチャー。二人は幼い頃からの親友で、いつも一緒に野球をしてきた。
タケルの父親は厳格で、タケルに対して常に高い期待を寄せていた。失敗を許さない父親の言葉は、タケルの心に深い傷を残していた。事情を知るシンジは、いつもタケルの心に寄り添っていた。
地区大会の決勝戦が近づくにつれ、タケルのプレッシャーは増していった。試合当日、タケルは緊張のあまり、思い通りにプレーできない。試合が進み、相手チームにとうとうリードを許してしまった。チーム全員がタケルを励まし続けたが、タケルの心は折れかけていた。
試合の終盤、タケルは再びマウンドに立った。しかし、彼の投球は乱れ、相手チームにさらに点を許してしまい、試合はそのまま終了した。チームは凄惨な敗北の結果に終わった。
タケルは力尽きたように、マウンドに膝をつき、涙が自然に溢れた。シンジはそっと彼の肩に手を置く。言葉は出なかった。
試合後、二人は無言で畦道を歩いて帰った。二人の頭にはラジオから校歌が流れている。影法師が二本、畦道に伸びていた。
タケルはぼそりと呟く。「お前がいたから、俺はここまで頑張れたんだ。」
シンジは静かに答える、納得するように。「俺たちはチームだろ。これからも一緒に頑張るさ。」
タケルはふと立ち止まり、空を見上げた。父親の厳しい言葉が頭をよぎる。しかし、シンジの言葉がその不安を和らげた(俺は一人じゃない)と、タケルは心の中でつぶやいた。
力を出し切った。タケルとシンジの脳裏に浸透する。
二人の影法師に、不死鳥のような羽が。やがて、羽ばたき始める。こころの焔が二人の心にともり始めた。焔が静かに広がり始める。