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女性好きの美女は才媛

着任の挨拶を受けてから数日経ち、食堂の入り口で出会い、一緒に食事を取ることになった。オフィスは同じフロアーで、ブース形式だった。彼女は隣りのブースで仕事をこなしていた。職種が同じで、専門職部門に所属していた。職員は仕事の性質上年代は高く、ばらけていた。

「ここ、若い女の子が多いですね」

別のフロアーでは、若い女性が配属されている部署があった。その部署に所用で訪れたようだ。語っている本人もそう年ではない。希望に合致した訳ではないが、ポスドクになる寸前でポストを得た。

「綺麗な娘が多いわ」

羨望ではなく、どこか獲物を探しているような眼差しだった。

「確かに、可愛い子が多いですね」

相づちを打つとはなしに打っていた。

「私は?」

言いそうもない言葉に、言葉を飲み込み、曖昧な表現になった。

「ええ、まぁ・・・」

「綺麗?」

語調が強い。目もどこか厳しい。促し、強制しているような圧を感じた。

「おきれいです」

言葉を明確に言ったのが気に入らなかったのか、もういいとばかりに話しを転じた。

彼女は怜悧で、温かみのある美女だった。もう少しスリムだったら多くの男性が関心を示していただろう。食べることが好きだと言っていた。他の同僚と寿司屋に行ったことがあるが、食べっぷりは素晴らしかった。

やがて他部署の男性職員とも親しくなり、よく「飲み屋」に行っていたようだ。彼女と一緒に行った同僚から「彼女、女性が好きみたいだよ」と告げられた。若いときに勉強一途で、親しい女友達がいなかったらしい。多分、自分が失った若い綺麗さを求めていたのかもしれない。憧憬だ。

クライアントからの評判は上々で、引っ張りだこと言って良かった。同じコンサルタントの委員会で仕事をしたとき、彼女の能力の高さに驚嘆するくらいだった。

彼女は本来の希望を実現するためにアプライしていたが、やがて大学院を備える共学の大学に転じた。その話しを聞いて耳が乾かない内に、名の知れた女子大学に転じた。彼女は若い女性に囲まれながら職務を遂行しているだろう。

若い頃、出張命令の出た学会で、女性会員二人と同じ列に並んだことがある。すでに名前と写真はよく知られており、すぐ人物を認識できた。報告を聞き終えた二人は、報告資料を手渡してくれ、微笑みを残して去って行った。数年後、テレビで解説をするその女性会員を見たり、新聞・雑誌で記事を見たりする機会があった。

やがて、同じ職場で出会った才媛の記事を目にするかもしれない。