
言問橋をわたってみたい
普段、東京に来ても大体行動範囲は西側で終わる。池袋、渋谷、新宿。東京駅くらいまでなら、たまに、遊びじゃなくてお仕事関連で行くときは多いかも。あとは、新幹線で東北とかに出るとき。
だから、日本橋とか、浅草の方はあまり行かないし、月島とか深川とか、それなりに有名どころはあるけど、行ったことはない。
でも、この間東京に行ったとき、約束まで時間があったから、蔵前にある気になっていた雑貨屋さんとカフェに行くことにした。
やっぱり、西側とは雰囲気が違う。
人の営みが見える。
昔ながらの、ああ下町だなっていう。
渋谷とか、新宿は、温度で言ったら60℃くらい。激熱。でも、蔵前は温度で言ったら38℃くらい。じんわりあったかい。そんな感じ。
はじめて訪れたけれど、わたしは一瞬で好きになった。かわいい雑貨屋さんも、おしゃれなカフェも、おいしそうなベーカリーも、のんびりできる川もある。
舞い上がったわたしは、蔵前から東京駅まで歩いて行くことにした。その日は、12月だったけど、あたたかい日だったから、夕方、日も傾いて来ていたけれど、るんるん歩いていた。
蔵前橋を渡って、隅田川沿いの道をくだる。波が揺れて、海みたいだと思ったけれど、海はこんなに狭くない。
国技館とスカイツリーのツーショットを臨んで、国道463号線をひたすらくだる。
清澄公園で、少し腰をおろして休憩。急に冷えて、寒かったけれど、楽しそうにバドミントンをする親子や、チャリンコを乗り回す小学生を見て、懐かしくなって、それで良かった。
そしたら、清洲橋をわたって、日本橋に出たら、あとはもう目の前に東京駅。たくさん歩いた。
さて、言問橋はどこへ行ったか。
別に、このとき言問橋をわたったわけじゃない。蔵前を出る前に、青い案内看板に、言問橋と書かれていて、“言問ひ“って響きに惹かれてしまっただけ。
この言問ひって言葉、どういう意味かわからなくて調べてみたら、もっと好きになった。
こと‐とい〔‐とひ〕【言問ひ】
物を尋ねかけること。言葉を交わすこと。
「今日だにも―せむと惜しみつつ悲しびませば」〈万・四四〇八〉
ちなみに、言問橋の由来は在原業平だそうで。
橋名は、在原業平の詠んだ「名にしおはば いざ言問わん都鳥 わが思う人はありやなしやと」からとった。
【そういう名前を背負っているのならばちょっと聞いてみよう。都鳥よ、私の恋しいあの人は今も元気でいるかということを】
どこにいても、元気でやっているか気になる人がいる。それってきっと、とてもしあわせなことだと思う。
いつか、言問橋をわたってみたい。
大好きなあの人のことを思いながら。
いま、なにしてるんだろ〜って考えながら。
次に、東側に行くことがあれば。
