陰キャが成人式に行った結果
今年成人を迎えた。
僕は所謂陰キャと呼ばれる部類で、小中高と友達がかなり少ない。当然成人式に行こうと思わなかった。
僕は成人式が嫌いだ。成人式は通過儀礼(イニシエーション)である。
「子供のお前らを大人の社会に迎えてやる」という考え方の儀式で、おめでとうと言われるのが嫌いである。「何がめでたいんだ!」
だが正月に会った叔父に「行かないと後悔する。」「一生会えなくなる人と会える最後の機会。」と強く言われた。一理あるかもと思った。
僕はそんなことより感染力が高いオミクロン株が蔓延しはじめているのに、市がわざわざ成人式を開催するプライオリティの高さから「じゃあどんなものか見てやろう」という心持ちで参加を決めた。
式が始まった。新聞記者がフラッシュを焚きながらカメラを振り回している。
君が代は斉唱せずにじっと聴き入るだけだった。ここは例年と大きく異なる点だろう。
市長の挨拶。
次の選挙に入れてくださいという顔見世みたいなものだろう。
市会議長の挨拶。
ええこと言っていたがイマイチ頭に残っていない。
そして式が終わった。こんなものかと。思っていたよりも短かった。
会場の外に出ると端正な振り袖とシュッとしたスーツを着た人が波のようにいた。
綾錦の紋様が美しく、名前も顔も知らない人の着物に見とれてしまった。
不良はいなかったが、同窓会やらの集まりで記念撮影をそこかしこでしており、混沌としていた。
そんな状態なので誰とも会わず逃げ出すように帰ってきた。
一生会えなくなるひとは、もう既に会えない人だった。
高校生の時よく通った店でご飯を食べた。
味は変わってなかった。
そのあとメロンブックスの成人コーナーで“成人式”を執り行ったことは秘密である。