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「響け!ユーフォニアム」から解き明かす京都アニメーションの偉業

京都市の南の住宅街にアニメーション制作会社がある。その名も京都アニメーション。ここから革命的なアニメが次々と生み出された。アニメ業界を先導してきたと言っても過言ではない。任天堂には及ばないが京都からサブカルチャーを先導してきたのは明らかだ。

「響け!ユーフォニアム」から京アニの“凄さ”について解き明かしてゆく。
"手抜きを許さない制作会社"としてアニメファンから支持を得ている京アニ。なぜこの「響け!ユーフォニアム」という作品を世に送り出したのか。


あらすじ

高校1年生の春。
中学時代に吹奏楽部だった黄前久美子は、
クラスメイトの加藤葉月、川島緑輝とともに吹奏楽部の見学に行く。
そこで久美子は、かつての同級生・高坂麗奈の姿を見かける。
葉月と緑輝は吹奏楽部への入部を決めたようだったが、まだ踏み切れない久美子。
思い出すのは、中学の吹奏楽コンクールでの麗奈との出来事だった。
吹奏楽部での活動を通して見つけていく、かけがえのないものたち。
これは、本気でぶつかる少女たちの、青春の物語。
公式サイトより http://tv.anime-eupho.com/sp/story/introduction/
introduction:STORY | TVアニメ『響け!ユーフォニアム』公式サイト

映像化の課題

小説を映像化する上で主に2つの方法がある。実写化とアニメ化である。

結論から言うとこの作品は実写化に向いていなかった。それは吹奏楽という特殊性ゆえ役者が演奏しなくてはいけない。経験者だとしても心情や葛藤など迫力のある演技力が無いと話にならない。さらに高校生の役が演じられる年齢の制約がある。両方の能力・条件を併せ持つ者は限られているだろう。

一方アニメにすると、猫がバスになったり、豚が飛行機を操縦できたりと映像の自由度が増す。さらにアニメは映像と音声に分けることができる。映像に声をあてる声優は演技に専念し、映像に命を吹き込んでゆく。

要するにアニメーションは、実写映像では難しい作品も絵によって視覚することを可能とし、声の演技に特化した声優により、視覚的聴覚的にも原作・脚本通りに近づけることができる。

しかし、この作品はアニメ化するのも非常に難易度が高い曲者であった。

 作画

京アニから離れるが、『ジェリーとスプーンC』という絵が中学校の美術教科書の表紙になっていた。私はそれに感動を覚えた。

「みずみずしく透明感のあるジェリーを景色が写り込んだ鏡のようなスプーンですくう」そんな絵である。画家に失礼かもしれないが、俗に言う「写真のような絵」だった。写実的に金属光沢や水*1などの光の表現を描くのは難しいのだと素人目線でもわかる。

話を戻して、この「響け!ユーフォニアム」という作品は、主人公が金管楽器であるユーフォニアム担当である。吹奏楽部を題材にする以上、複雑に曲がりくねった管やピストン等の金属表現は避けては通れない。その上、動作をつけてアニメーションとして作品を成立させなければならない。

実写化だけでなく、ある程度現実性を持たなくてもよいアニメでも難しい。

それを実現させたのが京アニである。

さらに京アニの凄いところはそれを違和感なく溶け込ませる能力があること。違和感がないからこそ、視聴者側は話にのめり込まれていく。

アニメを見ているのではなく、彼女たちのドキュメンタリーを見ているのではないかと思うほど…いや、無意識的に視聴していたのかもしれない。

これほど原作・脚本を引き立たせるアニメーション制作会社はあっただろうか。

それを平然とやってのける京アニ、あっぱれ!

今までにない作品を作り出す革命児。他の追随を許さぬその姿勢。まさにプロフェッショナルである。

映像という枠を超越したアニメだと私は思う。

アニメに興味がない人も見てほしい作品だ。

この金属光沢、惚れ惚れするほど美しい。

 京アニとはなにか

京アニには古典的魅力がある。古典的とは言っても陳腐などの意味はない。今なお評価され、数々の影響を与えてきたことを指すclassicの意味である。

時の試練
"時の試錬"とは、時間のもつ風化作用をくぐってくるということである。風化作用は言いかえると、忘却にはかならない。古典は読者の忘却の層をくぐり抜けたときに生れる。
外山滋比古『思考の整理学』ちくま文庫


あの斬新な作風は20年30年経ても風化しないだろう。京アニが世に送り出した「けいおん!」「涼宮ハルヒの憂鬱」などは放送から10年以上経過したが、いまだ衰え知らず。忘却なんてありえない。

時の試練が効かない、洗練された素晴らしい技術のある京都アニメーションなのだから。

最後に

京都アニメーション放火殺人事件で亡くなられた方々にご冥福をお祈りいたします。

ご遺族の方、社員及び関係者の方々に謹んでお悔やみ申し上げます。

あのような形で京アニの名が知れ渡ってしまったことが残念でなりません。

青葉真司容疑者は裁判で事件の真相を語ってほしいです。そしてご遺族、関係者の方々の望む判決が出されることを願っています。

注釈 1: 2013年に京アニは水泳を題材としたアニメ「Free!」を制作している。

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