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【死角なし】Homecomings oneman live “angel near you”に行ってきました & アルバム感想など
リリース以降、アルバム“see you, frail angel. sea adore you.“が刺さって抜けません。それも変な方向に。
共感しまくりの新アルバム
Gt.福富さん、Gt.Vo.畳野さんの出身地である石川県の海岸をイメージしたという本作。お二人と同郷の私は、大学に進学するまでの18年間を石川県金沢市を中心に過ごしました。今ではすっかり観光都市のような扱いの金沢は、最近はスプロール化が進んでいるものの、少し街を離れれば意外とまだまだ田舎だったりします。獅子吼高原から見下ろす手取川扇状地の光景は何物にも替え難いです。
広がる水田、そしてその先に見える海。
しかしその海と空には、なんとも言えない重苦しさがあります。
雨が降るほどではないけれど、常にぼんやりと曇り、みたいな。
秋から冬にかけては厚い雲が一面を覆い、強い風が吹いて海は荒れます。
そんなフィーリングを共有しているからでしょうか、サウンドからして何か特別な空気感というか重圧とでも呼ぶべきものが、どうしたって感じられてしまうのです。海を見て音楽を聞いていたとか、アピタのCDショップを利用していたみたいなエピソードも、めっちゃ一緒だ!って思いました(笑)
天使について
本作のタイトルにもある「天使」とは何なのか、少し考えてみました。
今回のアルバムには「自分自身にも優しくあれるように」というセルフケア的な意味合いも込めていて、それを助けてくれる存在としての天使というか。その天使は自分の中の存在でもいいし、最近会えていないけれど大事な友だちとかでもいいんですけど。離れていたり透明なものでも、自分の中では大切なものっていう感覚ですね。“優しくある”ことを軸に他者とのつながりを描いたのが「New Neighbors」だとしたら、個人的なものにフォーカスを当てて“優しくある”ことを描いたのが「see you, frail angel. sea adore you.」
「see you, frail angel. sea adore you.」は個としての自分やイマジナリーなものとしての天使を描いているけど、結局は“他人がいて自分がある”というところに戻っていく。そこには共通するものがあるんじゃないか?っていうのが裏テーマになってます(笑)。
敢えてひとことでまとめるならば、近年のHomecomingsの作品には「優しさ」が通底していると感じます。
私は、「優しさ」とは自分の加害性を知ることだと思っています。
(大げさなのでまた別の機会に書こうかと思います)
もっとソフトに言えば、他者や社会を知ることを通して自分を見つめ直すというか。反対に、何が自分を形作っているのかを考えることで、他者と出会うこともあるでしょう。
そうした作業の中で気づくのは、
「これはあのときにもらったなあ」とか
「あのときは気づけなかったなあ」といったこと。
「だから今度は誰かに優しくできると良いなぁ」
って思えたら良いなと思うのです。
そういうことに気づかせてくれる存在を、「天使」と表現したのではないかと思います。自分の記憶の集合体みたいな(笑) それは、自分がダメだったとき、そんな自分を受け止めて次に向かわせてくれる存在なんだと思います。
社会に対するまなざしとか、誰かに寄り添う姿勢とか、フェミニズム的な視点に至るまで、音楽性以外のいろんなスタンスが自分にとってピタッとはまる、信頼できるアーティストだなと勝手に共感を覚えています。
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ライブの感想
ひとことでまとめるならば「轟音」です。 もっと言っていいなら、インディーポップにシューゲイズとエレクトロニカで死角なし!という感じでした。
逆に言うと、インディーズ時代のポップでキラキラした楽曲や、『Whale Living』以降の温かみのある楽曲を期待しているとやや裏切られるかも…という感じです。
以下、具体的な内容に触れています。
ツアー中につきネタバレ注意です!
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開演前BGMは、おそらくアルバム制作のレファレンスになった曲たち。“angel near you”の元ネタであるWheat “Don’t I Hold You”も流れていました。そんな中、機材トラブルにより10分から15分ほど開演が遅れるとのアナウンスが。アナウンスが入ること自体珍しいというか、「まあそのくらい誤差だよね」なんて話しながら待っていました。(のちにその意外な理由を知ることになります) 開演予定時刻から10分くらい経って、畳野さんがいつもの赤いGibson SGを持ってサウンドチェックに現れたりなどしつつ、アナウンス通り15分ほど遅れて照明が暗くなりました。入場BGMはDeath in Vegas “Girls”。この曲を聴くと映画 “Lost in Translation”の冒頭のワクワクを思い出します。
高揚感そのままに、“slowboat”でスタート。弾き語りの歌い出しにベースが乗りサビ前でドラムが入ってくるというイントロは、これ以上ないバンドの自己紹介でした。ドラムサポートはユナさん(ex.CHAI)…!レコーディングからがっつり参加していることもあり、さすがの安定感でした。というかHomecomingsもユナさんもかなりライブの本数をこなしているので、演奏はめっちゃ上手いんですよね〜!続く“angel near you”で感激しすぎて既に目頭が熱く…そして、これまで経験したことないレベルの鳥肌が…。ストローで飲み物をぶくぶくってやるじゃないですか、それが肌の下で起きている感じというか。毛穴が全部開いたり閉じたりするというか…そういう鳥肌の立ち方です。昨年のベストにも挙げたこの曲。オリジナルと比べて1回目のサビは控えめで、間奏後の2回目のサビは限界まで歪ませたような轟音が鳴り響くというアレンジが最高でした。アウトロでは、無機質だったドラムフレーズ(もとは打ち込みの予定だったそう)も熱を帯び始め、メンバーの笑顔がこぼれてゆき、「今この瞬間、世界で最高に幸せな空間かも!」とさえ感じました。
早くも1回目のピークを迎えたところで、“luminous”で少し落ち着いた雰囲気に…と思いきややっぱりバキバキなサウンドなのでした。間奏の気持ちよさよ…。サウンド面の変化以外でもうひとつ感じたのが、歌のキーの高さでした。それでも、畳野さんの歌も進化していて安定感が素晴らしかったです。続いて“Here”。ずんずんと進んでいく曲調が、ギターソロでほどける展開が好きです。曲調とは裏腹に、自信のなさげな歌詞も印象的。「同じ形を持ち寄って」というところは “Moon Shaped”にも通じるところがあるよな、なんて思いながら聞いていました。アウトロからは流れるように “euphoria/ユーフォリア”へなだれ込みます。ひときわアンセミックかつダークな一曲。歌も演奏も最高にエモーショナルで、ライブで聴いてさらに好きになれる曲だなと感じました。長めのイントロを経て“ラプス”が始まると客席からは歓声が。石川県が舞台のアニメ『君は放課後インソムニア』のエンディング曲だったこともあってでしょうか。歌詞の音数が減って伸びやかな雰囲気のサビにぬるっと入っていく展開が好きです。
ライブ中盤では“recall (I’m with you)”, “Shadow Boxer”, “ghostpia”, そしてMCを挟んで“Moon Shaped”と、雰囲気の似た曲が立て続けに演奏されました。インタビューなどを読んでみても、このあたりの曲調が今のHomecomingsのモードなのだなと感じさせられました。今までは赤や青だったステージが、“recall (I’m with you)”になって初めて真っ白な照明で照らされるという演出にもグッときましたね。バリバリでモサモサのギターは大好物なので、“Shadow Boxer”の間奏〜Cメロの流れにも大興奮でした。この曲はサビのシンコペーションもドライブ感があって、軽やかな歌詞と相まって気持ちいいです。畳野さんギターのハーモニクスから始まった“ghostpia”は唯一無二のダークさ(タイトルのせいかもしれません) テンションが上がりすぎて(?)そのままアウトロでギターをかき鳴らそうとするものの、我に返ってちゃんとハーモニクスを鳴らす畳野さんが可笑しかったです。
MCでは、地元トークがこんなにも分かることってあるんだ!と、初めて感じました(笑) なんと畳野さんのGibson SG、直前で折れてしまったそう。急いでギターの買い出しに向かったのが開演2時間前の16時。「まずはライブ会場からもほど近いBIG BOSSに電話、しかし在庫がなくフォーラスの島村楽器へ。やっぱり在庫がないので中古屋へ…と思ったところで隣の小松市の山屋楽器に行くことをひらめく」という、あまりにも石川県民かつギター好きにしか分からないトークであったにも関わらず大ウケでした。そしてギターが到着したのが18時10分だったのだそう。どうりで!と開演前のバタバタにも納得しました。
福富さん「(ギターを買いに)出発したのが17時で…」
畳野さん「16時じゃない?」
福富さん「そうか。17時に出たら開演の頃にはまだレジャランの辺りか」
畳野さん「小松ってなると空いてて片道4,50分はかかるもんね」
福富さん「そうね」
畳野さん「私たち時間の感覚分かるんでね」
福富さん「え〜だからみなさんにはね、新品の音がね、え〜アンプのツマミを全部10にして『ガァホォイィ〜ン』ってしてね」
畳野さん「うんうん(聞いてない)」
みたいなくだりが微笑ましかったです。(「向井秀徳 バンド講座」で検索!)
昨年の地震についても触れ、それでもこうしてまた作品を作ってライブできるのが嬉しいと福富さん。「みんな元気でまた会いましょう」という言葉に、もう最後の曲?みたいな雰囲気に。そこからしっかり演奏に戻れるのがさすがプロでした(笑)
「ライブで視覚的な情報を得ることで新しい聞こえ方がする」というのは以前から主張している気がするのですが、今回のライブでそれを最も感じたのが“Moon Shaped”でした。福富さんがアルペジオを弾き、畳野さんがそれを補うようにオクターブでピッキングするというイントロにめちゃくちゃ萌えました(死語) まだ「満ちていく途中」の欠けた形が寄り添いあっていくという曲ですが、イントロにもそんな含みがあったのか!という発見でした。(個人の見解です) この曲によってニューアルバムと過去作が橋渡しされ、『Whale Living』より“Blue Hour”へ。ライブの定番曲でもあり、無機質な感じのドラムが映える一曲です。同作より続けて“Songbirds”のイントロが始まると、再び大きな歓声が上がります。かく言う元-邦楽アンチのこの私も、『リズと青い鳥』がなければHomecomingsに出会うのはもっと後だったことでしょう。ただ、機材トラブルなのか返しを上げてくれということなのか、ギターを弾きながらPAさんに何か要求している福富さんの目がバッキバキにキマっていてちょっと怖かったです(涙) 『リズ』つながりでそのまま“Tenderly, two line”に。スタンディングだったのでギリ泣けませんでしたがシーティングだったら大号泣していたに違いありません。というかベースの福田さんのコーラスがずっと異次元すぎる(突然) ポップな曲調でもリズム隊は実はグルーヴィというのがHomecomingsの魅力の1つだと思っているのですが、そんなベースラインを弾きながら涼しい顔でとんでもないコーラスワークを担当されています。
最後は4つ打ちになって祝祭的なムードの中、アルバム通りの流れで“Air”へ。オリジナルは打ち込みなので、ライブでどのようにアレンジされるのか楽しみでもありました。結果的には「最高」のひとことです。会場のサイズ感もあいまってさながらクラブでした。が!ダンス系の曲はあまり馴染みがないのかお客さんのノリはあんまり良くなかったかも…。個人的には、照明がレインボーだったのにもグッときました。4つ打ちのまま、次の曲が始まります。こんな曲あったかな?と思ったら、耳馴染みのあるリフが演奏され…まさかの“LIGHTS”でした。“Air”もそうだったのですが、エンドロールみを感じました。ラストで歌のキーが上がって盛り上がるところが切なくて良い曲だなと思います。
「ありがとうございました、Homecomingsでした」のあいさつと共に“US / アス”のイントロが流れると会場のテンションは最高潮に!新しめの曲がしっかり受け入れられているのは嬉しいものです。個人的には2023年をかなり助けてもらった曲でもあるのでもう感情がぐちゃぐちゃでした。これで終わりかと思いきやグリッチノイズが流れだし…そう、“blue poetry”です!もう一段階、皆のギアが入ってぶち上がりました!!ジャンプしたりドラムに登ったり動き回る福富さんが微笑ましかったです。
そしてMCでの宣言通り、アンコールはなし。集中して全部を出し切るための試みとのことでしたが、これはこれでありだなと思いました。
それにしてもめっっっっちゃ楽しかった!!
終演後はSG代を寄付(グッズを購入)してきました。
3月のツーマンも楽しみです!!ではまた。