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橋本絵莉子 "街よ、見街よ、良い街よツアー2024" に行ってきました

いや〜、本当に素晴らしかった!パフォーマンス、演出、観客との距離感など、久しぶりに満足感の高いライブでした。今年足を運んだライブの中では、ベストだと感じました。(大阪・東京で迷っている方はぜひ!後悔はしません!)

というものの、もともと熱心なファンというわけではなく、チャットモンチー時代にも特別聴いていたわけではありません。むしろ世代的にはもう少し前かもしれません。当然、ライブでも見たこともないです。そして今、そのことを心から悔しく思っています。

話題になっていたので、2018年に解散ライブが行われたことはさすがに知っていました。でも「普通に活動して、普通に解散する」程度の認識で、まさかドラムが脱退したり、ルーパーを使って二人でライブをしてみたり、様々なサポートメンバーを受け入れたり、打ち込みに合わせて演奏したり…そんな波瀾万丈のあったバンドとは知りませんでした。

今年、なぜか急にチャットモンチーを聴きたくなって、そんなバンドのエピソードを追いかけながら、気がつけばファンに…。ことあるごとにライブ動画をYouTubeで見て、そのたびに「生で観たかった!」と思っていました。
ゴリゴリのベースを弾きながら動き回り観客を煽る福岡さん、涼しい顔をして様々なフレーズを器用に叩きこなす高橋さん、鬼気迫るパフォーマンスと普段とのギャップが凄まじい橋本さん、そして何よりあの観客たちの熱量…。

そんな時代には戻れないとは知りつつ、そして新しい自分に向けて表現をしている橋本さんに申し訳ないとも思いつつ、それでもあの空気感を少しでも味わいたい。そんなことを思ってライブに参加しようと決意しました。

しかし、結果的にそれは間違っていたと気づきました。チャット時代には戻れない、という後ろ向きのものではありません。橋本さんはとっくに前を向いて歩き出しているから。当たり前だけど…。

——ちょっと穿ったことを伺いますが、“元チャットモンチー”みたいな見られ方はされたくないなとか、そういう気持ちはあったのでしょうか。

橋本:いいえ、全然! むしろ私もついに“元”が付くようになったかと思って(笑)。“元”が付いていることによるメリットやデメリット、そういう名前にまつわることに関してはすごく客観的に考えていた気がします。たまにちょっと複雑なときはありますけど。

——それは“橋本絵莉子”として見てほしいという気持ちに由来するものだったりするんですかね。

橋本:だと思っていたんですけど……橋本絵莉子として見てもらうためには「私はこういう者です」っていう、それこそ名詞代わりになるような音源やCDがないとダメだな、まだ自分はそこまで行けてないなって思っている部分もあって。そういうのも含めて、今回のアルバムに向かっていったんです。

『日記を燃やして』特設サイト

予習のためにアルバムを聴き込んだりインタビューを読んだりしているうちに、チャットモンチーとは別のアーティストとして、橋本さんの歌を聴けるようになっていきました。

でも、実際にライブに行ってみて、変わらないこともあると思いました。
ライブ動画で何回も見た右手のストローク。
マイクに対する立ち方、立ち位置。
そして時おり張り上げる歌声。
すべてに感動して、いろんな思いが込み上げて、一曲目から目に涙が浮かびました。

うまく言葉にできないのですが、もしこれがチャットモンチーのライブだったら、同じような気持ちにはならなかったと思います。間違いなく、今の橋本さんにしか作れない曲で、今の橋本さんにしかできないパフォーマンスでした。本当に、本当に、「橋本絵莉子」として音楽を続けてくれて、ありがとうございます。

土.。.:*土.。.:・°土.。.:*土.。.:・°土.。.:*土.。

さて、ここからは曲ごとの感想を書き連ねていこうと思います。以下、セットリストのネタバレが含まれます。全曲に言及しているわけではありませんが、これからツアーに参加される方はご注意ください。

ワンオブゼム

1曲目は1stから。
シンバルのカウントから、力強いギタープレイのイントロ。音源の再現度がすごすぎて、初っ端から感激。編成がシンプルなこともあり、ストレスなく聞こえるのも嬉しかったです。後半の「耳にも〜」のパートですでに泣いていました…。

かえれない

サポートメンバーの演奏力が遺憾無く発揮された1曲。
Gt. 曽根巧さん Ba. 村田シゲさん Dr. 北野愛子さん という編成。
演奏の上手さは当然として、メンバーの楽しみ具合がめっちゃ良い!と思いました。特に間奏のドラムのブレイク→ギターソロ→ベースソロの流れが完璧すぎる。早くもゾーン的なものに入っていた感がありました。

ちなみに、1曲目で盛り上げたあと、MCなしでかっこよくイントロに入ったのですが、橋本さんがカポタストを移動し忘れていてやり直しの事態に。気合いが入りまくっていただけに、不協和音が鳴ったときは緊張感が走りました…!橋本さんもすぐに修正しようとしていましたが、「やっぱりもう一回…」と人差し指を立てていて、思わず会場が和みました笑

踊り場

ようやく2ndからの曲。恥ずかしながら、開演待ちの時間に初めて丁寧にインタビューを読んで、「踊り場」が中間地点的なもののメタファーだったことがわかりました。(この辺りの日本語詩に対する感度の低さはご勘弁いただきたい)
なるほどたしかに、アルバム全編でいろんな自分を見つけたり解放したり、といったテーマが通底しているような感じがします。

宝物を探して

軽快でめっちゃ良い!!テンポはや!!ってちょっと思いました。それでも全く違和感がないのはさすがプロ。
ライブに行くと、視覚情報が追加されることで、音源を聴いているだけでは気づかなかったアレンジの良さに気づくことがあります。この曲でいうと、ギターリフの高音パートと低音パートの絡み合いが絶妙だなあと改めて感じました。あとはラストの転調の解放感がライブだとより一層気持ちいい!「外はゾンビだらけよ〜」のあとのパートで照明が真っ赤になるのも解釈一致というか、個人的に嬉しい演出でした。

でも一番印象に残ったというか……
心を撃ち抜かれたのはですね……
ラスサビ前の振り付けです……
ライブの日からそのことばかりが頭を支配していて、ずっと上の空です。

人一人

この曲もインタビューを読んで印象が変わりました。普遍的な人間関係を描いた曲かと思いきや、コロナ禍の話だったとは!「幽霊の話、誰にもできないじゃん!」っていう笑 しかもそれに自分で"Is that true?"ってツッコミを入れているという。でも言われてみるとたしかにそうで、これまでいったい何を聴いてきたのかと少し恥ずかしくなります。

やさしい指揮者

橋本さんはキーボードを演奏。「割り切れないものは生きている」「夜になったら別の道になる」という歌詞の入りからグッときました。演奏はなぜかめっちゃOasisみたいだなと感じました、神々しさというか。そしてサビが「ワン、ツー、スリー、フォー」しかないので、それがかえって切ないなと思いました。

このあたりからセトリが怪しくなってきますが覚えている範囲で!

どなる、でんわ、どしゃぶり

いきなり橋本さんのアルペジオが始まって会場の雰囲気が変わりました。頭を抱えだす人や、体をワナワナと震えさせる人…。チャットモンチー楽曲を演奏することは何となく期待していましたが、この選曲!
真っ赤な照明も狂気じみていましたが、それにも増して橋本さんの目がキマりすぎていたのと、叩きつけるような16分のストロークがとにかくやばすぎました。久しぶりに張り上げるような歌い方も、チャット時代を経験していない私には特にグッときました。

離陸

前の曲のドロドロを一掃するような爽やかな風が吹き抜けました…。ツインギターが気持ちいい。

このよかぶれ

"離陸"で気持ちが高揚したところで意外にも、しっとりめなこの曲。なんと言っても歌詞が良いですよね。

——そして「このよかぶれ」ですが、この曲を書いたことで多少なりとも気持ちの整理がついたりはしたのでしょうか。

橋本:書いたときはまだ“これからを夢見る私”とか、そんなふうには全然思えていなくて……でも、そうやって歌いたかったから書いたんです。きっとこの曲が自分の気持ちにぴったり収まるときが来るだろうな、来たらいいなと思いながら。そのときはまだまだ先のことを歌っているなと思っていたけど、今はちょっとずつ近づいてきてるのを感じてます。

『街よ街よ』特設サイト

この日、MCではいっさい恒岡さんのことは触れられなかったけれど、メンバーたちの面持ちやプレイから、ものすごく気持ちが入っていることがビリビリと伝わってきました。今、改めて歌詞を見ながら聴き返しても涙が出てきます。

自分は幸いというべきか身近な人を失うという経験がほとんどないこともあって、でもそうなったときにもっとこの曲に心が揺さぶられるんだろうな、なんて思っていたら、たしかこのタイミングで、えっちゃんのギターのヘッドがキーボードにあたって「ピョーーーーー」って音が鳴ったのが可笑しかったです。

このへんで"fall of the leaf"とか"ロゼメタリック時代"とか、しっとりめの曲が続いた気がします。そして、新曲も披露されました!これが個人的にかなり良かったです。ぜひ音源化していただきたいです。

ホテル太平洋

ギターのフレーズが素晴らしいです。みんなもっとノっていいのよ…?ってちょっと思いました。

今日がインフィニティ

初めの頃は「感傷的すぎて…」と思うこともありましたが、これめっちゃ良い曲ですよね。演奏もライブだとなおかっこよくて、メロディのリピート感とか、サビの真ん中のコードの明るい感じとかが際立っていました。2番でズダダダとスネアが畳みかけるところも良かったです。

私はパイロット

本編ラストはこの曲。原曲通り、オルガン(キーボード)とドラムの掛け合いからスタート。テンポの切り替わりが心地よい曲。「何人もの私を乗せて暗闇を進むよ」という歌詞が好きです。そしてそのフレーズのあとの「Wow ×4」のコーラスをおじさん(曽根さん)がやっているのが楽しかったです。

弾き語り2曲

短めの新曲、長めの新曲、カバー、セルフカバー、アルバム曲、チャットの曲、の中から観客が選ぶというまさかの形式。決め方を決めていないという無茶振りで、MCも大いに盛り上がりました。橋本さんが生徒をまとめる学校の先生の真似をしていて、一教師(多分)としては不思議な気持ちになりました笑

結局早いもの勝ちになって、チャットの曲とセルフカバーが演奏されました。"どなる、でんわ、どしゃぶり"のときも思ったのは、やっぱりちょっと悲しいなあということ。ソロ曲よりもチャット時代の曲が盛り上がったり、観客もそれを求めていて…。仕方のないことなのかもしれないし、私にも期待している部分はもちろんありますが、やっぱり今のえっちゃんを応援していきたいなと思うのです。だから私は「長めの新曲!」と叫びました、とここに記しておきます。

Oh, Cinderella

最後はこの曲。この曲も重心が後ろ目のリフから、ずんずん進んでいくメロディに移り変わる曲構成が楽しいです。ドコドコ鳴るタムも最高。ラストはみんなでジャーンと楽器をかき鳴らして終わり。
2時間弱のセットでした。

土.。.:*土.。.:・°土.。.:*土.。.:・°土.。.:*土.。

最後に

個人的に悔しかった(?)シーンが2つあります。
1つ目は”どなる、でんわ、どしゃぶり”が他の曲と比べて明らかに盛り上がってしまったこと。曲終わりの歓声や拍手も、目に見えて大きかった。もちろん、良いことではあるのだろうけど。やっぱり演者としては複雑な気持ちになるのでは、と勝手に思ってしまいます。
2つ目はリクエスト曲で真っ先にチャットの曲が挙げられてしまったこと。気持ちは分かるんですけどねーーー。
他の人に強要するつもりはありませんが、私のスタンスとしては、ということです。でも、ちょっとでも同じ考えの人がいたらありがたいなと思います。


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