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第一回 前編『両方になる』アリ・スミス/訳 木原 善彦(新潮クレスト・ブックス)

 はじめまして。この度、あたらしく連載をすることになりました通天閣盛男といいます。
 まず初めに、この連載の趣旨ともうしますか、何を書いていきたいかなどの内容からお伝えできればと思います。
 ご存じの方はいるかもしれませんが、モモの家の一室で本屋がオープンします(わたしの妻が店主となります)。それに際しまして、なにか本にまつわる連載があれば良いのではないかという事で、書評のページを頂いた次第です。単にお勧めの本の感想を書くなどもありふれていますし、ネットをのぞけば感想の書かれていない本などほとんどない状態の昨今、なにかもう一つ別の視点を交えて書くことはできないかと考え、いわゆる「積読本」の消化の軌跡として、わたくし事ではございますが、このページを使わせて頂ければと思い至りました。
 「積読本」というのは、買ったは良いものの、いまだ読みきれず、部屋に積んだ状態で放置された本のことをいいます。特に本好きにとっては、気がつけば増えてゆくこの「積読本」は深刻な問題でもあります。「はたして生きている間にすべて読むことはできるのか?」そんな不安を抱えつつ、人生の幕を閉じた先人たちは後を絶ちません。この記事ではそんな命題に立ち向かうべく、この世界の(紙面の)片隅でひっそりと連載と共にこの積読本と格闘をしてまいります。かつて哲学者の鶴見俊輔氏は「本を読むのは命がけ」とおっしゃいましたが、そのような覚悟で挑んでまいる所存です。
 そういった意味でタイトルは「積読奮闘記」といたしました。そして「読む前に書く、そして、読んだ後も書く」と続きますのはどういった事かというと、読む前にまず「前編」として、その本と出会ったきっかけや、積読になっている理由、今回それを選び、取り上げようと思ったいきさつ、その本に対する期待や想像などを書きます。「後編」は一ケ月を通して読み切り、その感想を書評としてまとめたものを、前編の答え合わせと一緒に記すことができればと考えます。
 と、記事のコンセプトを書くだけで第一回目のいわゆる前編にあたる内容が終わってしまいそうですので、駆け足で課題図書の紹介をしようと思います。

 初回に取り上げますのは、アリ・スミス作木原善彦訳の『両方になる』という小説です。海外文学などをよく読まれる方にはアリ・スミスという作家は季節がタイトルになる連作長編『秋』『冬』『春』『夏』という小説が有名ですが、わたしは未読となります。かなり評判がよく、読んでみたいとは思うのですが、全四冊を網羅することを思うとなかなか手を出すことができませんでした。そこで、作者のもう一つの代表作である本書を購入しました。本書は「コスタ賞」「ベイリーズ賞」「ゴールドスミス賞」などの受賞履歴があり、なにやら面白そうです。帯には「二つの物語が時空を超えて響き合い、躍動する。」「かつてない驚きに満ちた、まったく新しい長編小説。」とあり期待を持たせます。しかし忙しさにかまけ残念ながら長らく積読状態となっておりました。おそらくタイトルの「両方」と、帯にある「二つの物語」が呼応するエモーショナルな展開が想像されます。それでは意を決して読んでまいりましょう。よろしければ、ご一緒にいかがでしょうか。次回後編でこの小説の全貌が明らかになることでしょう。おそらく。きっと。たぶん。

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