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悩みのなかでも楽しく生きよう(『ダンマパダ』198偈)

 私は、悩みがある時は心が落ち着かず、目の前のことに集中できなくなってしまいます。ですので今回のお言葉は、一見矛盾したことが語られているようにも思うのですが、そうではありません。
 仏教は、日常でわき起こるさまざまな悩みをどう受け止めるかを課題とし、それらと向き合い、解き放たれることを目的とします。しかしそれがすべてではありません。み教えを依りどころに、悩みがある状態をそのまま受け止め、悩みの身のまま歩んでいく道もあるのです。
 釈尊は常々、「人生は苦である」と語っておられましたが、この「苦」とは、思い通りにならないということです。人は思い通りにならないから悩むのですが、そもそも思い通りにならないのが人生なら、悩みがあって当たり前なのです。
 「悩みがあることが当たり前」。そう思えば、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。今回のお言葉は、悩みを抱えた私に対して、「思い通りにならない人生だからこそ、そのことを受け止めて前を向いて生きていこう」と朗らかに呼びかけてくださる、励ましのお言葉です。 
(本願寺新報2022年8月20日掲載)

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