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生きとし生けるものは、安穏であれ 幸せであれ

 世界的な仏教学者の中村元先生は、人類の最も大切にすべき心情は「慈悲」(じひ)、すなわち他者に対する隔(へだ)てなき共感・愛情であり、すべてのいのちあるものの幸せを願う〝温かな心〟であると語っています。
 釈尊は35歳の時、真実に目覚めブッダとなり、その後80歳で入滅(にゅうめつ)されるまで、人々の幸福を願い、「真実の言葉」を説かれました。苦悩を抱えた人々は、ブッダの言葉と態度を通して〝温かな心〟に出会い、真の安心と生き方を知らされました。
 私たちの人生は他者との出会いの連続ですが、他者とは自分の思い通りにならない存在。だから関係性によって愛情が憎しみに転ずることも…。そんな人間関係に苦悩する私の心は、きっと「冷たく、固く、閉じた」状態。そんな私の心を「温め、和らげ、開いて」くれるのが、「生きとし生けるものは安穏であれ幸せであれ」というブッダの真実の言葉なのです。ブッダの温もりが私へ、そしてその温もりは私から他者へと伝導する、まさに慈悲の熱伝導です。〝温かな心〟で他者と共に生きる、これこそが人生、そして現代社会のさまざまな問題解決の糸口になるのではないでしょうか。
(本願寺新報2022年5月1日掲載)

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