デジタル×モノづくりの自由化 ㈱太洋木材市場
「なにをするにしても、まず建物がないと商売が始められない」
高松大空襲があった戦後、材木業として独立したのが㈱太洋木材の始まり。
近年、木造建築の需要が減りつつある一方で、デジタル技術を用いてモノづくりの未来をひらく人がいる。太洋木材のグループ企業である㈱太洋木材市場の樋口一真取締役だ。
「モノづくりの自由化」を目指す樋口氏にモノづくりの今、そして未来についてお話を聞いた。
モクイチ事業を立ち上げた経緯
弊社は1953年から、建築に使われる柱や床材などを始めとしたプロ向けの製材業を営んでおります。
近年は生活の中で木と触れる機会が減っていることから、2016年にレーザー加工部門・モクイチ事業を立ち上げました。テーマは「木と人をつなぐモノづくり」。
県産ヒノキを中心とした木製品を、これまで50種ほど送り出してきてました。
モノづくりの自由化を目指して
コースターからテーブル、そして建築まで。今や、あらゆるモノが誰にでも手軽に作れる時代が来ています。
”モノづくり”というと、専用の工房や技術が必要といったイメージがあるかもしれませんが、「デジタルファブリケーション(デジファブ)」という技術がその敷居をグッと下げました。 これから、モノづくりはもっと自由になります。
デジファブの技術
デジファブは、3Dプリンターやレーザーカッター、CNCルーター(デジタル制御の工作機械)といった最新技術の総称です。レーザーカッターは、ひょうたんのような複雑なかたちも自動的に作れます。大きな木材を複数加工したい時には、「ショップボット」というCNCルーターを使用します。付属のソフトで設計から加工まで、一貫して行うことができるんですよ。
注目すべき最先端のモノづくりは?
自宅のPCから建築資材や家具が作れる「エマーフ」という日本初のサービスが話題で、弊社も提携しています。
エマーフは、デザインから見積もり、木材加工まで1つのインターフェイスで完結できます。使い方も簡単。作りたいモノのテンプレートをエマーフの画面から選んでデータを送るだけ。提携工房がデジファブで加工し、ユーザーに届けます。「アイデアが現物になって届く」という画期的な状況が始まっています。
モクイチの描く未来は?
近年の日本では里山の荒廃が問題視されていますが、里山を健全な状態に保つには、程よく木を利用することも大切です。
そこで、グループ会社のボウリング場(太洋ボウル・ネグザスボウル)やホテル(サントピア総社岡山)の内装を木質にしていきたいと考えています。木のぬくもりや魅力を、身近に感じてもらえたら嬉しいですね。
「木育」にも取り組んでいきたいです。モクイチは生まれた時から亡くなるまで木に携わる、そんな昔ながらの生活を幅広く提案していきます。そして、ふたたび木の住まいのニーズを取り戻すことを目指しています。
2020年7月に発行した「かがわ経済レポート」インタビュー記事より抜粋して掲載しています。