ヴィンテージ楽器電子化計画「MeloMIDIca」その⑦(3Dプリントを発注する)
ヴィンテージ鍵盤ハーモニカ「Melodica」をMIDI化するプロジェクト「MeloMIDIca」。鍵盤フレーム部分のパーツを3D CADソフト「Fusion 360」で作成したので、データを3Dプリント業者に発注しよう。
3Dプリントのデータはほぼ「STL」
調べたところによると、3Dプリント関連業界では「STL」というファイル形式が広く使われているらしい。もちろんFusion 360でもSTLはサポートされている。
STLファイルを作るには、3Dプリントしたいモデルだけを表示しておいて(他のモデルは非表示)、「エクスポート」を選ぶ。
下の図は、出力用に、鍵を16個並べたものだ。なんでこんな並べ方をしているかというと、3Dプリントする上では「空間の広さ」と「材料の量」によって料金が変わるからだ。なので、コンパクトに並べるほど安い。各鍵の間には1mmの幅をとりつつ、できるだけコンパクトに並べてみた。
ファイルメニューからエクスポートを選べば、出力するファイル形式が選べるので、ここでSTLを選ぶ。
あとは、Fusionがクラウド上でSTLファイルを生成して、ローカルのパソコンに送ってくれる。負荷の高い処理は、クラウドでやってくれるのだ。前回も書いたけど、Fusionは3Dソフトなのに小技が利いてて、そこそこのスペックのパソコンでも作業できる。よくできてるねえ。
てな感じで、予備も含めて「白鍵16個」「黒鍵12個」「フレーム本体」を別々のSTLファイルとして出力した。これを発注しよう。
→実はこれはNGなのでした。最後に追記アリ。
JLCPCBに発注
さて発注だ。俺が試したことのある業者は、プリント基板でもお世話になったJLCPCBと、国内のDMM.makeの2箇所なのだけれど、以前の感触だと、価格・納期の点でJLCPCBが優れていたので(品質はどちらも満足)、今回もそちらに発注する。
手順自体は、プリント基板の発注と変わらず、めっちゃ簡単。まずはJLCPCB
のサイトでサインインした後、「Resource」から「3D Printing」に進む。
そして「Instant Quote(即時見積もり)」を選ぶ。
そうすれば、例によってアップロードアイコンのある画面が現れる。「Add 3D Files」と書いてあるね。プリント基板のときと同様に、ここにSTLファイルをドラッグ&ドロップすれば、見積もりを始めることができる。複数ファイルを一度に放り込んでも大丈夫だ。
読み込みが終わったら、自分の3Dモデルが表示されるから、それぞれのモデルごとに「素材」を選ぶ(ものによっては色を選べる)。
素材を選ぶと、それに応じて右側の料金が計算されるので、使用用途やら予算やらを勘案しつつ、決めればいいだろう。
使える素材は、ざっくりこんな感じ。
SLAレジン(短期製作が可能。耐水。熱には弱い)
MJFナイロン(強靭。精度が高い)
SLMメタル(強靭。硬い。重い)
FDM ABS(硬い。精度が高い。製作に時間がかかる)
SLSナイロン(短期製作が可能。強靭。精度が高い)
今回は、黒鍵のパーツにABS(黒)、白鍵のパーツにABS(白)、フレーム本体にMJFナイロン(黒染色)を選んでみた。
あと、プリント基板にはなかった重要な入力事項がある。
「Product desc(製品説明)」、つまり3Dプリントしたものの用途だ。通関のときに要らぬトラブルを避けるために、必ず入力しなければならない。
選択式で色々な項目があるけれど、ぴったりな項目がなかったんで、今回は「DIYEntertainment > Others」から手入力で「MusicalInstrumentParts」と入れておいた。これで良かろう。
もろもろ入力したら、カートに入れ、配送方法(送料)を決めて支払いをするところは、プリント基板とまったく一緒だ。
※JLCPCBでのアカウント/支払い関連は、別記事にまとめてある。
到着が待ち遠しい!
支払いも済んだので、これで発注完了。先に発注したプリント基板ともども、到着が待ち遠しいよ。
到着したら、組み立ても記事にしようかな。それまでしばし、別のことでもやってるとするか。
【追記】3Dデータにダメ出しくらった件
本文に書いていなかったけれど、一度3Dデータにダメ出しをくらっていることを書いておかなければだ。
3Dデータは製造に入る前に「レビュー」という工程がある。業者のエンジニアが、データが正しいかどうかを確認するのだ。
今回の発注では、レビュー段階で一度「この3Dデータはダメですよー」と連絡が来た。簡単に云うと、ABS素材は複数パーツをまとめて発注できないのだ。なるほど。
もっと云うと、俺は鍵を「12個」「16個」で発注したけど、これもNG。最大10個までって書いてある("Max 10pcs same small parts could be supported in 1 file.”)。
結局、ファイルを提出し直して発注したのでした。
あー、勉強になったわ!
(次回に続く)