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【ルポ】トー横という問題

初めて行った時

2022年の8月か9月だったと思う。歌舞伎町の「トー横」に初めて行ってみた。私は18歳で、一人で行った。午後2時くらいだったと思う。

トー横という場所名は俗称・通称であり、正式には「シネシティ広場」と呼ばれている。文字通りTOHOシネマズの横(西側)で、その頃、東急歌舞伎町タワーが建設中であった。

シネシティ広場はかなり広いスペースだ。何平方メートルなのかはわからないが。周りにあるのは、ゲームセンター、飲食店、ライブハウスなど。

広場には色々な人間がいた。若者だけでなく、中年〜老人も多かった。彼らは数人単位で集まり、酒を飲んだりタバコを吸ったり、食事をしたりして、シネシティ広場の中で多くの島を形成していた。

私は適当に近くのファミリーマートでモンスターエナジーを買い、広場の中央より少し端で体育座りをし「彼ら」を観察することにした。
程なくして、数メートル離れた先で酒を飲んでいた、色落ちした赤い髪の若い男性に声をかけられた。最初、何と言われたのかは何故か全く記憶していない。彼はP(頭文字)と名乗った。

トー横の人々でも地面に直接座るのは抵抗があるようで、多くは段ボールを敷いてその上で過ごしている。その段ボールは、近隣の飲食店の裏から誰かが持って来ているものらしい。

私はPさんと、その隣にいた20代の女性とで談笑した。2人はカップルではない。私は初めてここに来たこと、18歳であることなどを話した。 

個人特定につながるため詳細に記述することは控えるが、その20代の女性は、逮捕され拘置所内で死亡した「トー横のハウル」とかなり密接な関わりを持っていた人だ。このことは数ヶ月後にTwitterで知った。

酒の回し飲みをすることになったが、私は流石に抵抗があったので、ほんの一口しか飲まなかった。ストロングゼロのレモン味である。

2時間ほど滞在し、私は帰ることにした。


「界隈」を覗いてわかったこと

ここでは、トー横界隈に幾度も顔を出して、私が感じたこと、考えたことを書こうと思う。

飲酒・喫煙・薬物について 


トー横キッズと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、地雷系ファッションに身を包んだ「メンヘラキッズ」であろう。男子もいるのだが、女子の方がかなり多い。年齢層は15歳前後が多いだろうか。

彼女らの多くが自傷行為をしている。それは「直接傷つける」行為だけでなく、薬の過剰摂取、売春(案件と呼ばれる)など多岐にわたる。

トー横で10代の飲酒や喫煙がよくみられるが、このグループの場合は「現実逃避」「周りに流された」「何かに依存したい」等といったパターンからその行為に至る場合が多いように思う。
不良行為、非行ではあるものの、所謂ヤンキーやDQNが大人ぶって酒を飲んだりタバコを吸ったりするのとはまたベクトルが違うような気がする。勿論トー横キッズの中にもそういう者が存在しないわけではないのだが、根底にあるのはやはり病んだ心であったりする。

また、あの場所では未成年飲酒・喫煙が一種の文化、慣習となってしまっているのもあるだろう。
そう、文化なのだ。飲酒・喫煙だけでなく、市販薬や睡眠薬の乱用も大きな問題になっている。(合法)薬物乱用も、あの界隈では一種の文化である。薬物乱用の原因も、先述した飲酒・喫煙とほぼ同様であろう。


一斉補導や広場閉鎖に意味はあるのか

トー横で未成年を一斉補導した、というニュースが時たまある。また、2023年冬ごろにシネシティ広場は閉鎖され、トー横の人々は近隣の飲食店の前などに居座らざるを得なくなった。

一斉補導は繰り返されているが、トー横キッズが消えることはないだろう。
毒親から逃げて家出していたものの、補導に引っかかり家に帰される、ということがあるようだ。また未成年の場合は「児相行き」になることがある。児童相談所の略だが、その実態はかなり過酷なものらしい。毒親、児相、心の闇などのことを鑑みると、あの場所に集まるのもそこまで異常なことではない。

心に闇を抱えた少年少女が歌舞伎町に集まり、不健全な行為に及んでいることそのものが、現代日本の社会病理を表しているのかもしれない。一斉補導はあくまで対症療法でしかないのである。「飲酒・喫煙・薬物・深夜徘徊はダメ」と否定するよりも「何故そうしたのか、何かあったのか」と話を聞いてやることの方が効果的だと思う。

トー横の近くに「きみまも」と呼ばれる施設ができた。都が運営している施設だ。39歳までならほぼ誰でも利用できる。無料Wi-Fi、軽食などを用意しているが本質は「相談窓口」である。私はきみまもに肯定的だが、何故もっと早く作らなかったのかと思う。

 

書きたいことは書けた。お読みいただきありがとうございました。

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