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18年ぶりの挑戦で得たギフト
「ピンチはチャンス」という言葉。実はあまり言いたい言葉ではない。特に、誰かに対して軽々しく言ったりしたくない言葉だ。
もちろん、個人的な体験として、あとで振り返った時に「あの時のピンチがあったからこそ」と思うことはある。けれど、苦境に立たされた瞬間というのは、大抵は思考停止になるし、意識を取り戻してもワタワタする。さらに、チャンスに変えられるのは、こちらが期待しているより時間がかかる。
とは言うものの、チャンスに変わったあとの世界の広がり方も知っている。人生が転換した瞬間だ。だから「ピンチはチャンス」という言葉を嫌ってはいないし、信じている。
私がそんなピンチを迎えたのは人生で数えるほどしかない。仮に、人生が変わるほどのピンチが月に一回やって来たら、それはもう「日常」だ。人生の波乱万丈レベルを無駄に上げたくはない。自分自身で体験できることは限られるし、そんな欲張ってはいけないと思っている。
幸いなことに、周りを見渡せば、ピンチをチャンスに変えてきた人たちがたくさんいる。その人たちの話を聞いて、何かしらを感じ取ることで疑似体験できる。
今日会ったお友だちの永田貴子さんも、私に疑似体験の機会をくれた1人だ。
都立大学駅から歩いて10分ほどの、閑静な住宅街にあるプライベートサロン「ネイルプレジャーヒーリング」を経営しているネイルアーティスト。「見目麗しい」という言葉は、この人のためにあるんだと思っている。
この見目麗しい貴子さんが、なんだか18年ぶりにネイルアートのコンテストに応募したというので「なぜ今チャレンジする気になったの?」と聞きたくて、会いに行ってきた。
というのも、ここ数日の貴子さんはツイッターで悶えまくっていたからだ。産みの苦しみというやつだ。そんなに大変な作業なのに、なんであえて今挑戦したのだろう?(確定申告もまだ手をつけていないはずなのに…)
しかも、寝る間も惜しんで出来上がった作品が気に入らなかったらしく、再度作り直していた。まるで「こんなもん人前に出せるかっ!」と釜から出したばかりの茶碗を割る頑固な陶芸家先生だ。そうして出来たのがこれ↓
ちなみに、「こんなんじゃダメなの!」と言ったのがこれ↓
比べて見ればたしかに違うけど、どちらも趣があって綺麗だと思いますが…
「なんかね、錦鯉が違うのよ。ほらこう…このあたりがね。浮かび上がってこないのよ。桜の花びらもね、桜じゃないの。これは桜じゃない。」
(花粉症真っ最中です)
貴子さんは2000年にロサンゼルスで開催された「WINBAワールドチャンピオンシップ」というコンテストのネイルアート部門で優勝しているのだが、それ以来コンテストには参加しなかった。そこには様々な業界的事情があってのことだったが、それをなぜ今、18年ぶりに出品することにしたのか。どんな目的があって参加したのか。不安はなかったのか。直球でそう聞いてみたら、直球で返してくれた。
簡単にまとめるとこうだ。
半年ほど前、彼女にとってあまり良くない出来事がいくつか重なって起きた。「あれ?なんでこんなに重なるの?ひょっとしたらピンチだぞ?」と窮地に陥ったことに気づいた。
今まで順調だったサロン経営も、このままではダメになる…と焦り、何をすればいいか必死に考えた。今、自分にできることは何か? 私には何ができるのか?
悶々としながらも、日常業務をこなし、人前ではいつものように明るく振る舞った。
秋にディズニーシーに行った時も、フォーメーションBのポーズをとって明るく振る舞っていた。
とにかく、できることは何でもいい。片っ端からやるしかない。そう思っていた時に、今回のコンテストを知った。今どきらしく、Instagram での「いいね」の数も審査対象になるらしい。
「最後にコンテストに参加してからかなり経つし、あの頃とは色々と変わっているかもしれない。けれど、何かの突破口になるかもしれない。」
旦那さんの「やってダメでも失うものは何もない。今より悪くなることはないんだから、やってみたらいい。」と心強いアドバイスもあり、参加を決めた。
はじめは、周りの誰にも知らせずにこっそりやろうと思った。応援してとお願いするのも図々しい気がしたし、応援してもらってダメだったら申し訳ないから。
けれど、なぜだか今回はみんなに見てほしくなった。最終的にダメだったら、かっこ悪いかもしれない。でもそんな自分も知ってもらいたい。だから、勇気を出して「応援してほしい」とFacebookに投稿してみた。
そしたら友達やお客様が次々にシェアしてくれた。知らない人が「いいねしたよ!」とコメントしてくれた。Instagram のアカウントを持っていない人が、このためにわざわざアカウントを作ってくれた。
泣いた。
現状をどうにかしたくて挑戦しただけなのに、こんなにもたくさんの人が応援してくれている。私なにか悪いことしたのかな?と思うぐらいの逆境が、実はギフトだった。みんなから大切なギフトをもらうための儀式だったんだ。
そう思うと、涙が止まらなかった。
私はどうやってみんなにお返しすればいいんだろう。今はそればかり考えている。
ピンチがチャンスに変わるのには、時間がかかる。その間、ただボーっと待っていても、自動的に変わるものでもない。避けてもいいけど、いつかまた向き合わなければいけない時が必ずやってくる。
もがき、悩み、動いた時にはじめて、ピンチはチャンスに変身する。その時、見える世界も大きく変わる。
彼女の体験を通してまた、ピンチというのは取りようによっては素晴らしい体験になるのだと知った。チャンスにも変えられるし、関わる人への感謝でいっぱいにすることもできる。普段から周りにバラが咲いているかのように美しい貴子さんがさらに美しく、穏やかな優しさに包まれているようだった。
PS.
今回のコンテストは、審査員による判定とともに、Instagramでの「いいね」数も審査対象になります。もし、このネイルアートが綺麗だ!すごい!と思ってもらえたら、https://instagram.com/p/Bf93Ss3DyFO/ (Instagram に飛びます)に「いいね」していただくと嬉しいです。
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