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い駒さん
前回の木更津遠征と時を同じくして、私はある人物にTwitterでDMを送りました。
「い駒さん、お疲れ様です。今度の週末、もしよかったら一緒に釣りに行きませんか?」
「いいですね!私初めてになっちゃいますが船でも!」
予約したのは仁丸という金沢八景にある遊漁船でした。横浜にある遊漁船の方がアクセスは良いことは分かっていたのですが、仁丸のホームページの釣果写真に載っていた30cm超える大きなアジが決め手でした。
い駒さんには予約した船宿と集合時刻を伝え、当日行きの電車を揃えて車内で合流することにしました。
当日早朝。品川駅から京急線に乗り込み、車両番号をDMで連絡しました。
座席でうつらうつらと船を漕いでいると、JBさんですか?とのんびりした声が聞こえ、青年が目の前に立っていました。
第一印象はバスケ経験のありそうな気の良い青年、といった印象でした。
「初めまして、JBです」
「どうも、い駒です」
本当に初めての出会いはよくあるTwitter友達とのオフ会でしたが、彼には2年後に僕の結婚式の受付をお願いするほどにお世話になることになります。
仁丸での釣りは、ほどよく釣れたという記憶以外はあまり覚えていないのですが、一つだけい駒さんの人柄を表すエピソードを鮮明に覚えています。
それは順調にアジを釣り上げていた頃、私とい駒さんにほぼ同時で一際大きいアジが掛かったときのことです。
私と彼は隣り合わせで釣りをしていたのですが、アジが暴れ回ったせいで僕の仕掛けと彼の仕掛けが絡んでしまったのです。
お互いに「絡んじゃいましたね」と呑気なことを言いながら魚を巻き上げてきたのですが、そこで上がってきたのは
「でか」
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今まで見たことのないような巨アジでした。
問題は、僕と彼の仕掛けが絡んでしまったことで、どちらがこの魚を釣り上げたのか分からなくなってしまったことです。
つまり、先程の引きは2人同時に魚が掛かったのではなく、どちらかの仕掛けに掛かったアジがもう1人の仕掛けを巻き込んで暴れてしまったことによるものでした。
僕は迷いました。これだけ大きいアジを釣ったことはないし、是非持ち帰りたいけれども、自分のものである根拠は何もない。
しかし、何というべきか逡巡している間に、い駒さんがいつも通りの朗らかな口調で言ったです。
「ああ、これJBさんのなんで。どうぞどうぞ」
今だから白状しますが、その時は本当に自分が恥ずかしかったです。いまだに昨日のことのように思い出せるほどに。
(彼に最近この話をしたところ、まるで覚えていませんでした)
ちなみに彼はこの数分後、何なく同じくらいの巨アジを手にしています。
後に、仲間うちの中でも稀代に「持ってる男」と呼ばれることになる彼の秘密は、きっとその器にあるのではないかと今でも思います。