
「はじめまして、ほんまぐりです」
『い駒さん、今度のカワハギ釣りにお誘いしたいTwitterのお友達がいるんですが』
『いいですよ、どなたですか?』
2018年1月末。
としまえんエリアフィッシングの後、僕とい駒さんは人生二度目のカワハギ船に乗り、そこそこの釣果を手にしました(相変わらず雰囲気でやってました)。
カワハギは今が書き入れ時に違いありません、是非三度目を!と息巻くい駒さんに、ふと思いついて提案したのが上記のくだりになります。
『ほんまぐりさんという方です』
『ああ、この前JBさんが言ってた釣果オラつきおじさんですか?いいですよ』
いいの!?
い駒さんにはこないだの鮮烈なエピソードを共有済みでしたが、快く了承してくれました。
『僕もTwitterでフォローしていますが釣りが上手そうな方ですし。つりったーのメンバーにも声掛けましょうか』
そんな訳で、自他共に認めるフットワークの軽い男、宮田を引っ掛けることに成功しました。
『ほんまぐりさんですか。僕はまだフォローしていないのですが、分かりました』
『大丈夫、きっと気さくな良い人だよ』
つりったー側の了承は取り付けました。あとは肝心のほんまぐりさんです。
緊張しながらDMを送ります。

こちらも快諾。
早速い駒さんが予約してくれた船宿のリンクをお送りすると、

行ったことあるとのお返事。
さすが、経験者は伊達ではない。
居住地域が全員散らばっていたので、JB・い駒はタクシー、宮田は電車、そしてほんまぐりさんは自家用車で向かうという現地集合形式とし、船宿で初顔合わせする運びとなりました。
…
あっという間に時間は流れ、当日朝。
今度は寝坊を無事回避し、い駒さんが回してくれていたタクシーに乗り込みます。
眠気はありましたが、つりったーのメンバーとともに初対面の人と釣りをするという摩訶不思議なイベントに、変に緊張していたのをよく覚えています。
隣のい駒さんも心なしか口数は少なく、目的地の船宿に着くまでいつになく静かです。
2月早朝はサンデードライバーも殆どおらず、我々が乗るタクシーのエンジン駆動音がくぐもって聞こえる以外には、道中とても静かだったのをよく覚えています。
「ほんまぐりさんって」
道の半ばを過ぎたころ、い駒さんがふと切り出します。
「はい」
「僕の推測ではゲイの50代男性だと思うんですが」
「ヘェっ!?」
あまりにも予想外な発言に変な声が出ました。突然何を言い出すんだこの御仁は。というかさっきからやけに静かだったのはそれか。
「いえ、それは知らないですけど…」と狼狽えながら、僕。
「僕の高校時代の友人で、新宿三丁目で働いてるゲイがいるんですけど、同じ空気感だなと思って」
と、矢継ぎ早に情報量の多い一文を叩き込むい駒さん。
「そうなんですか…いや、そうじゃなくてですね。男性の方だと思いますが、ゲイかどうかまでは」
必死に会話に追いつきながら返答するJB。
「そうですかね」やけに食い下がります。
「まあ、どんな人でも良いじゃないですか。釣り上手な方は間違いないですし。どのみちもう直ぐ会えますから」
「それはそうですね。あっ、もうすぐ着きます。ほんまぐりさんも着いてますかね?」
「あの人は大丈夫だと思います。…問題は」
「宮田ですね…」
としまえんの一件からして何となく嫌な予感はしていたのですが、今のところつりったーLINEを見ても起床連絡は来ていません。今起きればまだギリギリ間に合うのですが…
「まあ乗合船ですし寝坊したら最悪欠席で良いですけどね。おっ、船宿が見えましたよ」
カチ、カチとウィンカー音とともに車体が裏路地に入ると、船宿の看板が遠目に見えました。
「JBさん、あの人」とい駒さんが指差す先にはスタスタと足早に船宿の方へ歩く人影が。
「ほんまぐりさんですかね?」
「いや、分からないです。乗合船なので他のお客さんもいらっしゃるでしょうし。あとでDMでやり取りしましょう」
タクシーが船宿の手前に差し掛かったとき、その人影を追い抜きました。
「この人は…違いそうですね」
「ですね、とりあえず乗船手続きをしましょう。運転手さん、ここで降ります」
僕は会計、い駒さんがタクシーのトランクに入っているカワハギ船のタックルをよっこらせと降ろしてくれている間に、追い抜かれた先程の人物は先に船宿の引き戸をガラガラと開けて入って行きました。
「ちょっと今チラッと見えたんですけど、玄関で乗船名簿を書くみたいです。ただ玄関が狭そうで。さっき入った人が出てくるまでここで待ちましょう」
「分かりました」
ほどなくして、その人物が再びガラガラと引き戸を開けて出て来ました。
僕とい駒さんは何となく、軽く会釈をしてその人とすれ違い、玄関に入ろうとするとー
「すみません、JBさんですか?」
「えっ?」
今すれ違ったばかりの人からまさかのアカウント名で呼ばれ、思わずびっくりして振り返りました。
そんな馬鹿な。
まさか、この人が?
「はじめまして、ほんまぐりです」
釣果オラつきおじさん、ゲイの50代男性と散々な推測を呼んだこの人物は
