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初めての魚
さて、2週にわたる延期を経て、ようやくびめしとの初めての釣りが決行されました。しかし、実はこの日の出来事を誰かに話したことはほとんどありません。理由は単純です。
「…なかなか釣れないですね笑」
この日、ターゲットの魚種であったハゼがろくに釣れなかったからです。
ハゼ釣り。この釣りを僕が知ったのは東京都民になってからでしたが、当初は魚体も大きくない、数釣りが当然の小魚にのめり込むなんて、東京湾の釣りは何と枯れているんだろうと思ったものです(大変失礼しました)。
ところがどっこい、いざやってみるとこれがなんとも奥深い。繊細なアタリ(魚が餌を突つくことで顕れる竿先の振動やウキの変化)、小さい魚体に比べて存在感のあるプルプルとした引き味。そして何より、天ぷら唐揚げにすると大変美味なのです。
そんな訳で、僕はすっかりこの釣りにのめり込んでしまった訳なのですが、如何せん、魚の気配は全くしません。何故か?
着いてから気付いたことですが、この日、我々が現場についた夕方4時半前、東京湾は下げ潮(干潮に向かって潮位が下がっていく状態)でした。これがいけなかった。ハゼという魚は往々にして上げ潮(満潮に向かって潮位が上がる状態)に伴って岸際まで寄ってくる習性があり、そのタイミングで釣りを始めてこそ数が釣れる魚なのです。
もちろん、下げ潮でも仕掛けなど工夫はいくらでもやりようがあるのですが、当時の僕の貧弱な装備では岸際3-5m程度の浅瀬しか狙えませんでした。
そんな訳で、私は内心暗澹たる気持ちで鏡のような水面に浮かぶ唐辛子ウキを眺める時間だけが過ぎていきました。
このまま釣れなかったらどうしよう。勿論遊びごとではあるけれど、2週も楽しみにしてくれていた釣りの思い出がこれでは気を悪くされてしまうんじゃなかろうか…
しかし、その時は突然やって来ました。
「JBさん、何か釣れました!でもこれハゼじゃないですよね?」
正直、この時の記憶はあまり定かではないのです。
ただ、覚えているのはびめしが持っている手のひらサイズの可愛らしいクロダイと、そして何より、「釣れてくれてよかった…」という心からの安堵でした。
これが、後につりったーの名付け親となるびめしが初めて東京で魚を釣った瞬間でした。