「竿がァァァア」
悲痛なツイートとともにアップロードされていたのは、彼の今さっきの釣果でした。
えっ?
仕事中の休憩時、その画像を一目見た僕は、事態を飲み込むのに少々時間を要しました。
先端からポッキリと折れた竿。
ーと並べても堂々たる体躯。
どう見ても自分が過去釣ったことのあるどの魚よりも大きい。
これ、釣ったの?
どうやって?
というか、竿って折れるの?
そして、この魚何?
ぐるぐると頭の中を疑問符が巡りますが、
「おめでとうございます!!」
まずは最大限祝福の言葉を送りました。
この魚の名前はカスミアジ。最大1メートルを超えるアジの仲間の魚です。
ただ、個人的にはその鰭の美しい蒼にちなんだBluefin Trevallyという英名の方に洒落っ気を感じます。
日本では沖縄県や鹿児島県南部でも釣れる魚ですが、その強烈な引きと珍しさから釣り人憧れの魚の一つに数えられます(割とコアな魚ですが)。
まあただ当時の僕は勿論、彼もそんなことは露も知らず、未知の大物に年甲斐もなくはしゃいでしまいました。
文字ごしに伝わる彼-い駒さん-の喜びに和みながら、僕は仕事に戻るべく、どこか晴れやかな気分でスマホをスーツにしまいました。
ただ唯一の疑問を残して。
ドラグって何だろう?
(終わり)