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「雰囲気は良い」

何故僕がつりったー発の大型遠征を来週に控えながら、誰にも断りを入れず単独釣行に踏み切ったのか?

きっかけは、つりったーLINEで日程調整をしているさなか、伊豆大島の堤防釣り関連記事を漁っていたときのことです。

「伊豆大島で釣りをするならベストは9-11月」
「12月になると水温が下がり、堤防に青物は寄り付かなくなる」


まずい――。


すでに日程調整の途中段階で12月上旬の出発は厳しいとわかっていました。このままではせっかくの遠征が空振りに終わってしまうかもしれない。とはいえ皆の意気込みが高まっている中、中断を進言するのは気が進まない。


今思えば完全にサンクコスト効果が働いていましたが、僕の心中では「遠征は決行する。ただ事前に現地で生の情報を集めることで本番の確度を高めたい」という思いが沸き上がったのです。





いえ、白状します。「完全に水温が下がりきる前に単独釣行を決めて、自分だけでもいい思いをしておきたい」という邪な考えが胸によぎったことは否定しません。



かくして私は2017年12月9日(金)、大島行きのフェリーが出航する竹芝客船ターミナルに降り立ったのです。
伊豆大島。直線距離にして東京都心から約100km、高速船であれば1時間45分で到着する伊豆七島の中でも最短距離にある島ですが、釣りの絶好のチャンスである朝まずめ(夜明けから日の出の前後1時間)に間に合うには、到着前日の夜10時に出航する「さるびあ丸」に乗船する必要があります。


人生で初めて大型客船に乗るという体験は間違いなく得難いものでしたが、実はこの時の記憶はあまり定かでありません。執筆日から8年近く前ということもあり記憶が薄れているのは間違いないですが、完全に未知の「秘境」に胸が躍り、船の思い出どころではなかったというのが正直なところです。


かくして出発もそこそこに硬いベッドでぐっすり眠り、あっという間に早朝6時過ぎ、発着場所である伊豆大島 岡田港に到着したのでした。



堤防に打ち寄せる波で揺れる乗降用タラップを慣れない足取りで降り、顔を上げたときの思い出は今も忘れません。


都心では見られない真っ青に揺れる海面と、眼前に迫る入り江。
集落は漁港周辺にまばらに見えるも、木更津や城ケ島のような内地とは違う、自然に囲まれた場所でしか吸えない澄んだ空気。

全てが輝いて見えました。


現在朝の7時、タイムリミットは東京行の高速船が岡田港に到着する15時頃まで。時間はたっぷりありました。



いそいそと堤防の真ん中でリュックを広げ、伊豆大島沿岸を回遊するカンパチを狙ってジグをキャストし始めました。



―が。



ー釣れない。



ー釣れない!



一級地にも拘わらず釣り人の姿はまばら。これを僕は遠隔地特有の人口密度の低さによるものだと思ったのですが。


2017年12月。黒潮蛇行前、温暖化もそこまで取りざたされていなかった頃の冬の伊豆大島からは、とうにカンパチや主要大型魚は沿岸を去ってしまっていたのです。


なんてこったー。


相変わらず美しい青色をたたえる海に反して、生命反応は全くなし。
時間は既に13時、座り込みながら無気力にルアーを底層で動かしていると―。


ゴゴン!!


不意な手応えに、眠気でうつらうつらしていた頭がたたき起こされます。
一人で「これは!?」「これは!?」とつぶやきながら慎重に巻き上げてくると…


「ええ…」


上がってきたのは15cmにも満たないエソ。結局この日これが唯一の超過となりました。


ただ、通りがかった地元の釣り師らしきおじさんからは「11月までは2-3キロのカンパチが堤防下を泳ぎ回っているのを見た」との証言も得られ、次回に向けて一定の期待が持てる一日になりました。


そして、ふとスマホを開くとそこにはつりったーLINEでびめし、い駒さんからのメッセージが。


『JBさん、大島はどうですか?何か釣れた?』


小さいエソだけだよー。と正直に吐露したい気持ちもありましたが、自分に嘘をつかず、かといってメンバーの気勢を削がない一言をメッセージに打ったのでした。


『雰囲気は良い』


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