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「あれ、宮田は?」
つりったー新年会の終盤、宮田の急な提案により決定した、としまえん練馬サーモン釣行。
全てが僕にとって未知な釣りであるため、帰宅後さっそく「としまえん」「トラウトフィッシング」について調べてみることにしました。
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宮田の言う通り、としまえん名物の巨大プール施設は、冬季にトラウトフィッシングエリア(ニジマスを中心としたマス釣り類の管理釣り場)として活用されているようでした。
エリアはそれぞれ釣法によって区切られているようで、ルアー釣り専用の「ナイアガラエリア」。流れるプールを活用したルアー/フライ/餌釣り併設の「アマゾンエリア」。
そしてーーーー
「練馬サーモン含む大型魚だけが放流された、ルアー/フライ専用のミシガンエリアか…常連が陣取ってそうだなあ」
公式ホームページに上がっている過去の釣果報告を見ても、大物を手にしているのは決まった顔ぶればかり。シーズン中は熟練の常連が通い詰めているのでしょう。ここに初心者が割って入るのは相当ハードルが高そうです。
「あとはそもそものニジマスの釣り方だな」
詳しい内容は省きますが、ニジマスという魚の大きさ(30cm〜80cm)の割に、必要とされる竿も糸もとても華奢な作りになっていました。さながらあのヴァンキッシュおじさんの装備を彷彿とさせます。
「今後もとしまえんに通い続けるかも分からないから(※)、今回はレンタルで済ませよう。ルアーが駄目ならエサ釣りに切り替えたい気持ちもあるし」
※通い続けます
釣れなかったときの予防線を張りがちなのは僕の悪癖です。
一方、びめしは知らぬ間に揃えていたアジングのタックルで挑むようで、練馬サーモンを想定したルアーを多数買い込んでいるようでした。
仕事に忙殺されているうちにあっという間に日にちは過ぎ、いよいよ釣行当日1/20(土)。
「…はッ!!」
ふっと目が覚め、時計を見ると朝7時。
集合時間が7時なので、圧倒的寝坊でした。
白金高輪から豊島園まではどう見積もっても1時間はかかる距離でしたから、ここまで見事に寝坊すると今更焦る気も起きません。
…
8時半ごろに人生初の豊島園に到着すると、まだ遊園地側は開園していませんでした。
人っ子1人おらず静まりかえった遊園地は、曇り空も相まってそこはかとなく不気味でした。
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ここでようやくTwitterで先行到着組の模様を確認すると、
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おい、マジか。
丸々とした40センチはありそうなニジマスを手に嬉しそうなツイートをするびめし。
早朝に魚の活性が高いのは海も管理釣り場も同じらしく、今の時間帯が時合のようです。
急ぎ足、半ばダッシュで案内板にあるフィッシングエリアに向かうと、遊園地の閑古鳥とは対照的に何人もの釣り人が広大なプールエリアで竿をふるっていました。
「い駒さん、鳩さん」
遠目に見覚えのある人影が目に止まり、近づきながら声をかけます。
「ああ、おはようございます」とのんびりした声でい駒さん。
「びめしは?」
「彼は早朝に良いサイズを獲ったので、ミシガンエリアで練馬サーモン狙いです」
奥の方に目をやると、びめしらしい若者が長靴で浅瀬に立ち込んで竿を振るっていました。
「見ました見ました。お二人は?」
「1-2匹ですけど二人とも釣れましたよ。やはり朝が勝負ですね」
「やはりそうですか、獲れて良かった」
「中央のスペースで釣った魚を炭焼きできるそうなんで、あとでやりましょう」
「是非。…あれ、言い出しっぺの宮田は?」
「…」
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何故か「ヒトラー最後の12日間」のクライマックスばりにバツの悪い顔をする二人。
「宮田は…」
「宮田は二日酔いで休みです。今日はとしまえんには来ません」
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宮田のことを強く非難できない僕と、い駒さん鳩さんの間を、1月の冷たい風がひゅるると吹き抜けていきました。
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