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南国チョコフレンチトースト

先日、ちょっとした用事のある夫を待つため、とあるスーパーマーケットの駐車場で停めたバイクにまたがって一人ボーっとしていた。
その日はスーパーマーケットの外でローカルマーケットが開催されていて、まぁどこでも同じようなタイのお惣菜やファーストフードなど、とにかく食の屋台がたくさん集まる一般的なマーケットだ。

たまたま私がバイクを停めて待っていた場所が、そのローカルマーケットの入り口付近。その入り口では一応体温を測る機械が設置されていて、その検温機のすぐ横に小さなテントを出して小さなテーブルの上でバナナを販売しているおじいさんが目にとまった。

他の屋台はマーケットの囲いの中心部に並んで店を出しているだが、このおじいさんだけはそこからちょっと離れて入り口の横にちょこんといる。そして売り物はバナナだけ。多分10房くらい。
私はそのおじいさんのテントの丁度真横の角度にいて、そこからは座っているおじいさんの曲がった背中やバナナを持ってきたであろう箱などが丸々と見えていた。

横から見えるおじいさんのひどく曲がった背中から哀愁を感じた。タイにはちゃんとした年金制度がないために高齢になっても生活のため働かなくてはならない、援助してくれる家族がいないお年寄りのことを想ってしまった。

「あぁ、こんなにご高齢になってもお庭になっているバナナでもマーケットで販売しないとならないなんて大変だな。私は七十歳くらいまで生きるとして、どんな生活をどこで送っているのかなぁ。。。」としんみり。

チェンマイでは庭に果物の木がある古いお宅が多く、家の前の軒先(無人スタンド的に)や道の脇で家では食べきれない果物を売っているお年寄りがたくさんいるのだ。販売目的ではない小規模の家庭菜園や庭の木になっているものだから農薬を使わない完全オーガニック。形や大きさははさまざまで、それがまた自然体でいい。そして美味しいのだ。私はこのような軒先販売をよく利用させてもらっている。特にバナナは年中無休本当にどこにでもあるので街中バナナだらけだ。バナナの木は全く手入れをしなくても育ち実をつけるので、土地の税金対策(更地だと土地税が発生するが、植物を育てるなどちゃんと使用していると税金免除)や垣根のように植えるところが多い。

この時は夕方6時前。丁度マーケットが始まり、夕飯のおかずを買い求めに人が集まり出して盛り上がるところだった。

バイクにまたがったままの私の視線の先にそのおじいさんがいたので、なんとなくそのままぼーっと眺めていたところ、おじいさんがおもむろに櫛を取り出し、決して多いとは言えない髪を斜め横に持ち上げるよう、右手に櫛、左手で髪を押さえながらとかし始めた。綺麗に髪がまとまり、その櫛をしまった先がなんと伝統的な餅米を入れる籠!しかも鞄サイズのとても大きい、肩紐のついたものだ。

↑こんな籠。これの大きいサイズ。

普通なら蒸した餅米を入れる籠なのだが、このおじいさんはご自分の鞄として使っているのがなんともおしゃれ!
予想外の光景に私の目はおじいさんに釘付けになった。そして餅米の籠に櫛を入れた際に、おじいさんの目が私の目と合ってしまった。私は慌てて(なぜ?笑)他の方向をむいたが、すぐにまた目がおじいさんを追ってしまう。

とそこへ、私の背後からきたバイクの若い女性が勢いよくそのおじいさんのテントの真横にバイクをとめ、降りながら、歩きながらおじいさんに気さくに話しかけスーパーの中に急いで駆け込んでいく。
おじいさんのお孫さんかな?お友達?おじいさんも親しみを込めて言葉を返している。
そしておじいさんは背筋を伸ばし、両手で胸の辺りのシャツをピシッと直し大きく深呼吸。

そこへ二人連れの女性がやってきた。

おじいさんはすっと立ち上がり、背中はピンと真っ直ぐになる。顔は笑顔で艶々と光っている。

その女性たちが左端のバナナを一房指差して購入することに。するとおじいさんがそのバナナを持ち上げて、イキイキと説明し始める。

「本当はね、このバナナのふさにはもっとたくさんバナナがついていたんだよ。でも、間引きをしてちゃんと一本一本が美味しくなるように育てたんだ。」

と。二人の女性たちはそれを聞いて「へ〜、そうなんですね!」と関心をしてお買い上げ。

そしておじいさんはまた座ったのだが、すぐに別の女性がおじいさんのところ目指して真っ直ぐにやってきた。おじいさんはまたスッと立ち上がり、笑顔で対応。その女性は言葉は交わさなかったものの、ささっと真ん中の一房を買っていった。

そして次には若い男性がやってきて話しかけ、迷わず購入。

おじいさんの顔は常に笑顔で、本当に油を塗っているんじゃないかと思うくらいピカピカしている。もう哀愁なんて1ミリも漂っていないのだ。

この数分足らずでお客さんが来ては買っていく、どこにでもあるはずのバナナなのに、このおじいさんが売っているバナナって何か特別なのかしらと私はもう断然気になってしまい動かずにはいられなかった。

お店の前にやってきた私は「こんにちは!」と声をかけ、並んだバナナを見てみる。

チェンマイにはたくさんのバナナの種類があり、日本で一般的に売られる長いバナナは”グルアイホーム”といって、香りの良いバナナという名前。それが他のバナナよりも高値で売買される。おじいさんが売っているのは品数も多くないのでこのバナナかなと思っていたら、やはりそのグルアイホームで、ちょっと小ぶりなものだった。

左から、まだ青みがかったふさから始まり、真ん中が明日くらいから食べられる程よい状態、そして右端が今日明日食べた方がいいよという完熟のバナナ。お値段はまだ青い左が高く、右に行くほど安くなる。
私はバナナを買うときはスムージーやケーキにするので、よくよく完熟のものを買うことにしている。今回も一番右端のものを買うことにする。

「これください」
と言うと、おじいさんはさっとビニール袋を取り出し、1房を袋に入れながら
「色がね、他のより綺麗にならなかったからね、安く売ってるんだよ」
と言った。確かに、熟れた状態とはいえ他の市場や露店の熟れバナナよりもかなり状態が綺麗でまだ元気な黄色、しかもかなり値段設定が低くてびっくりした。思わず私は勢いでその一番右側のバナナを2房買うことにした。

お礼を言って袋に入れたバナナを持ち、おじいさんのテントを離れバイクに近づくと、丁度真横から夫も戻ってきたところだった。

「あれ?SUMACOさんショッピング?えぇ!!!SUMACOさんが果物を買ったの!?珍しい〜!」と驚く夫。えぇ、私は滅多に自らは果物を買わないですよ。なんとなく…嫌いではないのだが、好きでもない。特に普通にスーパーなどで売られている販売目的で育てられた果物の味に馴染めないのだ。ただ、一般家庭の庭で育った果物だと「美味しい」と感じるんだなということがタイに来てはじめてわかった。

「あぁ、あのおじいさんがね、なんだかすごく素敵で。おじいさんのバナナを買いたくなったの〜。」と私が夫にいうと、その様子をずっと見ていたおじいさんに夫が、
「ありがとうございました!!」と大声でお礼を言った。

帰りのバイクの上で、なぜこのこのおじいさんのバナナを買ったかという話を夫に話すと夫も「このおじいさんはきっと生活のためというより、丁寧に育てた自慢のバナナをお客さんに食べてもらいたくてマーケットに来て販売しているんだね。」と。
「最初私さ、おじいさんを見ていてちょっと可哀想というか、この国で高齢になることに対してネガティブに感じていたんだよね。でも、このおじいさんめっちゃかっこよくて驚いた」と自分のそんな目線で物事も見ていたことを恥ずかしく思いながら告白した。

「人ってさ。歳を取れば取るほど、その人の生き方が表に出てきちゃうんだよ。人の美しさって若い時は器(身体)の美しさにカバーされて”目”で惑わされかちだけど、身体の衰えにより、経験から得たその人の生きる姿勢がどれだけ美しさを放つかが分かりやすくなるんだよね。だから人の美しさってそもそも年齢とは関係ない”感じるもの”であって、本当は若い時でも歳を取っても内側の問題っていうことだと思う。」と夫。

家に帰って小腹が空いたので、早速おじいさんのバナナを1本食べてた。

めちゃくちゃ美味しい!!!

今までに食べてきたバナナより”クリーン”な味がして、”ほこっ”とするくちどけの食感のこのバナナが本当に美味しくて驚いた。おじいさんの言っていた通り、丁寧に美味しく育ってきたバナナなんだなぁ。間引いた分だけふさについているバナナの数が少なくなり、つける値段も安くなるけど、こんなバナナを食べちゃったらまたおじいさんのところにわざわざ買いに行きたくなってしまう。
これはスムージーやケーキにしてはもったいないと思い、翌朝のフレンチトーストにすることにした。

ここ最近、自身がこの土地で高齢になった時のことを想像してなんとも言えない不安に苛まれていたのだが、そんな不安を吹っ飛ばす元気をこのおじいさんにいただけた。今の自分ができること、目の前のことを日々やっていこう。そうしたらきっと大丈夫。



南国チョコフレンチトースト

これは私がタイに来てからよく作る、南国の素材を使ったシンプルなフレンチトーストです。今では夫の大好物。夫の方からリクエストしてきます。

コーヒーとよく合う。お気に入りの果物はパパイヤ。

材料:

・食パン 厚切りではないもの
・チョコ牛乳/ミルクココア 200ml
・砂糖 大さじ1
・シナモン 少々
・バナナ
・もう一種類くらいお好みの果物
ココナッツオイル
卵 1個

作り方:

  1. ボウルにチョコ牛乳/ミルクココア、卵、砂糖を入れてよくかき混ぜる

  2. フライパンを火にかけて、ココナッツオイルをフライパンにあった適量を入れて温める

  3. 焼く直前に、食パンを1の混ぜた液に両面しっかりとつけて、熱くなった油のに並べていく。火は強火。

  4. 食パンがフライパンの底面全体に並べられたら蓋をして焼く。

  5. 数分で、フライ返しを使い裏面がこんがり焼き色がついたかチェック。上面にシナモンをさっとふりかけてからひっくり返して、また蓋をして焼く。

  6. また焼き具合を見て、こんがり焼き色が両面についた時点でお皿に移す。厚切りの食パンだと中まで液を浸透させ、しっかり中まで火を通しつつもこんがりと焼くのが大変なので、我が家では普通の食パン。外側がカリッと中がふっくらジュワッを簡単に作り出せるため。

  7. お皿にはフレンチトーストと一緒にひと口大に切った新鮮な果物を盛る。

このフレンチトーストに果物をのせて食べると、温かいチョコレート風味のフレンチトーストと冷たくで爽やかな果物の甘みが口の中でぎゅっと混ぜ合わさって最高に美味しいのです。バターを使わずココナッツオイルで焼くことが”南国”を醸し出す要因で、フレンチトースト自体もココナッツオイルのおかげで少しフルーティな風味と、食パンの耳部分がサクッとした仕上がりになるのです。

※正方形の食パンの場合半分に切ってから液につけると、焼くときにフライパンに多めに入り一気に焼けるのと、フォーク1本で食べやすいのでおすすめです。

よかったらお試しください。

家の軒先で売られているパパイヤ。この季節には郊外でよく売られているので
見つけたら必ず買います。
これもバイクで走っていて楽しいことの一つ。



<Amazonのアソシエイトとして、[釣妻食堂]は適格販売により収入を得ています。>

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