太さ0.08mmの世界。「かつらの学校」で学んだこと。
1.日本人の髪の平均の太さは0.08mm
日本人女性の髪の太さは、平均約0.08mmと言われています。
私は小学校の時、家庭科の授業がとても苦手でした。。。
特に裁縫の糸を針に通すことに苦戦し、毎回の授業が苦痛だった思い出があります。。。
ですが、なんと裁縫の糸よりも約1/10の細さが髪の毛となります!!
想像するだけで気が滅入りそうですが、その「0.08mmの世界」は非常に奥が深いことを「かつらの学校」で学んできたので紹介したいと思います。
2.かつらやウィッグをカットする美容師を育てる、日本でたった1つの学校
2021年9月。美容師経験ゼロの私ですが、主催の日本ヘアエピテーゼ協会さまに懇願し、「かつらの学校」を受講させていただきました。
かつらの学校は2日間のプログラムです。
1日目に抗がん剤治療など専門的で具体的な髪と心のメカニズムについて。
2日目は、かつら・ウィッグの構造、ウィッグカットの技術を学ぶ講義です。
その中でも、衝撃的だった「手植えウィッグ」について紹介します。
3.「手植え」は職人の領域
髪は全体で約10万本生えていると言われています。
えっ。。。
ちょっと待ってください。
そうです。ウィッグの大きさにもよりますが、「手植え」でウィッグを作る場合は、数万本を手作業で植えていくことになります。
仮に10万本を植えるとしましょう。
1本を1秒でぶっ続けで植えたとしても、27時間以上もかかる作業です。
しかも、太さ0.08mmの髪の毛を小さな下地のネットに縫い付けていくという、想像を絶するような途方もない作業です。。。
こうした「手植え職人」が、中国や東南アジアの工場で多くいらっしゃり、ひとつひとつ丁寧に作られるもの。それが「手植えウィッグ」なのです。
4.実際に「手植え」を体験してみた
かつらの学校では、この「手植え」が実際に体験できます。
家庭用スポンジのネットに専用の工具を使って一本一本植え付けていく、というのが手植え体験ですが、開始10秒で心が折れそうになりました。。。
そもそも裁縫の玉止めも手こづっていた私が、その1/10の細さの髪をうまく扱えるはずもなく悪戦苦闘。。。
丁寧に講師の方に教えていただいたこともあり、15分ほどでようやく1本を結ぶことができました。そこからもスムーズにできることはなく、30分で植えられたのはたったの4本だけ。。。
「そりゃ、値段も高くなるわけだ」と、心から納得した瞬間でした。
手植えウィッグは品質も高いことから、十万円〜数十万円もする高額商品です。人の髪の生え方に近い形で植えられているため、より自然に見えるというメリットがありますが、高額であること、仕上がりに時間がかかるという課題もあります。
ちなみに素人が1から全部を作るとなると3ヶ月ぐらいかかるそうですが、
慣れた職人さんですと1週間もかからないとのこと。
※実際には1本ずつではなく数本まとめて植えていくようです。それでも1週間はすごい、、、!
改めて、「手植ウィッグ」は職人の技術によって支えられているものだということを教わりました。
※Youtubeに手植えの様子の動画がありましたのでさらに興味のある方はどうぞ!
5.「機械植え」は安くて早い!ただし見た目や重さが課題
「手植えウィッグ」の他に「機械植えウィッグ」があります。
コスプレ用やファッション用のウィッグのほとんどはこれに当てはまり、数千円〜1万円程度で購入することができます。
機械化した方が安くて早く仕上がるメリットがあり、かなりお買い得にはなりますが、見た目や重さに課題があります。
「あれ?そもそも手作業でやっているのを機械でやるわけだから、何がそんな変わるの??」
そうです。初めは私も全部機械化すればいいのになぜやらないんだろう、と不思議に思っていました。
というのも「機械植えウィッグ」と聞くと、ミシンのような機械が自動で髪を植えてくれるものだと思っていました。
ですが、それは大きな間違いでした!
実際の機械植えとは、髪をカーテンのように上部分だけをミシンで縫います。そしてそのカーテンのような髪の束を型に沿って繋いでいき、ウィッグを作っていきます。
「機械植え」と言っても、機械がやってくれるのは上を止めるところだけ。
あとは型にあわせて丁寧に形を作っていくのもまた職人さんの手作業なのです。
束の間が空いてしまうと隙間が見えてしまったり、見た目が段々畑のようになってしまいます。
「機械植え」とは言え、よりよい商品に仕上げるためにも、職人さんの技術が光るものなのです。
6.ウィッグは職人の手による"ものづくりの結晶"だった
私は「かつらの学校」を受講する前まで、ウィッグは作り手が見えない、どこか無機質な商品のように感じていました。
何となく自販機のボタンを押すとポッと出てくるような、そんなイメージでした。
ですが、ひとつひとつのウィッグには職人の技術が込められて出来上がったものなのだということがわかったんです。
僕の好きな広告の一つに「アメリカンスピリッツ」というタバコ銘柄の広告があります。
よく考えれば当然のことなのですが、タバコも葉を育てるところから農家の手で作られ、数々の工程を経たあとタバコとして販売させています。
このようにウィッグも、海を越えた遠い国で、長年技術を磨いてきた職人の方々の手で出来上がる「編み物」のような存在だということを強く認識することができました。
かつらの学校を通し、"0.08mmの世界”を自分の目で見て、自分の手で体感することで、ウィッグは人の手の温もりがある"ものづくりの結晶"であるということを学ぶことができました。
「商品が完成したらこの想いも一緒に届けていきたい」
そう強く心に刻みながら、今後も取り組んでいきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?