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海外武者修行の旅no.4 ニューヨーク卒業編part 1 - ビザが出ない!!!

2018年の春、友達を誘ったダンスの体験レッスンの後でお茶をしていた時に友達がふと言った。

「そんなに楽しそうにウイーンの話をしてくれるのに、どうしてウイーンに住もうと思わないの?」

「あれ、どうしてだっけ?」
「ウイーンは心の故郷なんでしょう?私だったら故郷に帰るなあ」

私はニューヨークに住み始めてからちょくちょく
ウイーンへのホームシックにかかっていた。
ただ、これまではなにか心の声のようなものが

「ニューヨークで頑張れ!学ぶものはたくさんある」

と言っていて、自分でもびっくりするくらいその言葉を素直に受け入れて
なんの疑問も持たず、がむしゃらに頑張っていた。
自分の頭の中にそれまで「帰る」という選択肢は全く浮かばなかったのだ。

友達の言葉は、そんな私の心を少しづつ少しづつ溶かしていった。
そして2018年初夏、ふと、自分の心の中で声が聞こえた。

「ニューヨークは卒業だ。心の故郷へ帰ろう。」

何かが弾けたようだった。そうだ、もう卒業しよう。。。

それから、ブルドーザー ツリエツの行動力再始動である。
まず、すぐにウイーン国立歌劇場の元上司に相談のメールをしてみる。ラッキーなことに、いつも超多忙の上司からびっくりするほど早く返事がかえってきて、
「今すぐ帰ってこい。前の仕事と同じでよければすぐに雇ってあげる」

との返事。その次の日にはその旨を証明する書類まで届いた。

その手紙を持って、アメリカにあるオーストリア大使館へビザの件で話に行ってみる。が、いまいち煮え切らない返事。

「アメリカに住んでいる人は、本来ならアメリカにあるオーストリア大使館でビザをもらってからアメリカに入国するが、日本人の場合はオーストリア内でビザの申請ができるから、その方がもしかしたら申請が早いかも、%$#@!&*。」

色々とごじゃごじゃと理由を並べられる。とにかくはっきりしない。さすがオーストリア人、水に濁す癖がある。。。申請書類をなんだか受け取りたくなさそうな雰囲気なので、夏にウイーンまで行って申請することにする。

夏にウイーンに行き短い数日の滞在期間の間に、住所を決め、ビザのための健康保険に入り、その他ビザの書類を全部揃えて、ビザ申請のために外人局へ。
ところがどっこい、ここでも、

「アメリカに住んでいるならアメリカにあるオーストリア大使館からビザの申請をした方がいい」

と言われる。
なんだか話がかみ合わない。狐につままれたような気持ちになりながらも思い書類を全部持ってニューヨークに帰宅。

再度アメリカにあるオーストリア大使館にビザ申請のアポを取り、数ヶ月後に面談に行くと、

「ビザの申請方法が最近変わってきているの。日本人ならウイーンに移住してから現地でビザ申請してください。日本人なら6ヶ月間も観光ビザで滞在できるから時間はあるわ。」

とのことで、やはり書類を受け取ってもらえなかった。

そんなこんなで秋になる。秋はオペラの季節で新作公演が控えており、非常に忙しい。これはもう、大使館で言われた通り、当たって砕けろ、ウイーンに移住してからビザ申請するっきゃない!ということで、ビザの話は数ヶ月放置。

2018年冬と2019年の年明けはオペラの新作「アンネフランクの日記」の公演をブロードウエイにある小さなホール2箇所でやることになっていた。自分の中ではニューヨーク卒業公演。本当に素晴らしい仲間に恵まれて制作した作品。公演を大成功で終えた翌日は後片付け、そしてその次の日にウイーンに飛んだ。
ニューヨーク生活を始めて9年目に入ったところだった。グリーンカードもまだ数年残っていたが、グリーンカードを捨てることには何の未練もなかった。
ニューヨークを卒業すると決めたら、1日だって無駄にはできない。

ウイーンに入ってからは、ビザの情報収集を現地の日本人の間ですると、「ビザの発行を拒否された」という話をたくさん耳にした。数年前までは仕事があったり、正式に大学の学生になったりするとまず問題なく出ていたビザも、最近では出なくなっているとのこと。
雲行きの怪しさを感じながら再度外人局に赴く。
順番が来て担当官の部屋に呼ばれ、書類の束を抱えて部屋に入るも、
担当官は私の顔を見るなり、まだ私が書類をみせる間もなく

「あなた何人、あ、第3グループね(第2グループはユーロ圏の国の人、第3グループはそれ以外の国の人)ユーロ圏に親戚でもいないの?そう、いないの。。アーティスト?じゃダメね。ビザは出ないわ。」

少し食い下がったがまったくダメ。水戸黄門の印籠として頑張ってくれるのでは、と期待されていたウイーン国立歌劇場からの就職の手紙もまったく功を奏せず。。敗北。。。

かなり落ち込んで外人局から戻る。
が、ここでしょぼんとニューヨークに帰るツリエツではない!
ニューヨークは卒業なのだ。
私はヨーロッパが好きなのだ。
さてどうするか。。。

次回に続く。。。