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夏の記憶

夏がやってくるにつれて、順調に回復しているように見えた体調が、またぶり返してきてしまった。

たぶん、暑さに脳がやられたのだろう。
体温調節には、自律神経をたくさん使うという。もともとうつで機能が落ちている私の脳は、体温調節という大仕事に耐えられなかったのだと思う。

ただ、それと同時に、私が特に夏に体調を崩すのには、他にも理由があると考えている。

私が2年前過労でうつ病を発症したのは、8月だった。春頃から身体はサインを出し続けてくれていたのに、私が無視して働き続けたせいだ。そのせいで、私の夏の記憶は、とんでもなく辛く、苦しいものになってしまった。

暑さも、蝉の声も、真夏の太陽も、雲が低い空も、エアコンの効いた室内も、全てあの時の記憶を呼び起こしてしまう。
仕事で大変だったことも、上司からの言葉も、くたくたになって廊下で座り込んでしまったことも、徐々に襲ってくる悲しみと怒りがないまぜになった感情も、全部身体がはっきりと覚えている。


私の身体にとって、夏は、「私が私を裏切った記憶」である。


私は、自分の身体を優先することができなかった。
24年間、いつでも私を支え、苦楽を共にしてきてくれた自分自身の心身を、私は労わることさえしなかったのだ。身体が自分自身の声を無視し続ける私自身に対して抗議し、完全に言うことを聞かなくなるのも当然だと今では思う。もしかしたら、ブラック企業は私自身だったのかもしれない。

きっとこれからも、夏は私にとって辛い時期になるのだと思う。夏に身体が動かなくなるのは、私が犯した罪に対する身体の無言の報復だ。

犯してしまった誤りはもう消せないけれど、命ある限り、私は自分の身体に対して償いをしていきたいと思う。自分の心と身体の声に耳を傾け、彼らにとってよいことをしていきたい。

こんなことを考えながら、今日も生きているご褒美にスイカジュースを飲んだ。



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