それぞれの戦い
#すくすく子育て を見ました。
不妊治療を知らない人に治療のさわり部分を知ってもらうという趣旨なんだろうか。
短くあっさりしたモノでしたね。
まぁ不妊治療のことを網羅する番組なんて作っていたら何時間編成になるやら…
そもそも不妊治療と一言に言っても十人十色すぎて、全然違うストーリーがあるから、型にはまった説明なんて、できないとは思うけれど。
でもそういうドキュメンタリーで2時間とかやってくれる日もきて欲しい。(笑)
とりあえず10/16放送分の流れに沿って
感想とか自分の経験談とか、触れたい事を書き連ねて行きます。
やっぱり、不妊治療について知らない人にこそ、知って欲しい、という想いは多くの当事者が持っているだろうし、私もそれは大前提。
何度でも書いちゃう、経験談。
理解する気のある人になら、いくらでも語らせて欲しいよ。
講演会でも開きたいところだけれど、残念ながら職場という身近な場所には、心ない人間もたくさんいるので、なかなかオープンにできないこともある。。
不妊の原因
男女大体50%ずつってやつですね。
内訳は特に言及なし…詳しい人なら答えられるのでしょうが、私はあまり詳しくないです。
私たち夫婦の不妊の原因は、不明です。
卵子起因の何か、という事までは分かってますが。
ただ触れて欲しい、知って欲しいと思うのは、
原因が分からないということも珍しくない事。
原因に関わらず治療の負担の多くは女性が負う事。
男性不妊に対する無理解によって、不妊に関する質問や心ない・不用意な言葉をかけられるのも女性に偏りがちな事。
患者仲間の中には、男性不妊が原因という人も少なくないですが、
それにも関わらず、自分自身(妻側)が治療のことで他人から責められる、急かされる、傷つけられるというような経験をしているようで、
一言で言うと地獄ですね。
そこで夫側のフォローがなければなおのこと。
男性不妊を認める、受け入れる、というのが難しいなんて聞きますが、
自分のプライドと妻の心、どちらが大事なのか、問うてみたい。
あなたのプライドを守るために、妻は身体だけでなく心にも傷をつけられている事を、良しとするのだろうか?
妻を身代わりに差し出している自分の罪を忘れるなよ…と怨恨があるような書き方してみますが、
特定の誰かに対する言葉ではありません。(笑)
ステップアップと顕微授精
タイミング→人工授精→体外受精の話が一通り説明されていました。
正直、高度不妊治療経験者にとって、タイミング療法も人工授精もなんてお手軽で、楽なものかと思ってしまいます。
でも私もその段階は経ています。
その時はその時で辛いものがあったというか
「まさか自分がこの治療で授かれないなんて」という自分に対する失望感は本物でした。
体外受精に比べれば”たった数万円”の治療費ですが、治療が不要な人と比べると決して安い出費ではなく、受け入れ難かったのも事実です。
まぁその話はともかく、番組では、
精子の量が少ない場合など顕微授精になると説明されていました。
一般的にはそうなのかな。
「顕微一択」という人たちはほとんどが男性不妊なのでしょうか。
ただ私も「顕微一択」の人間です。
夫に男性不妊はありませんが、顕微受精してもほとんどが多核受精という異常な受精を見せるから。
顕微授精ということで精子は1つしか入っていない。
それで多核という事は卵子側の核がおかしい。
つまり顕微授精する理由は、精子起因の多核受精という可能性が加わる事を防ぐため。
稀なのかもしれませんが、そういうケースもあります。
ゴールが見えない
体外受精しても妊娠する確率って、
12.9%ほどしかないんですって。
30歳でも21.8%。
20%程度あるならば、理論上5回すれば100%になりますが
治療すれば妊娠するわけじゃない。
これは大きい負担になっていますよね。
時間もお金も無限にあるというなら、身体的負担は無視して、結果が出るまで頑張り続ける人も多くなりそうですが、
現実はどちらにもリミットがある場合がほとんどですよね。
費用負担、体外受精は50万円強と紹介され、
最大100万円かかることも、と注釈がありましたが、
私は100万円も超えています。
人よりたくさん卵子が採れるのと、全て顕微授精だから。
受精率は低いので実はまだ安い方で、ほとんどを凍結出来ていたら私の体外受精費用はいくらになるんでしょう。
凍結できる受精卵がほぼなく、凍結代が安い分、
採卵を繰り返さないといけないという大きなデメリットはありますが。
「なんでそんなにかかるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
私の治療費については以前かなり細かく触れていますので下記記事参照です。
治療のやめ時、という話もありましたが、
これってかなり厳しい現実の話ですよね。
幸い私自身は「治療をやめる」という選択肢を持たないまま結果が出ましたが、
なんて運が良いことだったと思います。
厳密に言えば一度体外受精にステップアップする前に、子供を諦めるか検討したことがあるのですが、
その時は体外受精という可能性を残したまま、子供のいない人生を選択できませんでした。
治療をやめるという事は、望みを捨てるという事。
自分で自分の首を締める決断。
納得させられたとしても、残酷なことに違いないなと感じます。。
周りの無理解
説明もなしに理解を求めることが難しいのは当たり前ですが、
治療について自分で説明する、というのもまた難しい。
不妊治療の説明には「劣等感」が付いて回る、私はそう思います。
“私には人間が普通にできることができません。
そんなことでクヨクヨ悩み、職場の仲間の足も引っ張ります。”
カミングアウト自体が大きなハードルである事は間違いないと思うんです。
詳しく話そうとすると自分の不出来を再認識する羽目になり、
涙が流れるし、どうか偏見の目を向けないでと願ってしまう。
自分の言葉で絞り出すのは難しい。
かといって「不妊治療をしている」とだけ伝えると、
知識がない人には「いつ目処がつくのか」と尋ねられる。
目処などつきません。
本人がいくら願っても、結果が出るとは限らないのだから。
…だからこそ不妊治療の実態というものを、当事者一人からの言葉で知るのではなく、
社会の事実として、知識として、知れ渡って欲しいという思いがあるのかもしれません。
そもそもカミングアウト以前に、すでに心はボロボロなのが普通。
高度不妊治療患者の半数以上に抑うつ症状がある。
その事実がある限り、
自己肯定感を忘れず、治療だけでなく職場やそのほかの人間関係に変わりなく向き合うというのが、
どれほど難しいことか想像できるのではないかな、と思います。
パートナーとの衝突もあるでしょう。
同僚や家族の無理解もあるでしょう。
誰にも話せないとするなら、その孤独感は想像するのも恐ろしい…
私自身は自分がどこに吐き出してどう消化していたのか、
今となってははっきり覚えていません。
泣き喚きながらnoteに書くことで発散していたこともあるだろうし、
Twitterもはけ口になっていたはず。
ただ家族にはあまり受け入れられていなかったと思います。
治療を始める時から家族(母、姉)には話していたのですが、
子を望む気持ち自体は理解されていたものの、
治療が全てではない、自然妊娠できるかもと何度も言われました。
いつまで続くか分からない高額治療の負担についても、
働いてさえいれば、と言われていました。
今思い返しても、顕微授精ですら受精しないという私の最も深刻な問題と、
それによってどれだけ私のメンタルが侵されていたかなんて、
あまり理解されていないように思います。
結局個々の問題がどれほどのものか、どれほどの負担か、
想像するのは、治療を知らない他人には難しいのだとつくづく感じます。
事細かに治療の詳細を話したとて、
聞いたり読んだりするのと、体験するのには大きな差がある。
これはどうしようもない事だけれど…
仲の良い友人でも、完全な理解なんて期待できないというのは、
私自身身をもって体感しているところです。。
それぞれの治療
誰がどの治療の段階で、どんな問題を抱えているか、
あまりにも多くの例がありすぎて、
どんな番組でも網羅する事はできないでしょうが、
事の深刻性…今も治療を続けている人たちの想いはいつかどこかで、必要な誰かに、ちゃんと伝わって欲しい。
子供を授けるという一番の解決方法を確実に与えられる人なんていないけれど
治療に向き合う人を本当に支えられる人が身近に存在して欲しい。
簡単なことではないけれど
全ての治療当事者に
納得のいく人生を歩む方法を見つけて欲しい。