山小屋人
前回投稿から少しお休みしておりましたが、
今回は山小屋で働く人について書こうと思います。
山小屋に来る人ってどんな人がいるのでしょうか。
私は当初、『岳』に出てくる島崎三歩さんのような山男や俗世を離れた仙人みたいな人が多いのかな、と勝手に想像していましたが、
実際はその想像と比べれば「普通」の人が多かったです。
山小屋スタッフのほとんどは山小屋にいる間は山の恰好しかしませんが、下界の服装をされたら山小屋の人間とは全く気がつかない、そんな感じの人たちが大半です。
ただ「普通」と言っても、
お風呂に毎日入れない、コンビニがない、テレビが見られない、それが2か月〜半年続く、そんな環境にわざわざ来る人たちですからキャラが濃い人が必然的に多くなります。
そんな人たちとの悲喜こもごもは、またいつか書かせていただくとして、今回はもう少し大枠の部分に触れたいと思います。
まずスタッフの出身です。
その年にもよりますが、北は北海道、南は沖縄まで日本全国から集まります。それも首都圏の方が特別多いわけではなくうまく分散しています。
昨シーズンですと東京、茨城、埼玉、新潟、長野、岐阜、愛知、三重、大阪、岡山、広島、愛媛といったところです。
このように分散していることによる面白さは、例えば「方言」が挙げられます。
広島弁と関西弁と飛騨弁といった方言が小屋内で飛び交っているのです。いわゆる「標準語」と呼ばれる言語が当たり前ではないんだな、ということに気づかされます。
あとはそれぞれの出身にある山の話が聞けるのも良さの一つです。
地元から遠い山だとなかなかマイナーな山には登ろうと思いませんが、そこの出身のスタッフが熱心にプレゼンしてくれるので興味が湧きます。
実際に山小屋のシーズン終了後に仲良くなったスタッフのところに遊びに行って、地元の山を案内してもらう、なんてこともあります。
続いてどんな経歴を持った方がいるのか、というと
一般企業の会社員はもちろん、看護師、美容師、保育士、歯科衛生士、消防士、自衛官、大工、カメラマン、システムエンジニア、学生など。
消防士や自衛官、中には国家公務員だった方も来ていて、安定した職を辞めてまで飛び込んでくる人もいます。
一方、看護師や保育士、美容師、歯科衛生士など手に職をつけていて、サバティカル休暇のような形で1シーズンだけ来る方も多いです。こういった職業の方は復職しやすいので山小屋で働くハードルは低いかもしれません。
特に看護師の方は多く、昨年は同じ小屋内に4名も看護師資格を持った方がいました。
もちろんこういった職業の人であっても元々いた職場を離れる、という意味で人生の大きなターニングポイントで山小屋に来る人が多いと言えます。
以上の職種の方以外には夏休みを利用してくる学生などもいます。
このように異なるバックグラウンドを持った人が集まるので、その職業の話を聞けたり、職業病のようなものが垣間見えたり。
山小屋以外の季節労働だとここまでバラエティ豊かにはならないので、大きな特徴と言えるかもしれません。
色々と異なる部分を上げてきましたが、逆に共通点を挙げると、やはり「山や自然が好き」というところでしょうか。登山の話になると熱が入りますし、休暇の時期が近付くと、皆で登山地図を広げて夜な夜な会議が始まります。
登山のスキルについてはまちまちで、アルプス3000m級に頻繁に登っている人もいれば、地方の里山を中心に登山をしている人もいます。そのため「山小屋バイトで初めて北アルプス登ります」という方も珍しくありません。
学生時代に部活で登ってましたという人は少数派で、ほとんどが社会人になってから登山にハマった人が多いのも、少し意外なところかもしれません。
そうは言っても登山未経験で来る方も0ではないです。以前も少し触れましたがnoteの姉妹サイトcakesで山小屋に関する連載をして、本を出版された「吉玉サキさん」も未経験者からのスタートだったそうです。
こういった方々が、一つ屋根の下で同じ釜の飯を食う仲間になります。他の住み込みでも似たような環境はありますが、山小屋ほど四六時中顔を合わせる仕事はないんじゃないかと思います。
そういった環境のため、もちろん性格の合う合わないがあって、楽しいことも辛いこともあります。
ただそれも全部ひっくるめて濃密な時間です。
私のnoteを読んでくださっているのが、どのような方たちなのかはわかりませんが、もし山小屋バイトに興味のある方がいましたら、
ぜひ飛び込んでみるといいのかな、と思います。
特殊な環境ゆえ、「楽しいよ!」とは言えませんが、きっと特別な経験になるのは違いありません。
それでは今日はこのあたりで。
つの
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