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物事を「言い切る」人間は経営者失格
「きっとこうに決まってる」
「絶対に自分が正しい」
「だから正論を相手にぶつけたってかまわない」
「なぜなら正しいのは自分だから」
こういうことが起きるのは、性格が未熟だからです。
思考が稚拙だからです。
私は物事を判断するとき決めつけてしまうことがよくあります。そして、正しいと判断すると即座に主張することも多いように思います。その結果、往々にして思い込みや勘違いによる過ちを犯してしまうのです。
性格の未熟さとは、即座に主張するところです。
思考の稚拙さとは決めつけてしまうところです。
このような性格と思考はおそらく“物事をはっきりさせないと気が済まない”といった性分や“自分の考えは正しい”とする過信が根底にあるからだと思います。
まさしく「中庸の徳」 の欠如と言えます。
儒教の開祖である孔子が、論語において
「中庸の徳たるや、それ至れるかな」
という言葉を残しています。この言葉、とても意義深いものと捉えています。
広辞苑によれば、
「かたよらず常にかわらないこと」
という意味が紹介されています。
簡単に言えば、過不足がなく調和がとれていることだろうと思います。
何事も性急で、極端な判断は、間違うことが多い。人間がもたらす事象のほとんどのケースは、
明確に言い切れないところに真実が存在している
といったことでしょう。
ですから、こと人間関係においての中庸となると、
「判断するときは少しばかり迷いながら」
「決断するときは少しばかり躊躇しながら」
「実行に移すときには少しばかり謙虚に」
「正しいことを言うときは少し控えめに言うこと」
「正しいことを行うときは少し遠慮がちに行うこと」
このようなところに中庸の徳があるのだと思います。
例えば、
「それは間違っています。誰だってわかること!」と言うのではなく、
「それは間違っているかもしれません。誰もがそうだと思わないかもしれませんが」とか、
「それは間違っているとは思いませんが、本当に正しいかどうかもう一度、考えてみませんか?」
こんなふうに言うことができれば、快く受け止めてくれるでしょう。
これが、中庸の精神に基づく「中庸を得た対話」と言える。自分の中に確信があっても、相手の中にご不確かさをみつけても。
ピッシャと指摘しない。
決して言い切らない。
バッサリと全面肯定、否定もしない。
言葉とは多くを語らないところに含みが生まれ、かえって説得力が増すというもの。また、多弁は詭弁にもなりかねないですから‥。
よって、言外に匂おわす余韻やニュアンスを丁寧に扱うとよいと思っています。
中庸を得た言葉とは、私が思うに…歯に衣着せぬ発言、つまり、ずけずけと思ったことを言葉も選ばずに相手かまわず浴びせてしまう、ということは自分勝手な行為と言えるのです。
「自分が正しいからといって、そのまんま言っちゃダメなんです」
「相手が間違っているからといって、そのまんま言っちゃダメなんです」
多少、歳を重ねてきたので、この辺のところがある程度わかってきました。人間関係は正しいか間違っているかを判断するために成り立っているのではなく、お互いが信頼と友好を深めるために育ものでしょう。
だとすると、対話の正しさに強いこだわりを持つことよりも、寛容におおまかな受け止め方ができて、真意さえ掴めば事が足りることの大切さも理解しておくが肝要なのでは?
それが中庸というものなのでしょう。この中庸が分かり実践できると人徳が身につく。つまり、中庸の徳となるわけです。
まとめ
こと人間関係の対話において(心のひだに入り込む)
「明確に言っちゃダメなんです」断定
「全部を言っちゃダメなんです」 極端
「何度も言っちゃダメなんです」 執拗
「直ぐに言っちゃダメなんです」 性急
「そのまんま言っちゃダメなんです」稚拙
これら対話における5つの表現には、破壊の危険性を感じます。
「知者はこれに過ぎ、愚者は及ばず」
言外に滲む表現ができてこそ、人徳の第一歩。私は示唆力と呼んでいます。
※参考までに日本最古の学校・足利学校には、孔子が理想とした中庸(ちゅうよう)の教え、『有坐の器』(ゆうざのき)と呼ばれるものがある。
足利学校では、この由来が書かれた『孔子家語(こうしけご)』や場面が描かれた『孔子観欹器図(こうしかんききず)』を所蔵している。一度、訪問してみるとよい。
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