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初めてコンサータを飲んだ日、心の底から健常者を羨ましいと思った



発達障害の治療を受けるようになって、はや数年が経ちました。

今ではそこそこ中堅(?)の発達障害者ではありますが、たまには治療の初期のころを振り返ってみたいと思います。



※  タイトルにある「コンサータ」とは、発達障害であるADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬の一つです。
ADHDの人は、そうでない人に比べて脳の特定の物質の働きが弱いことが分かっています。コンサータはその物質の働きを活発にすることで、注意欠陥・多動といった症状を改善するとされています。




 *  *  *




初めてコンサータを飲んだ日。


私は「脳内が静かになった…!!!」と感動に浸っておりました。



発達障害の主な特性として「多動」があります。

多動といえば「授業中に椅子にじっと座っていられずにウロウロしてしまう」といった身体行動をイメージされる方が多いかもしれませんが、それだけではありません。

身体だけではなく思考回路もじっとしていられないのです。

思考回路が多動ゆえ、雑念が次々と浮かんできては、それらを考え続けてしまう。
頭が疲れ切って「もう考えたくない!休ませて!」と切望しても、自力で思考回路をコントロールできず、ぐるんぐるん考え続けては疲弊してしまう。
それゆえ目の前のことにも集中しづらく、些細なケアレスミスも多発してしまう。

まるで、自分の思考回路が暴走車であるかのような状態でした。




それがコンサータが効いてきた途端。
ピタッとおさまり、脳内が静かになりました。


例えるなら、「ブレーキのない車にやっとブレーキがついた!」という感覚です。





脳内がクリアにもなりました。

コンサータ服薬以前の「暴走カオス脳」だったころ、私の脳内はたくさんの雑念が脈絡もなく溢れてきてはパンパンに詰まっていました。
空間に例えるならば、高級品からプチプラ品、メジャー商品からマイナー商品まで凡ゆる商品が所狭しと縦横無尽に並べられ、オリジナルソングや販売促進アナウンス、家族連れやカップルの会話などがぐちゃぐちゃに聞こえるドン・キホーテ店内のような状態でした。

コンサータ服薬後の「静謐クリア脳」になると、それが一変。
雑念が溢れて来なくなり、脳内はホテルの一室のようにスッキリ静かになりました。





コンサータを初めて飲んだときの世界が一変した感覚は、初めてコンタクトレンズをつけたときの感覚に似ていました。

私は中学時代から近眼だったのですが矯正はしておらず、高校生になったときに初めてコンタクトを買ってつけました。

ボヤけていた視界が一気にクリアになったとき「うわああああああ…!!すごい…!!!世界ってこんなに鮮やかだったんだ…!!!」と感激したものです。

コンサータによって世界が一変した感覚は、あのときと同じくらい鮮烈なものだったのです。




「静謐クリア脳」を得たことで、私は思考が整理しやすくなり、物事にも集中しやすくなってケアレスミスも減り、生活がラクになりました。





と同時に。

私はどこにもぶつけようがない悔しさを感じるようになりました。



健常者の感覚を知ったことで「皆はこんなに生活しやすい脳で暮らしていたんだ…私はずっと不便な脳とともに四苦八苦しながらやってきたというのに…」と悲しくなったのです。



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