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菅野祐悟作曲 ピアノ協奏曲(初演)

2024.10.12(土) 14:00-    
大阪 ザ・シンフォニーホール

関西フィルハーモニー管弦楽団
第350回定期演奏会
指揮:藤岡幸夫 ピアノ:角野隼斗


私のつたない文章ではネタバレにはならないとは思いますが、演奏会の様子は後日、エンター・ザ・ミュージック(毎週土曜日朝8:30、BSテレ東)で放送されるそうなので、まっさらな状態で視聴したい方は一旦閉じて放送後にでも読んでいただけると嬉しいです。

大阪駅から徒歩で散策。うめきた公演
秋晴れの気持ちのいい日でした
直線と曲線のハーモニーが美しい
遊歩道を下から撮影
Good Hawaiiというイベントが開催されていました
徒歩でシンフォニーホールに到着

「これは今書き残さなければ絶対書けないやつ!」と思って帰路の新幹線で書きはじめた。菅野祐悟さんが角野さんにあててピアノ協奏曲を書きたい!と言って藤岡幸夫さんがセッティング。2022年の夏に藤岡、菅野、角野で密談をして(その時のツイートはよく覚えてる。「菅野さーん、ピアノ協奏曲きますかー?」と恐れ多くもリプライしてしまった。)動き出したピアノ協奏曲。2年の時を経てついにお披露目の日だ。菅野祐悟×角野隼斗のピアノ協奏曲世界初演。是が非でも聴かねばならぬ。2021年1月の角野さんソロ公演以来の2度目の大阪遠征。期待で胸が高鳴る。ドキドキだ。

当日の早朝にご本人からPost。珍しいよね。ドキドキに拍車がかかる(笑)

開演20分前よりおきまりの藤岡幸夫マエストロによるプレトーク。

こんにちは。藤岡幸夫です。
今日の前半は、今をときめくピアニスト角野隼斗くんにあてた、これまた人気作曲家の菅野祐悟さんによるピアノ協奏曲の初演です。菅野祐悟さんの曲っていったら、大リーグの大谷翔平さんの入場曲!

私は大リーグを見てないので知らなかったがどうやらこの曲が入場曲のようだ。1.2億回再生…すごいな…

では菅野さんをお招きしましょう。どうぞ〜
(盛大な拍手)
藤:僕の時と拍手の音が違うなー
菅:差をつけてくださりありがとうございます(笑)
藤:菅野さんの楽曲は関西フィルで交響曲1番、2番をここで初演させてもらいました。あとチェロ奏者の宮田大くんとのチェロ協奏曲も。今日はピアノ協奏曲。どんな気持ちですか?
菅:このホールは音響も良くて装飾も素敵で素晴らしいですね。曲についてはパンフレットを読んでいただければと思いますが、日本No.1、世界に羽ばたく角野さんのピアノですからね。内部奏法、あ、これ言ったらネタバレになっちゃうのか?とかトイピアノ。これは彼の演奏動画を見てインスピレーションがわきました。
彼は作曲もするんですよね。すごくいい曲を書く。なので、これはちょっと気合い入れて書かないと…と頑張りました。
藤:トイピアノ、これホントにおもちゃなんだよね。内部奏法はスタインウェイピアノは基本ダメなんです。だけどシンフォニーホールさんが、菅野祐悟さんのピアノ協奏曲を角野隼斗さんが弾くとなれば、ちょっとならいいです、と言ってくださって…(大きな拍手)
菅:後で手垢まで綺麗に拭き取ります
藤:ピアノ協奏曲っていうけど、これ交響詩だよね。ピアノと管弦楽のための壮大な交響詩。そういうつもりで聴いてくださいね皆さん
菅:ピアノ協奏曲のつもりで書いたんだけどな…(苦笑)
藤:1楽章と2楽章は区切りがわかると思いますが、2から3はそのまま流れるように続きます。わかりづらいかも知れません。関西フィルの音色も含めて存分に楽しんでください。菅野祐悟さんでした。ありがとうございました。

こんな感じだったかなー。ミミズ文字メモでデフォルメ入ってると思います。すみません。その後ベルリオーズの幻想交響曲の解説がありました(後述します)


2階席前方、中央やや上手のお席でした



菅野祐悟:ピアノ協奏曲(初演)

Ⅰ.   ♩=80

始まりがね、ドラからだったのよ。仰天。ドーンと鳴らすでなく擦るような奏法で。曲調は日本古来の森を思わすような、トトロ!って思ったけどピアノが入るともうちょっと壮大な希望に満ちた感じで自分的にはラピュタ。オープニングはそんな感じで続いて場面展開。パァーと陽気な明るい太陽。爽やかな朝日のもと木々も鳥も踊り出す。東南アジアの彩り豊かな自然を私は想像した。タンタン | タタタン | ンタタン | タンタタ (いや違うかも読み流してください)みたいなリズミックなリズムをマリンバ他打楽器奏者が刻み、その上で角野さんが時にメロディを時にアルペジオで装飾時に和音で打楽器的に楽しく演じて、オケも合わさって高揚してゆく。途中トーンダウン、静かに夕暮れから夜になり…再びリズミックになってドラがドーン…そんな曲だった(もうすでに忘却の彼方…悲しき脳細胞)
菅野さんの曲解説によると、

華やかで軽快なテーマではじまる。様々な国や時代の音楽を2024年のフィルターを通して映し出す。特徴的なのは中間部のミニマルなスタイルから繋がるJAZZやラテンミュージックの雰囲気のピアノのアドリブパートだ。スコアにはアドリブと記譜しながらあえて音符を書いた。しかし角野さんにはスコアに記された音符を忘れて存分にアドリブで遊んで欲しいと伝えた。クラシック、JAZZ、ラテンそのどれとも違う新たなスタイルの音楽が出てくるのを楽しみにしている。

とあるが、私にはどこがアドリブなのかさっぱり分からなかったよ(笑)。

Ⅱ.    ♪=160

ピアノの弱音で始まる緩徐楽章(…とは言えないのか?)。とても美しくてこれぞHayato Suminoでしたよ…短調の3拍子でテンポ速めのワルツ、なのかな。雰囲気的には人生のメリーゴーランドが近いかな。ファゴットとピアノの掛け合いはショパンのピアノ協奏曲第1番を彷彿させた。オーボエの彿田さん素敵だった(いつもBSテレ東で見てるので生演奏が聴けて感動)。もろにトイピアノのソロが入って、角野さんは両手でトイピを奏でていた。かわいらしい音。すぐにグランドピアノに戻って、音質曲調ガラッと変えるのはさすがです!後半にもトイピが入ったんだけど、低音で硬さのある音、そう、映画ファーストラインで魅せた効果音のような音が鳴って(おもちゃなのにby Mo)自在に操ってすごいと思った。メロディは忘れてしまったがとにかくこの楽章を私は気に入りました!藤岡Moも踊ってるようで楽しかった。

菅野さんの解説

冒頭の主題はポーランドに旅行した時に書いたメロディーのメモが元になっている。ショパンの時代のスタイルから現代までを変奏曲形式で駆け抜ける。トイピアノを使用するアイデアは、角野さんが自身のコンサートで使用しているのを見て思いついた。

Ⅲ.    ♩=120

角野さんは1本指奏法で効果音的にピアノを鳴らす。徐々に演奏はエスカレート。内部奏法、タオルで押さえて音色変化、直接指ではじく、ハープ的にシャララーンと鳴らす。内部奏法、ちょっとどころでないよ(笑)。これはどこまでが作曲者の指示なのだろうか。ティンパニが面を擦って砂が飛ぶような音を演出。ドラ(擦る奏法)とピアノのセッションなんて聴いたことないよ…。自然の様々な表情を時に荒々しく時に優しく、効果音で紡いでゆくような実験的な音楽に思えて、「かてぃん、オケバックにステージ上でラボやるんかー」って思った笑。すごく心が苦しくなるような曲調からいっときリセットされたような光を感じる場面があって、「自然を前に人間なんてちっぽけな存在なのに、こんなに環境破壊しちゃって…立ち止まって考えるべきだよ」なんて事を考えたり…(個人の感想です笑)。とにかくこの楽章は打楽器奏者に目が釘付け(2階の席にしてよかったかもしれない)。金属の鳥籠みたいな柵を弓で擦ったり巨大な銅板を擦ったり、ありとあらゆるものでありとあらゆる奏法で効果音を生み出し、そこにピアノとオケが溶け合って壮大な大地の物語を繰り広げていた。コントラバスからもあまり聴いたことない低音鳴ってたなぁ。
後半4拍子の8分が 12312312のリズミックな部分があってスパイ大作戦のようなスリリングな感じだったよ!もちろん角野さんはノリノリで和音でリズム隊やるし、弦の旋律美しいし金管が華やかにフィナーレを飾って。地球の自然の映像からパーンして宇宙から俯瞰で地球をみているようなそんな気持ちになった。確かに壮大な交響詩でした。

菅野さんのプログラム解説

ティンパニをブラシで擦った音が砂と混じり合ったら?ゴングをラバーマレットで叩いた音が雨の音と混じり合ったら?どんな響きが生まれるのか。ピアノはオーケストラの不思議な響きに呼応するように大地とのセッションをはじめる。コンサートホールでは実際の大地の音は聞こえないが、演奏者や聴衆の記憶の中の大地の音とのセッションになる。楽器の概念がアップデートされた世界を脳内で完成させる。クラシックの文脈を飛び越え、ジャンルの垣根も越えて、未来に向かう新しいピアノコンチェルトを目指した。


終演しても呆気にとられてスタンディングはできなかった。予測をだいぶ超えるコンチェルトだった。ブラボーが飛び交う。盛大な拍手のなか、藤岡マエストロが客席で聞いていた菅野さんをステージ上に呼び込む。お3方で挨拶。どの1人が欠けても成り立たない音楽。聴くのに必死であまり俯瞰で見れなかったが、この曲はオーケストラも大変だったに違いない。藤岡さんもまとめ上げお疲れさまでした。世界初演に立ち会えて嬉しかった。

何度かカーテンコールの後、藤岡さんが角野さんに「行って!弾いて!!」とジェスチャー。菅野さんをハープの後ろまで連れてゆき、そこからお2人は観賞。
「この後に何弾けばいいか困っちゃうのですが、年始めに共演させていただいたドラマのテーマソング、さよならマエストロのピアノソロバージョンを弾きます」(肉声が聞き取りにくく違ってたらごめんなさい。実際は弾き始めて「あ〜!」と理解した私)

前奏なくサビを弱音で弾き始めた角野さん。とても素敵だった。その後前奏パートも織り交ぜるながら盛り上げ、Aメロからサビへ(私の大好きなせつないBメロは顔を出すもあまり弾かず、いやん飛ばされたいけずぅぅ〜でした笑)。サビのメロディを自然すぎる転調で何度もエモく演奏して最後は再び盛り上げて華やかに。そして落として静かに奏でてチャラン。

これだから!角野隼斗!!
聴衆を引き込む構成、さすがでした。瞬時にあのドラマがフラッシュバックしたし、また違った感動を得た。後ろで聴いてた菅野さん、どんな気持ちだったかな。
知ったメロディ、曲で安心したファン大盛り上がりで前半終了となりました。

幕間にPostした私の投稿


ベルリオーズ:幻想交響曲

プレトークで藤岡さんの面白おかしい解説を聞かされ(笑)、楽しく聴いた。ベートーベンが亡くなって3年後の曲。にしてこの斬新さ、モダンさ、と力説してましたマエストロ。若き日のベルリオーズの恋ごころ(ストーカー的なw)、失恋から作られた曲。いかに狂気を表現するかが肝とおっしゃってました。
私はこの曲の生演奏を聴くのは4回目。人生初の生角野(2020年1月の大宮ソニックシティでのラフ2)のカップリング曲だった(アマチュアオケとの共演)。2023年11月のクラシックTVでの公開収録では「断頭台への行進」にスポットを当てて、清塚さんの解説聴きながら。それから今年の5月のモンテカルロ響。今回の関西フィルの幻想は割とオーソドックスだったと思う(そこまで狂気は感じず)。印象的だったのはマエストロも説明していた3楽章の雷の部分。ティンパニ6台を4人の打楽器奏者が操って迫力満点!視覚的にも楽しめました。コールアングレと裏で奏でられたオーボエとの掛け合い、5楽章の怒りの日の旋律に姿見えずとも響く鐘がブラボーでした。
前半が人間を超越した音楽だったので、後半は人間臭さを感じる幻想でちょっとホッとする感じもありましたね!華やかに終演。関西フィルの皆さま、藤岡幸夫マエストロ、ありがとうございました。楽しかった!!!

以下自分用覚え。予習で聴いた2024.9.18 14時放送、NHK-FMのクラシックの庭の解説より

ベルリオーズは1803年フランス南東部のリヨンに近い町で生まれ、独学で音楽を学んでいった。19歳の1823年にパリ音楽院に入学し遅まきながらも本格的に作曲を学ぶ。1830年(27歳)、幻想交響曲を作曲。5楽章から成る大作でそれぞれの楽章には副題がつけられ、初演の際には内容を説明するプログラムが配られた。初演が大きな成功を収めただけでなく、この年には芸術家の登竜門だったローマ大賞も受賞し作曲家としての名声が急速に高まった。幻想交響曲はベルリオーズ自身の失恋に基づいていると言われている。作品全体にあらわれる恋人をあらわす旋律を「イディフィクス」と呼んだ。
第1楽章 「夢と情熱」
恋人との出会いとその喜び、興奮
第2楽章 「舞踏会」
第3楽章 「野の情景」
第4楽章 「断頭台への行進」
青年が思い余って恋人を殺してしまい断頭台で処刑される様子を描く
第5楽章 「ワルプルギスの夜の夢」
死後に見た夢の世界。恋人の旋律はグロテスクなダンスすの音楽へと姿を変え、死者を弔う鐘と怒りの日の聖歌の旋律が聴こえてくる。
(スペインの名指揮者アルヘンタの1957年の録音が放送)


角野隼斗のために書かれたピアノ協奏曲を聴くために全国からファンが集結。さながらお祭りの様でした。ご挨拶できた方お話できた方、あの空間時間を共有できた方、自宅でドキドキでSNSを眺めていたであろう皆さま、ありがとうございました。
当日の秋晴れが象徴するように、音楽家の皆さまの未来を祝福するような素晴らしい演奏会でしたね!


「各地で再演する計画を練ってます」…
藤岡さん、是非ぜひ実現させてくださいませ!
1回だけではもったいないです!
聴きたい方が各地に居ます!!
この曲が普遍的なものになり
後世に引き継がれていくといいなぁ


最後に菅野さん、素晴らしい作品を生み出してくださりありがとうございました。私は藤岡さんのエンター・ザ・ミュージックでのチェロ奏者の宮田大さんにあてたチェロ協奏曲で菅野祐悟さんを知りました。「十六夜」と題されたその曲に打ちのめされ、お名前を気にするように。冒頭にも書いたが2022年の夏に角野さんと繋がった時はもう歓喜!「ピアノ協奏曲きますかー?」とついリプライ笑。2022年12月に放送されたテレビのアナザースカイでショパンの出生地ポーランドに飛ばれた時には、前年にショパンコンクールに挑戦された角野さんの軌跡も思い出してうるうるしてしまいました。2023年2月にサントリーホールで演奏された交響曲第2番を聴きに行き、サクソフォン奏者、須川展也さんへのサクソフォン協奏曲の放送も楽しかった。この後10/26に放送が予定されてる2024年2月初演の神尾真由子さんへのバイオリン協奏曲もとてもとても楽しみにしています。
4月にさよならマエストロのテーマ曲で実際に角野さんが奏者として入り、最強タッグに昇天。あれがあったから私はキャッチーな曲を想像していたのだけど、ピアノ協奏曲は菅野さんにとってもクラシック界に一石を投じるような挑戦的なものになったのかな、と感じました。角野さんの能力を信じて引き出して作り上げた壮大な協奏曲、大切な作品ですね。ステージ上やサインに応じるお姿、そしてこのPostを見てそう感じました。

「僕はこの30分為に生きています」

かっこいい。すごい覚悟だ…。これからも応援させていただきます。頑張ってください。また角野隼斗と共演があると確信しています(笑)。

最後にプログラムに菅野さんが寄せた言葉を

「角野隼斗という才能は、おそらく1万年後の音楽史にも残っているだろう。
ただそれは音楽の教科書にのるというタイプではなく、神話に登場する伝説の音楽家のように。」