第6回「食べる」を取り戻す
スイジューニューロウ
水煮牛肉と書く。四川料理である。
さっぱりした字面とは裏腹に実物のヴィジュアルは極めて刺激的だ。
真っ赤に煮えたぎる油に牛肉や野菜が浸かっており、唐辛子が大量にぷかぷか浮いている。
いかにも辛そうな、口だけではなくそこから体外へと続く管の内側がまるまる焼け爛れそうな食べ物だ。
ひと口食べるとわかるが、ただ辛いだけではない。この料理には、ユーラシア大陸に大輪の華、中華が生み出したテクノロジーが使われている。
文字通り牛肉料理であるが、この牛肉がすごい。
ぷるぷるとして、ただの脂身ではない、しっかりとした食べ応えと旨味のある肉。最初口にした時は「いったいどの部位なんだ!!」と叫んでそのまま店を後にしてしまったくらいだ。
実はこの牛肉、特殊な調理法により筋繊維の中に卵液が染み込んでおり、さらに片栗粉で包まれている。これが、ぷるぷる、やわらかの理由。
油に浸かってテカテカ光る具材を拾い上げて食べる。
辛い、が油でコーティングされているからか、食べられないほどではない。
野菜もキムチ鍋のように辛いスープが染みているわけではなく、野菜炒めに辛いあんかけがかかっているような感じなので、見た目よりもマイルド、おいしく食べられるのだ。
この料理、ビール、ご飯が進む。
減量中は避けてもらいたい。