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【絵本の紹介】テーマ:気持ち・自己肯定感 に関する絵本7選(後半)
「テーマ:気持ち・自己肯定感に関する絵本7選」の後半編です。
前半編では、教育・保育現場で読み聞かせをして、先生方・子どもたちの評判が良かった「気持ち」に関する絵本を3冊紹介しました。
後半編では、さらに「気持ち・自己肯定感」に関するイチオシの絵本を4冊、「自分に正直に」「わたしはわたし」といったメッセージを込めて、ご紹介したいと思います!
④ナンシー・カールソン 著『わたしとなかよし』(瑞雲舎・2007)
わたしには すてきな ともだちが いるの。
それはね…… わ、た、し!
わたしは何をしているときもわたしといっしょ。わたしはわたしを大事にするから、はみがきをして、お風呂で体をきれいにして、ごはんもいっぱい食べる。わたしはわたしが大好き。
この絵本は、前半編で話題にしていた「ドキュメント 72時間」に登場した絵本専門店の絵本バーでも紹介されました。原作は ”I Like Me!” by Nancy Carlson です。文字数少なめなので、英語版で読むのもおススメです。
テーマは「自己肯定感」そのもので、特別なことができていなくても、毎日の当たり前の暮らしを肯定してくれる、そんな絵本です。
⑤サトシン 著『わたしはあかねこ』(文渓堂・2011)
しろねこかあさんとくろねことうさんから生まれたこねこたちの中で、1匹だけ「あかいねこ」がいました。みんなは、あかねこの体を「みんなとおなじ」白や黒に染めようとしますが、あかねこは「そのままのじぶん」の色を気に入っていて……。
こちらも「ドキュメント 72時間」の絵本バーで紹介された絵本で、先生方やスクールカウンセラーの先生が子どもたちに読み聞かせをして、反響の大きかった絵本です。
この絵本の注目すべき視点は、周りのねこたちが、一匹だけ色の違うあかねこをみてビックリしたり、かわいそうだと言って、みんなと同じ色に染めようとしていることに対して、あかねこ自身は「このいろ、きれいでかわいくて、とってもきにいって」いるという気持ちのすれ違いが生じている点です。むしろ「みんなといっしょなんてつまんない」と思っているのです。
さまざまな集団に帰属する私たちは、周りの人と同じであること、協調性が要求され、人と違う言動は好意的に受け取られないことがあります。この絵本の後半の展開は痛快で、「人と同じでなければならない」という同調圧力から私たちを解放し、周りと同じでなくてもいいんだということを教えてくれます。「わたしはわたし」そして、「わたし」のありのままを受け入れてくれる人は必ずいます。
⑥マンロー・リーフ 著『はなのすきなうし』(岩波書店・1954)
子牛の「ふぇるじなんど」は、ほかの子牛たちが飛んだり跳ねたりして遊んでいるとき、いつもひとりコルクの木の下に静かに座って花のにおいをかいでいるのが好きでした。
同じ牧場で育つほかの牛たちの望みは、マドリードの闘牛になって華々しく戦うことです。あるとき、マドリードから5人の男たちが、闘牛に出す牛を探しにやってきますが……。
この絵本は、インターの先生からも推薦されていた本で、英語版は”The Story of Ferdinand” by Munro Leaf です。
こちらのテーマも「わたしはわたし」。文章量は、これまで紹介した絵本に比べて少し多くなりますので、小学生以上を対象に読み聞かせしていただくと良いかもしれません。
この絵本で特に気に入ったのが、「ふぇるじなんど」のおかあさんです。「ふぇるじなんど」のおかあさんは、「ひとりぼっちでさびしくはないかしら」と息子のことが心配になって、どうしてほかのこどもたちといっしょに遊ばないのか、と聞くのです。
ふぇるじなんどは あたまをふって、いいました。
「ぼくは こうして、ひとり、はなのにおいをかいでいるほうが、すきなんです」
「ふぇるじなんど」の答えを聞いた後のおかあさんの対応が素晴らしいなと思うのですが、気になる方は是非この絵本を読んでみてください!
⑦デヴィット・シャノン 著『ストライプ たいへん!しまもようになっちゃった』(らんか社・1999)
カミラは「リマ豆」が大好きなのですが、学校のみんなは「リマ豆」が嫌いだったので、「みんなと同じでいたい」と思うカミラは、ほかの人たちの目を気にして「リマ豆」を食べようとはしませんでした。
新学期の一日目、学校に着ていく服を選んでいたカミラでしたが、突然、体の色が頭のてっぺんからつま先まで、色とりどりのしまもようになってしまい……。
7冊目は、まず表紙のイラストが衝撃的でインパクト大。周りの人の目を気にして、人に合わせて自分をおし殺していると、大変なことに!
体が模様だらけになり、その様子がどんどん悪化していくカミラに対する、周りの人たちの反応や様々な対応に注目です。勇気を持って、自分に正直に生きることの大切さを教えてくれる1冊。こちらも文章はやや長めで、小学生以上におススメの絵本です。
ところで「リマ豆」って何?と思って調べてみると、同じ質問に回答している図書館レファレンス事例が!
どうやら日本では「ライ豆」で検索すると良いようですね。ちなみに、Lima beanという名称は、本種がペルーのリマから海外に輸出されていたことによるそうです。
今回選んだ「気持ち・自己肯定感」に関する7冊の絵本を改めて見てみると、7冊中6冊が海外で出版された絵本の翻訳で、日本の作品は、サトシンさん、西村敏雄さん(イラスト)の『わたしはあかねこ』だけでした。このような絵本が日本で生まれたことは、とても良い傾向だと思います。
インターナショナルスクールに勤務していたとき、職場の影響でしょうか、プライベートでも、今までより自分の意見を主張できるようになり、日本独特の同調圧力の空気にも屈しないようになった気がします。現在はまた、日本らしい学校組織に属しているのですが、共通して「本を通して子どもたちの教育に関わる仕事」ができていることに感謝しています。
以上、「テーマ:気持ち・自己肯定感に関する絵本7選」を前半・後半に分けてご紹介しました。教育・保育現場やご家庭での読み聞かせの参考にしていただけけると嬉しいです。是非、大人の方にも読んでいただきたいです。