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七月堂さんにて、詩と彼女

 七月堂さんに友人と来ていた。絵本や詩集を順番ごとに見ていて、時々ちいさな声で雑談をしていた。午後すぎの少し傾いた日の光が差す暖かな頃、ドアベルが鳴って小柄な女性がお店に入ってきた。恐る恐る詩を本棚から取り出しぱらぱらとめくっている。1冊の本を取り、彼女はレジへと向かった。レジの奥でパソコンでカタカタと作業をされていたお店の女性がレジをしに席を立ち歩いてくる。彼女は店員さんに

「わたし接客業をしているんですけど、毎日笑顔で感情を押し殺して働いていて、ほんとうの自分がわからなくなるんです。
でも、おやすみの日静かに詩を読んでいるときだけがほんとうの自分に戻れる。命を繋ぎ止めてくれている。啜り泣いて寝てまた明日がんばろうって思わせてくれる。だから詩が必要なんです。」
 今にも消え入りそうな泣きそうな声でそんなことを言う彼女を前にして、詩は自己表現で自己満足でと思っていた自分を恥じました。細い繊細な糸でしか繋がらない関係もある。詩は自分の感情のほんとうに隅の隠れたところさえも映し出す不思議な力があるんだと知りました。

いつか、ひとりで泣いてる人にそっと寄り添えるそんな詩集を出したいです。

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