つん

2005年11月生まれ、文章や詩歌・絵

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小枝散りゆく、つゆ知らず

既視感。  昔、私はこの近くに住んでいたことがあった気がする。なんとなく河の感じや道に見覚えがある。朧げなのは10年も前の記憶だからで、小学校に上がる前だった。まだ母と暮らしていたときだ。  この街は交通量の多い、広い大通りよりもうんと幅の広い運河が流れている。河は黒々としていてうねるように流れている。少し潮のニオイが混ざった運河特有の匂いがする。このニオイを嗅ぐのが日常になって暫く経つ。ここでは旧来、船と呼ばれている船の形とはだいぶ違う小さいビル群のような船が河を流れ荷物を

    • 命日

      毎日が誰かの誕生日で死んだ日で、 恐る恐る地雷を踏まないように歩くみたいに生きてる。正確には生きていた。 ひきこもり生活を挟まないといけなくなったのはいつ頃からだろう。 怖いくらいテンションの高いときと、死人のように表情が硬く暗いとき。 どちらも自分なんだけど、どちらの自分も自分に対して離人感があって 真っ二つに分かれちゃったみたいな、そんな感じ。 じゃあ今のわたしはどっちのわたしでこの感情はほんとうは嘘でって、 疲れちゃった。 あなたを想うこの気持ちも嘘だったらいやだな。

      • 時間や距離を、超えていく愛というのものがあるなら

         遠距離恋愛を辛いという人がいる。確かに、彼とはなかなか会えない。離れている距離分、遠いのだとおもう。触れられないというのは温もりがないので、電子の世界で冷たいまま触れ合うしかない。会うたびに、相手が存在していることに喜び、でもそれは束の間の幸せで別れたあと彼は幻だったのではないかという疑念が帰りの飛行機の中で襲う。  でも、なかなか会えない恋人とするHな電話も寝落ち通話もいつか一緒に暮らすようになったら、すべて懐かしくて輝かしい思い出になるんだって思ったら気が楽だし、今を

        • 七月堂さんにて、詩と彼女

           七月堂さんに友人と来ていた。絵本や詩集を順番ごとに見ていて、時々ちいさな声で雑談をしていた。午後すぎの少し傾いた日の光が差す暖かな頃、ドアベルが鳴って小柄な女性がお店に入ってきた。恐る恐る詩を本棚から取り出しぱらぱらとめくっている。1冊の本を取り、彼女はレジへと向かった。レジの奥でパソコンでカタカタと作業をされていたお店の女性がレジをしに席を立ち歩いてくる。彼女は店員さんに 「わたし接客業をしているんですけど、毎日笑顔で感情を押し殺して働いていて、ほんとうの自分がわからな

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        記事

          安楽死救済制度でも救われない。

           20XX年、逼迫した介護による問題で知的障害や精神疾患を抱える者、後期高齢者の安楽死救済制度が法律にて確立された。杏奈は重い、生活に支障をきたすレベルの精神疾患を患っているので、この安楽死制度を受ける側となる。2週間、湖の近くのコテージで余生を過ごしたあと薬物投与で安楽死を図る。ずっと幻覚や幻聴に苦しんでいた杏奈はやっと解放されるんだという思いと、死への恐怖が拭えなかった。幻覚や幻聴って当事者は孤独だ。誰にも感覚を共有できないから。この法案は他の先進国には糾弾されたが、でも

          安楽死救済制度でも救われない。

          砂時計で時を刻んで

           バイトが終わって帰り道とぼとぼ歩いて家に着いた。ただいまーと言いながら、ドアを開ける。母親が険しい顔で待っていて、こう言い放った。「アンタ昨日混血の色男と街歩いとったやろ?隆(たかし)くんはどうしたん?あんな睦まじく話しとって、あれは浮気やろ。」全く身に覚えのなかったわたしは急いで弁解する。「あのね、高木さんはバイト先の社員さんなの!うちとは何の色恋の関係もない。お母さんなんなの、最近。ずっとその調子やけん、気が滅入る。」少し機嫌を直した母は「そうなら良かったわ。アンタ婚約

          砂時計で時を刻んで

          暑すぎて弾け飛びそうな

           朝4時に目覚めても正直困惑してしまうだけで、何をしようかとソワソワしてしまう。昨日約束した親友との作業通話をかけてみるが、出ない。仕方がないからネットサーフィンに時間を使う。1時間半くらいゴロゴロしたあと、今度は電子漫画を読んでいく。今は小学校3年生くらいの時好きだった『ショコラの魔法』という漫画が、自分の中でリバイバルしているのでそれを読む。

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          暑すぎて弾け飛びそうな

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          神さまとのセックスは

           醜男とのセックスは気持ちの良いものとして終わった。わたしは人柱として捧げられたようなものなのに丁寧に壊れものを扱うように彼はわたしの身体を撫でた。彼のゴツゴツした指がわたしの胸や陰部を這うとき、わたしは恍惚とし我を忘れ猫が交尾する時鳴くような甘い声を出した。彼の顔には痘痕と黒子が目立ち浅黒い肌は紅潮していた。深い目元とほうれい線の皺が目立っていた。こんな醜い男のお陰で絶頂に達したと思うとやるせない感情になってしまう。  彼の醜い顔も暗がりだと目立たない。首筋からする少しの

          神さまとのセックスは

          カラカラ喉には炭酸水だね

           朝起きてすぐ、乾いた喉に塩味のポテトチップスを口に放り込んでいく。二度寝をして10時半になってた。好きな人からの着信で再度目覚めた。今起きたばかりだよと笑い会話を続けていく。ポテトチップスを食べて血糖値が急激に上がったからか、身体が怠くて起き上がれない。

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          カラカラ喉には炭酸水だね

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          例えば君が傷付いて•••

          僕はきみの傷口になれるかなぁ きみのためなら死んだっていいんだよ。きみは重いの嫌だなんて言うだろうけどさ、そうでもしないと愛が伝わらないでしょう? きみのためだったら、親を殺しても構わない。全財産を失っても構わない。きみのために生きよう。そう決めたんだ。この覚悟をきみは知って欲しい。もっと僕を愛して欲しい。そんなことを思いながらきみの首に手を回し熱いキスをする。

          例えば君が傷付いて•••

          存在しない、ない。

          話題の本を読み話題の映画を観て、君は中身がないんだね。空っぽの脳みそで生きている。皮肉屋の君は口をとんがらせてそう言う。僕だって好みあるもん。そう思って部屋を見渡したら、元彼が聴いていたCD、友人から貰った服、ばあちゃんから譲られた植木。自分由来のものが何処にもない、ない。存在しない僕。 長い長い細い廊下にこだましていくローファーのコツコツする音。ひとりだ、静寂だ、生唾を飲む。ポワーンと1人ぼんやりしながら歩くのは自分が空っぽなことを忘れられるからいいね。きみがすきなことも

          存在しない、ない。

          いつもシャボン玉の液を飲んでしまう。苦しくて苦い。きみが一生懸命シャボン玉を吹いているのを横目で見ている午後、僕は真横で冷たい麦茶を飲んでいた。夏って胸が苦しくなるね。それはきみに恋しているからかなぁ。汗をかくきみに見惚れて僕も汗をかいて僕らは川に出かけて水を掛け合った。

          いつもシャボン玉の液を飲んでしまう。苦しくて苦い。きみが一生懸命シャボン玉を吹いているのを横目で見ている午後、僕は真横で冷たい麦茶を飲んでいた。夏って胸が苦しくなるね。それはきみに恋しているからかなぁ。汗をかくきみに見惚れて僕も汗をかいて僕らは川に出かけて水を掛け合った。

          田圃道、真っ暗闇……

          田圃道、暗い暗いこわいね 足元とぽつぽつとある街灯真っ暗闇 たぶん合ってる道なのに不安が襲う 怖いから少し早足で歩く あんなに夕陽が綺麗だったのに 山に落ちていってしまって 放送が聞こえてきた ゆっくりとした無機質な声  「こちらは〇〇市放送です。行方不明の男性がいます。年齢60代、頭髪白髪、身長165cm、服装グレーのズボンに白いシャツ、見つけたら〇〇警察まで連絡お願いします。」  急に怖くなった。次の放送はわたしになるんじゃないか、 「行方不明になった少年の特徴は••

          田圃道、真っ暗闇……

          シュワシュワ炭酸水の

           茹だる暑い日に焦がれたアスファルトの上を闊歩します。途中目に入った赤い自動販売機で涼しそうな炭酸水の下のボタンを押し、ゴトンとする音が鳴ったら下の受け取りボックスに転がってきます。キャップを回すとシュッと涼しい音が鳴る。シュワシュワした液体を喉越しゴクゴク流し込むと、お腹に冷たい液体が流れて気持ち良いです。  炭酸が強いからか辛くて目が染みて、涙がぽろぽろ出ます。潤んだ瞳が映す世界は蜃気楼のようでゆっくり揺れていて綺麗です。実は熱がこもって身体が燃えるようなので冷えピタを

          シュワシュワ炭酸水の

          横顔のこと

           死んだ人の曲ばかりだねってカーナビからかかる音楽を聴いて君は笑うの。だって生きてる人の音楽よりも距離が離れていて、その距離感が心地いいんだもの。運転中のわたしは口を尖らせてそんなことを言う。いつもわたしを揶揄う。そして困ったわたしをみてしてやったり、にこにこな顔になる君、出会ってから君のそんな振る舞いに目が離せないでいるわたしはずっと君のことひとり好きなんだろうな。無邪気な君が憎らしい。早くわたしの想いに気付いて?そんなことを思う。君が好きよ、愛してるの。  窓を開けて煙

          横顔のこと

          戦争

           クタクタの足でなんとか玄関まで辿り着いて、ドアを開けた瞬間しゃがみ込む。プラスチックのパックに入ったポテトサラダをプラスチックのフォークでお皿に出さずにそのまま食べる。つまんないテレビ観ながら、時折目に入ってくる月を睨む。たぶん世界が滅んでしまうまでこんな生活を続けるんだろうな......  あと一個ジェンガを引っこ抜けば簡単に崩れ落ちるだろうに、絶妙なバランスを保っている。その造形に大した美しさを見出せず苛立ちすら覚える。何か起きて欲しい。刺激的なことが、この小さな世界