見出し画像

おじいさんしか乗ってない -うすい水色のモコ- #056

自分と同じ車種の自動車に乗っている人を見かけると、仲間意識や親近感が湧いてこないだろうか。

自分でそう言っておいてなんだが、私(たち夫婦)はあまり親近感を抱くことがない。

なぜかというと、同じ車種に載っている人は、なぜかおじいさんばかりだからだ。

われわれが乗っている車は日産のモコという軽自動車で、うすい水色をしている。妻が10年程前、20代前半の頃に買った車だ。

「…おじいさんしか、乗ってない」

ある日、妻は私に打ち合受けるように言った。自分と同じ車に乗っている人を見かけると、運転席にいるのはいつもおじいさんなのだという。

「え?そんなことある?」

彼女はモコ(愛称「モコっちゃん」)を主に通勤に使っていた。当時私たちは付き合っていたものの一緒に住んではおらず、私はまだあまりモコっちゃんに乗る機会がなかった。社会人になりたての彼女が新車で買った車に、おじいさんしか乗っていないことなどあるものか。私は半信半疑だった。

「そうだよね…、やっぱり勘違いかもしれない」

首を傾げつつも、彼女は自分に言い聞かせるようにそう言った。

その後間もなくして私たちは一緒に住むことになり、私もモコっちゃんに乗るようになった。そして徐々に確信を深めていった。

おじいさんしか、乗っていない。

私たちが見かけたうすい水色のモコにはほぼおじいさん、そして助手席にはおばあさんが乗っている。大抵はおしゃれなもみじ・四つ葉マーク、いわゆるシルバーマークがついている。一方、当初われわれの車には初心者の若葉マークだ。

たまに少し若く見える方も乗っている。しかし、大抵はおそらく40-50代の方であって、20代の方には未だお会いしたことがない。

ある車好きの友人は言う。

「同じ車に乗っている人には親近感を覚えるよ。車種によっては一緒にツーリングに行ったりするんだ」

おじいさんたちとのツーリング。なぜだろうか、あまりテンションが上がらない。

いや、おじいさんが悪いというわけで決してはない。気を悪くされた方がいらしたら申し訳ない。しかし、私たちは同じ車を見かける度に、なんだか落ち着かない気持ちになるのである。

モコには白、ワインレッド、紺、チョコレート色、などうすい水色以外の色もある。それらの色のモコには私たちと同じくらいの年齢の方や比較的若い方が乗っている。しかし、我々の乗っているうすい水色のモコのドライバーは、ほぼもれなくおじいさんなのである。

もう一つ不思議なのは、この10年間、ずっとおじいさんしかみかけないことだ。ドライバーが年を経ておじいさんになったという感じではない。最初から、今までずっとおじいさんなのだ。

どこかにおじいさん向けのモコ専門ディーラーがあるのかもしれない。

「軽自動車が欲しいのです。私たちにはどの車がおすすめでしょうか?」

おじいさんは、おばあさんと手を取り合って買いに来る。今後大切に乗る車である。

ディーラーは笑顔でゆっくり頷き、丁寧に、しかし確信に満ちた口調で言う。

「おすすめはモコです。色は、うすい水色をお勧めします。同じ年代の方はみなさんうすい水色のモコに乗ってらっしゃいますよ。大人気です」
「大人気ですか」
「そうです、大人気です。シルバーマークもよく似合う色ですよ」

そして、今日もまたおじいさんのドライバーが一人誕生するのである。

モコに乗ること10年と少し。距離は6万キロちょっとだ。われわれは夫婦は現在それぞれ40代と30代の前半だが、胸をはっておじいさん、おばあさんになるまで大事にモコっちゃんに乗り続けようと思っている。そして、彼らと一緒に楽しくツーリングに行くのである。

(追記1)
ツーリングはバイクではなく自動車でも使うのだと今回初めて知った。またの名を、「オフ会」「オーナーズミーティング」もしくは車名をいれ「〇〇ツーリング」というそうだ。英語では”group drive”, ”car convoy”などというらしい。「moco group drive2025 ~未来へ駆け抜けろ!~うすい水色のモコ、オーナーズミーティング」などがどこかで開催されているのだろうか。

(追記2)
妻は購入時「クリーム色」と「うすい水色」を迷い、うすい水色にしたらしい。2014年製の日産モコのカラーバリエーションをChat GPTに尋ねると、うすい水色は「プレミアムブルーパールPremierm blue pearl」という色らしい。他の色の表記もご紹介する。

・ミルクティーベージュメタリック
・アーバンブラウンパールメタリック
・スターリングシルバーメタリック
・ブルーイッシュブラックパール
・ショコラティエブラウンパールメタリック
・ブルームピンクパールメタリック

どんな色なのかあまりわからないが、わくわくしてくる。

(追記3)
妻は高3の時のクラスで「ばあや」、つなまよは大学院生の時、ある後輩に「じいじ」と呼ばれていた。

2025年2月23日執筆、2025年2月28日投稿

★次回投稿の告知★
次回は3/7(金)に、つなまよラジオ#003「看護師と心理師の夫婦は健康に暮らしているのか? つなまよ家の健康事情」(お便り「孫パンダ」さん)を投稿予定です。

医療専門職の同僚たちや、私たちは、普段偉そうなことを言っておきながら果たして健康に暮らしているのでしょうか!?

医療スタッフの裏話や、免疫力を高め、風邪をひきにくくなる秘訣などなど縦横無尽に(つまり、まとまりなく)語ります。お楽しみに。

■プロフィール、自己紹介はこちら

■「つなまよラジオ」始めました

聴き流しできるような、聴いても聴かなくてもいいような、そんなラジオです。お便りやご質問お待ちしてます。stand.fmかpodcastで聴けます。


いいなと思ったら応援しよう!