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恋愛コラムニストの憂鬱

東京のカフェっていうのは、どこもかしこも基本的に椅子が高すぎる(or低すぎる)というのが私の中で定説になりつつある。


パスタランチを頼んだらワンプレートで、パスタは握りこぶし1つ分(もしくはそれに満たないかくらい)、その横に黄緑、赤紫のレタスが折り重なって横たわっていて、それは上品なレモンドレッシングで味付けされている。


一緒に出てきたアイスティーのコップはやたら背が高くて細く、細かい氷でうんと内容量がかさ増しされているご様子。

おしゃれというのかケチというのか、もうその辺は東京で暮らしている以上どうでもよくなりつつあるけど、東京のおしゃれカフェは女子の胃を甘く見過ぎ。私達はもっと食べます。


友達の恋の話を聞きながら、パスタ山から3本ずつくらいパスタを巻き取るようにして食べる。

向かいに座った友達は、運ばれてきたパスタになんて目もくれず、ずっと片思い中の彼の話をしている。

どうすればいいのかアドバイスを求められたので、とりあえず私が試したことのある男性の気の引き方というものを伝えてみたものの、「そんなことはできない」ともじもじする彼女。

彼女は私より少し年が上だけど、恋愛経験というものがほぼ皆無らしい。そんな彼女を励ますためなのか、大人になってからは恋愛に不自由をしたことがない自分の環境を自慢したいのか、よく分からないけどとりあえずヒートアップして話をしてしまった。


2時間という長い時間をかけて、彼女の片思いに関する話題を語り尽くした。


そろそろ出ようという話になっても彼女のお皿の上には、パスタもサラダもほとんど残っている。「食べへんの?」と私が言うと、「話してたらお腹いっぱいになって食べられない」といわれた。

私は何となく「恋の力がそうさせているのかなぁ」と思った。(私のお皿の上には、パスタ麺1本も残っていなかった。)



思えば、私も中学・高校の6年間はいつも片思いをしていた。好きな人に良く思ってもらいたい一心で人気恋愛コラムニストが書く本を買ってみたり、ネット情報をあさってみたり。

「好きな人を振り向かせる方法」などを読み、とりあえず実践。(相手の男の子は相当気持ち悪かったろうと思う)人気恋愛コラムニストが書いた本の中で「私は今まで好きな男性に振られたことがない。」という一文があり、私は心底すごいなぁと思ったのを覚えている。


友達の片思い話を聞き家に帰った後、なんだか自分がすごくくだらない人間だと思えてきた。

初めての片思いに戸惑う女性に向かって、“上手く”恋愛をする方法なんてバカ丸出しの話をしてしまった。

恋愛に関してある程度知識が付いてくると、関係がうまく進むことは増えるけど、頭でっかちになる側面もあると思う。(私なんてまだまだガキんちょなんだけれど)


でもねぇ、やっぱり恋愛の才能っつーのは彼氏を切らさないことでも、両想いになることでもなく、どれくらい相手に恋い焦がれることができるかだと私は思いますよ。


あの人気恋愛コラムニストも、読者からの相談に答えつつつふっと、憂鬱になる瞬間があったのかも知れないなぁと今は思う。(ま、私は恋愛コラムニストでもなんでもありませんが。)


その日の晩、彼女とラインをして「恋煩いでパスタほとんど食べてなかったやん。」というと、「お昼まで我慢できず、出発前に小倉あんデニッシュを食べたから。」という返信が来た。

恋煩いじゃなかったんかい。そして、お腹が空いてたとしても小倉あんデニッシュはやり過ぎ。


ツナ缶に愛の手を🤚❤️