パッシブデザインの話–2

つなぐデザインオフィスでは『パッシブデザイン』を用いて設計をします。
しかしながら、『パッシブデザイン』は、まだあまり馴染みがないかもしれません。
一体どういうものなのか、前回に引き続き、簡単にお伝えしてみようと思います。

■パッシブデザインとは

パッシブデザインは日光や風など、誰もが享受できる自然界に存在するエネルギー(自然エネルギー)を活用し、建物の居住性を高める建築手法です。
すごく平たく言えば、使えるものを使って、快適な暮らしを得ようというもの。
要約すれば、以下のようなものです。

・冬は日射を取り入れよう
・夏は日射を遮ろう
・中間期は風を取り込もう
・効率よく換気をしよう

実は上の2項目は日射(太陽光)の話、下の2項目は空気の移動の話です。
前回は上の2項目をお伝えしましたので、今回は下の2項目をお伝えしていきます。

■風を検討する

パッシブデザインでは、風も重要な要素です。
上手に風を取り込むことが出来れば、春と秋の中間期はエアコンなどの設備機器に頼らずとも、心地よい室内環境を整えることが出来ます。

風とは空気の移動です。
空気はどこにでも存在し、熱を伝播します。
しかし、どこにでも存在する分、扱いにくいことが難点です。
その特徴として、暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まる性質があります。
加えて、屋根は太陽光で温まり、更に内部の空気をも温めます。
この性質により、上下階で温度差が生まれ、吹き抜けのある家が寒かったのです。

夏場は上部に溜まる暖かい空気への対策が必要です。
この場合、重力換気(温度差換気)による手法が有効です。
排熱用の高窓を設けることで、下階の窓から入った空気は風となり、上階へと抜けていくため、室内に溜まった熱を排出するのに役立ちます。
また、風は大きな窓から入る傾向があるので、南面には大きな開口部にし、それ以外は小さな開口部とすることで、風を誘引する事が出来ます。

換気

一方、冬は天井に溜まる温かい空気を利用します。
しかし、温かい空気は自然に上昇してしまうため、何もなしでは利用出来ません。
シーリングファンやサーキュレーターなどを使って強制的に撹拌し、室内の空気の温度ムラを均す必要があります。
この時、上下階が繋がる部分(吹抜けや階段など)がたくさんあると、うまく攪拌出来ないため、注意が必要です。

対流

中間期は吹き抜けと排熱用の高窓があることで、自然と重力換気(温度差換気)が可能となります。

人は日常のほとんどを水平移動して過ごします。
階段や吹き抜けは「上下階の視覚的、空間的なつながり」を生み、暮らしの中に「非日常のワクワク感」を落とし込みます。
このダイナミックな空間構成に、吹き抜けは必要不可欠であると考えます。

しかし、「吹き抜けは憧れるけど寒い」と思う方も多いことでしょう。
一昔前にはよく言われていました。

吹き抜けには日差しを取り込むために窓が多く設置されることが多いのですが、窓は壁に比べて断熱性能が低く、多くの熱が逃げていきます。
さらに、建物の断熱性能がそもそも低く、人がいない2階の冷えた空気が降りてきてしまうことがその要因でした。
このことから、「吹き抜けは寒い」と思われているのです。

ところが、技術は進歩し、窓の断熱性能は格段に向上しました。
さらに、建物の断熱性能について、しっかりと考える建築家が増えてきており、少しずつですが、住宅の温熱環境は改善されてきています。
安易な吹き抜けではなく「しっかりと対策された吹き抜け」は、使えるものを有効活用するパッシブデザインにとっては重要な要素です。
戸建て住宅を場合は一度ご検討されては如何でしょうか。

パッシブデザインは使えるものを有効活用する設計手法です。
コロナ禍で「おうち時間」が増え、光熱費が上がり、お家の空間の在り方に目を向けることも多くなりました。
是非、パッシブデザインの考え方に触れ、身近なところから省エネルギーな暮らしを考えてみては如何でしょうか。

【心地よい暮らしをつくる建築設計事務所・つなぐデザインオフィス】

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