なぜ多くのSFAやMAツール(Salesforce/Hubspot)導入系のDXプロジェクトが失敗するのか?
こんにちは、ブッシンの綱島です。
DXという言葉が流行り始めて久しいですが、その筆頭とも言っていいSalesforceやHubspot等のSFA、MAツールの導入。僕自身、前職で事業部に導入した経験を持っていて、プロダクトの素晴らしさを身にしみて理解しているつもりです。
ただ、最近になって導入したけど使いこなせてる気がしない、導入したけど上手くいっていないという声も沢山聞くので僕なりに導入に際して気をつけるべきことを書いてみようと思いました。
こいつ誰・この記事何?
改めて自己紹介すると、ブッシン株式会社で執行役員を務めております綱島と言います。この記事を読んでくれたら人となりはなんとなく理解できるかと思います。
そもそも何でSFA・MAツールを入れるのか?
現在、導入前の方や、会社では導入したが正直どんなものか分からないという方向けにこのセクションを設けてみました。
SFAツールとは
SFAツールとは、Sales Force Automationの略。
その名の通り、営業活動や業務の一部を自動化するツールのことで、営業支援ツールと呼ばれるものです。
機能としては、プロダクトごとに違いますが、
企業情報の一元管理
成約までのプロセス自動化
メール等の連絡可視化
営業に関わる様々なデータの蓄積
が出来て、今まで複数の媒体にまたがって管理していたり、シートとかを駆使して管理していたりしていたものを1つのツールで出来ちゃう優れモノです。
MAツールとは
MAツールとは、Marketing Autimationの略。
これも名前の通り、顧客獲得のマーケティングプロセス管理、効率化してくれる優れものです。機能としては以下のようなことが出来ます。
企業接点の可視化
マーケティング施策の自動化や効率化(メール配信等)
フォームやLP生成
SFA/MAツール導入のメリット・デメリット
機能紹介までするとメリットの方は明らかかと思います。
■ メリット
沢山のメリットがあるSFA/MAツールの導入ですが、今回は3つに絞って紹介します。
1. 営業/マーケティング活動の一部を自動化、効率化できる。
一番、注目される理由がここかなと思います。
なんたって優れもの、これ一つで全て解決出来ちゃう的なプロダクトが多いので、例えば商談後のお礼メールが自動化できちゃったり、社内での報告が不要になったり、契約書とかまで自動で発行できたり、本当に便利なんです。
(僕も、前職および起業してから営業活動を行っておりますが、1社に対して行うアクションは、かなり多いです…)
マネージャーになると、どの担当者/企業のプッシュをするか探すのも一苦労!
しかし大丈夫、SFAツールはSlackとかとも連携できて、アラート機能も実装出来きますし、該当企業とのこれまでのやり取りなんかも見れちゃって、サボっている奴をあぶり出せちゃうんです。
(※そんな使い方が目的ではないことは確かです。)
マーケティング担当は、これまでGASや有料ツールを駆使してやっていたメールマガジンの配信や、ディレクションをしながら作っていたセミナー等のLP制作等を全部MAツールで解決出来ちゃいます。
しかも、リスト作成からツール内で完結することが多いので、特定のロジックに沿った配信なんてのもお手の物、猫の手でも借りたいぜが解決するんです。
1獲得、1営業にこれまでかかっていたタスクの多くが、SFA/MA一つで解決出来ちゃいます。
2. 企業ごとのデータがしっかりと蓄積される
個人的に一番SFA/MAツールが優れていると思っている理由はこれ。
営業はマーケティング部に流入の質が悪いと言い、マーケティング部は流入取っても決められない営業力を嘆く。
そんな状態になっている企業様もいるのではないでしょうか?
SFAによってい、営業活動ログやリードの規模感などの情報が明らかになり、どんな経路で取ったどんな企業が決まっているのかなどのデータが丸わかりになるんです。
もちろん、各リードと過去接点なども分かるため、それぞれのリードに対して適切なコミュニケーションが取れたり、より深いナーチャリングフローに上手く誘導したりすることもできるんです。
データが一元管理され蓄積されると、組織連携が活性化され売上向上が狙えるだけでなく、情報連携ミスで起きていたクレームなども無くなり信頼度UPにも繋がります。
3. 正しいモニタリングができる
今まで、沢山のExcelやスプレッドシートを駆使して、社内の関数マスターが組んでくれた謎の関数で解決していた多くのモニタリングがツール導入により解決することが多いです。
更に今までは、「データの型が違う」「列追加で入力がズレた」「関数が壊れた」などの人為的なミスにより起きていたあれこれも、入力規制等を行うことができたりと安心安全な状態になり、解決されます。
特に素晴らしい点は、これまではどの経路で入ってきたリードがどのように成約に繋がったかがモニタリング出来ず、様々な技術を駆使して自社開発を行っていたものを、このツール導入により解決できる点だと僕は考えております。
これにより、どのようなリードナーチャリングが最適化を把握し、そのフローを構築するだけでなく、赤字経路の発見と利益体質の構築に役立てることが出来ます。
モニタリングは、あくまで実態を把握することで、分析とは別ですが、今まで長時間かかっていた課題発見も、これであれば仮説の精度を上げ早期解決に至ることが出来ます。
デメリット
正直メリットが大きいので、どこまでをデメリットと捉えるかは人それぞれかつ、フェーズによるかとは思いますが、簡単にこちらも記載します。
1. 導入するのに工数がかかる
基本的に、「エイヤー」で導入できないのがSFA/MAツールです。
導入するためには、まずどのツールにするかで比較検討をするところから始まり、導入に際してはツールナレッジを深めたり、データを定義したりとかなり工数を取られます。
各担当者にヒアリングを行い、しっかりと業務フローを可視化した後に、構築を行い、新しく構築されたフローや定義に当てはまる形に既存情報を整理していきます。
また、導入に際しては数多くの部署や関係者に説明を行い合意を得る必要があります。
一筋縄では行かないのがSFA/MAツール導入というわけです。
2. 導入するのにお金がかかる
既に世の中には数十の同様サービスがございます。
もちろん、全てのサービスが上記のメリットを完璧に思い通り叶えてくれる訳ではございません。
中には、操作が簡単で導入ハードルが低いものもあれば、Salesforceのようにカスタマイズ性に富んでおり、ある程度の事業モデルに幅広く対応できるものもあります。
しっかりと何を解決するために入れるのかを定義して、比較検討をしていただく必要がありますが、一方で出来ることが多いサービスはそれなりにお金もかかります。
ちなみに導入ベンダーとかを入れるとアカウントサイズによっては、平気で1000万単位のお金が飛びます。
だからと言って、ケチると全然意味のない導入が行われてしまいます。
3. 導入してから使いこなすまでの辛抱が必要
上記2つのデメリットをクリアし、導入したあかつきには、ワクワクが止まらないでしょう。しかし、ここも注意が必要です。
導入を先導したPMはじめメンバーの多くは、その重要性および操作性を理解しているでしょう。一方で、現場で実際に活用する社員の多くは、まだそのメリットを理解しておりません。
事前のコミュニケーションや導入方法を誤ると、必ず「現場理解が足りない」「こんなもの使えない」「業務効率が落ちた」などの声が出ます。
導入して終わりではなく、導入後しっかりと馴染むまでは積極的な布教活動とコミュニケーションを意識しましょう。
以上が簡単なデメリット(起きちゃう失敗)の例になります。
ここまでは、ほか記事等でも良く拝見する内容ですね!
導入前にこれだけはやっておけ
ここからは自身が導入したときの体験から、絶対にやっておいたほうがいいことを記載しておきます。
導入による影響範囲の確認と各担当者とのすり合わせ
先に述べたデメリットにも含まれる内容の対策にもなりますが、営業やマーケティングという業務特性上、ツールの導入は影響範囲が大きいです。
また、これらのツール導入は基本的に、営業推進や企画、マーケティングなどの部が先導して行うことが多いのも特徴です。
そのため、スムーズな導入とリターン最大化を実現するためには、影響範囲を先に把握し、関係各所の協力と理解を得る必要があります。
僕自身が導入をしていた時は、
・現場担当者をプロジェクトメンバーに巻き込む
・導入後に成果を出していたり、みんなから尊敬されている現場の方に率先して使ってもらい模範となってもらう
・導入前に、説明会みたいなのを開いたり、飲み会などのコミュニケーションを取る
等
地道な布教活動を行ってましたので、参考にしてもらえると幸いです。
ABMとRDBMSの概念を理解する
■ ABMについて
基本的にSFAツールも、MAツールも1to1のマーケティングすることに長けており、特にtoBマーケティング領域での成果を狙って設計されているものが多いです。
そんな中で、toBマーケティング領域ではAMB(Accout Base Marketing)といった概念が取り入れられており、これまでの刈り取りとは違い、リードに対して、格付けを行い、フェーズごとにナーチャリングなどを行いながら育成することで、成約数や受注額の最大化を狙うことを目的としています。
また、従来の手法に比べて対企業固有のマーケティングを意図しており、限定的に絞ったターゲットの獲得〜課題特定、クロスセル機会創出等が狙えることもその魅力です。
これらをまとめると、ABMに取り組むことで、より効率的に各企業にアプローチすることができ、様々な課題感を複数サービス導入の案内をすることで解決へ導くことができるようになります。
※あくまで、ツールの土台となる概念がABMなだけであり、ツール導入によりABMが自社で実現できるわけではございません。
■ RDBMS
※ここは専門的なので一旦軽めに終わらせます。
RDBMS(リレーショナル・データベース)の説明から入ります。
エンジニアやデータを触ったことがある人でない限り、聞き覚えの少ない言葉かと思います。
簡単に言うとデータを表形式で管理していきますよ~
ということであり、シートやEXCELで管理するのと似ています。
なんでこの説明をしたかで言うと基本的にSalesforceやHubspotも、このような構造で作られていることが多く、画面設計とかをするときにすごく注意が必要だからです。
簡単に言うと、データ同士が紐付けられるように設定しなければ分析ができないし、一つのデータベースに何でもかんでも入れると保守性が終わる、というジレンマを抱えないためにもこの概念はしっかり抑えておきましょう。
導入の具体的な方法
さあ、ここまで読みすすめると、
・導入に向けた全員の合意
・導入する際に必要な前提知識
が得られているはずなので、ようやく導入に向けて実践的な取り組みに入っていきます。
導入実装に向けて、大きくは3つの工程を踏みます。
・要件定義
・ツールへの落とし込み、開発
・運用と保守
です。
今回はその中でも一番重要な要件定義について話します。
(※落とし込みや開発は、マニュアルとかも充実しているし、運用と保守も要件定義さえおさえていればある程度は楽になるため)
1.導入に向けた要件定義
■ 基本的な要件定義のススメ方
(※システム導入のプロ的な観点ではなく、最短で成果を出すために抑えるべき点だけ記入してます。あくまで模範解答ではないことをご了承ください!)
1. カバー範囲を決める
今回ツールの導入により効率化や管理する範囲を決めます。
企業単位で言うと部署になるかと思いますし、部署単位だと特定の業務領域になる可能性もございます。
2. 業務フローを洗い出す。
最初に取り掛かるべきは、自社で提供しているサービスの流入~受注、受注後の処理やUPCELLまでの流れを含めて業務フローを書き出すことです。
簡単な事例はこんな形です。
色々お作法がある業務フロー図ですが、一旦全体の関係者とタスク、フェーズ、書類やデータの受け渡しが分かればOKだと思ってください。
※詳しく書き方を知りたい方は、この記事を参考にすると良いと思います。
この工程で大事なのは、漏れが無いように、かつイレギュラー対応まである程度洗い出してあることです。理想の業務フローに寄せて書くことも大切ですが、現時点の状況把握をしっかりと行いましょう。
上記を実現する上では、
・現場担当者単位の業務ヒアリング
・実際に業務を隣に座ってみる
等のことが必須です。
しっかりと、現時点での業務フローを明るみに出したら、今度は理想の業務フロー図を作りましょう。
例えば、メンバーが受注申請を上げたら部長への承認アラートが自動で上がり、承認されると自動的にお客様へ受注完了連絡が流れる等。
こうすることで、実際に導入を進める上で、
・各フェーズで必要な情報や記録される情報
・各フェーズでアクションを行う担当者
・各フェーズで効率化できる点
の洗い出しができ、導入する際にどのようなフローが組まれていればいいかが丸わかりです。
3. ドキュメントを作る
ここまでで、
・業務の具体をヒアリングして出来た現状の業務フロー
・導入後に実現される業務フロー
が出来上がったかと思います。
どんなシステムでも同様のことが言えるかと思いますが、運用が始まると想定外の事や、実装上の過不足が多発します。
PMとして、それらに対応していくわけですが、変更を一つするにも影響範囲等を加味して変更していく必要があります。今後のことを考えてしっかりとドキュメント化して、後から変更を加えても分からなくならないように、及び属人化しないようにしましょう。
勝手ながら最低限必要なドキュメントはこちらだと考えております。
・DB表
・導入後の全体のフロー図
・変更点を記載して残しておくドキュメント
・留意点まとめ書
※留意点…例えば連絡NGなどのステータスを最低限どこで管理するかを示したもの
これをサボると社内のSalesforce職人として一生を過ごすことになるので注意が必要です笑
なぜDX化を目的としたSFAやMAツール導入が失敗するのか?
僕がこの記事を書こうと思ったのは決してベンダー否定やツール系の否定をしたいわけではございません。
むしろ最近は、導入コンサルで専門性が高く優秀な企業も沢山あると思いますし、SalesforceやHubspotは正しく使うことで、とても有効的なものだと思います。
一番伝えたかったことは、成果を出すことを目的に進んでいたPJが、
いつの間にか導入をすることが目的に変わっていたり、導入をすることで成果が変わると認識してしまっていたりと、目的がずれないようにベンダーに頼り切りにせず、しっかりと自社に合った形で導入をしましょうねということです。
こういったPJが「導入が進まない」や、「導入したけど費用対効果が思ったように得られない」と言った事象が起きる要因として、
・導入ベンダーに頼り切りになってしまってシステムを理解していない
・導入後に使う現場が重要性や使い方を理解していない
・導入により何を実現したいのかをPJ初期から置いていない
と言ったことが考えられると思います。
こういったことを加味して、ベンダーにすぐに頼るのではなく、使い続けられる効果的なシステムとして導入PJを進めることを検討いただきたいのです。
ちなみに、僕が思うベンダーに頼らないことによるメリットはこちらです。
・コストが浮く
・導入後もしっかりと自社で運用をしていくことが可能で変化に強い
・関係各所との連携など失敗の壁を解決し易い
僕は実際にSalesforceを導入するPJを担当していた経験がありますが、導入に際していくつかの導入コンサルからお見積りをいただきました。
基本4桁万円くらいの額がズラリ…
ツールの導入費用もバカにならない中で、そんな予算もかけられるわけがなく、無事自分たちで勉強して導入しようという手はずになりました(笑)
ちなみに、自分たちで0から勉強して入れる方法でも3ヶ月くらいで実装まで至りました。
ツール側も丁寧にマニュアルとかを用意していますので教材にこまることはないですし、これが出来るようになれば4桁万円を人件費3ヶ月で賄えるのでおすすめです!
良くある課題として、現場がデータを思ったよりも入力してくれずに1on1マーケティングをするのにもデータ不足から出来ないと言った課題も、関係各所との良好な関係維持と、自分たちが現場を見て作った無理のないシステムを実装していくことで実現可能です。
改めて、長々と書いてしまったのですが、
・導入に際して、目的をしっかりと決めて実現できるような状態を目指す
・導入する前に目的や範囲を明文化する
・影響が及ぶ部門にしっかりと説明を行い、同意を得る
・要件定義をしっかりと行い、必要最低限を確実に実現するシステムを作る
・外部に頼り切らず、今後を見据えた社内の運用体制を構築する
がDX化を成功に導くのではと考えております。
最後に...
現在僕が在籍するブッシンでは、マーケティングや事業開発を中心にたくさんの企業様を支援しております。
事業会社出身のメンバーが多く、実際に事業利益を作り出すためにマーケティングを実務レベルで経験しているメンバーが多いので、もし上記のPJを社内で進めるにも知見や壁打ち相手がほしい等の要望があればお気軽にお問い合わせください。
https://forms.gle/axpNShU66qSduZW68
もちろん広告運用なども引き受けてておりますし、内製化支援を目的とした伴走型支援ですので、将来的なコストを大幅に落とすことも可能です。
広告運用の記事やメンバー記事もあるので是非~