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福祉・医療制度改革ズームイン!(3)~介護報酬改定の論点を医療から読み解く~

ニッセイ基礎研究所上席研究員
三原岳


福祉・医療制度改革を論じるコラムの第3回では、議論が本格始動した2024年度診療報酬・介護報酬の同時改定に向けた論点を展望したいと思います。

診療報酬は2年に一度、介護報酬は3年サイクルで見直されており、2024年度は6年に1回の同時改定になります。このうち、介護報酬に関しては、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護給付費分科会で、改定に向けた検討が始まっているほか、診療報酬を議論する中央社会保険医療協議会(同、中医協)と介護給費分科会の意見交換会も開催されています。

報酬改定では例年、与党や業界団体を交えた攻防が展開されるため、現時点で議論の行方を先取りするのは難しいですが、これまでに出ている審議会資料などを通じて、主に医療制度改革の文脈に関して、介護報酬改定の論点を読み解きたいと思います。


審議会や意見交換会のテーマは?

まず、本格始動した給付費分科会に対し、厚生労働省が提出した資料を見ます。ここでは図表1の通り、4つのテーマが掲げられています。


図表1:2021年度と2024年度の介護報酬改定のテーマ
出典:厚生労働省資料を基に作成

これを前回の2021年度介護報酬改定と比べると、1番目の「感染症や災害への対応力強化」が消えた程度で、残りの4つは同じような言葉遣いになっていることに気付きます。このため、従来の報酬改定の流れが継続すると考えても良さそうです。
(4番目の「現場革新」が「生産性向上」になるなど、一部で文言が変わっていますが、内容は同じです)

ただ、今回は6年に一度の同時改定なので、やはり医療との関係を意識する必要があります。そこで、中医協と給付費分科会の意見交換会で挙げられているテーマを見ると、図表2の通り、9つのテーマが上がっています。

図表2:中医協と介護給付費分科会の意見交換会で議論されているテーマ
出典:厚生労働省資料を基に作成


これを見ると、医療・介護サービスの連携強化とか、介護施設における救急医療などが話題になっていることを把握できます。さらに、人生の最終段階における対応では、終末期ケアなどを専門職と高齢者・家族が話し合うACP(Advance Care Planning)の普及なども話題になっています。

以下、ケアマネジャーの皆さんの業務に深く絡むテーマとして、専ら入退院支援や高齢者の救急医療を取り上げたいと思います。



入退院支援や医療・介護連携の詳細

現在、政府は「地域医療構想」という政策を進めており、救急患者などを受け入れる急性期病床をスリム化させるとともに、リハビリテーションなどを提供する回復期機能の充実と、在宅復帰支援を強化しようとしています。

大雑把なイメージは図表3の通りです。つまり、膨らんだ急性期病床を削減するとともに、急性期病床から退院した患者を回復期病床などで受け入れ、自宅に帰ってもらう流れを作り上げようとしているわけです。図表3の右下をご覧頂ければ、医療と介護の連携が焦点になっており、縁遠いと思われた医療提供体制改革の議論が現場のケアマネジャーの業務に影響する可能性を読み取って頂けると思います。

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