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福祉・医療制度改革ズームイン(12)重層的支援体制整備事業で関われる余地は?

ニッセイ基礎研究所上席研究員
三原岳


今、市町村の福祉関係者が頭を悩ませている仕組みがあります。それは「重層的支援体制整備事業」という制度で、通称で「ジューソー(重層)」と呼ばれています。

これは分野・制度を問わず、「支える」「支えられる」という関係性を超えた地域の支え合いを作ることが目指されており、2021年度にスタートしました。

 現時点では実施に踏み切っている市町村は多くないため、ケアマネジャー(介護支援専門員)の皆さんには縁遠い制度かもしれないですが、2024年度改正では「芽出し」と思えるような事項が盛り込まれています。

 今回は重層的支援体制整備事業の概要を紹介するとともに、2024年度改正との関係性を考察します。その上で、ケアマネジャーの皆さんが可能な範囲で対応できる部分を検討します。


重層事業を理解する大前提としての地域共生社会

まず、重層的支援体制整備事業(以下は「重層事業」)を検討します。これは最近、厚生労働省が掲げている「地域共生社会」の考え方に関わります。


厚生労働省が掲げている地域共生社会のイメージは図表1の通りです。つまり、医療や介護などの制度サービスにとどまらず、地域の構成員が支え合う社会であり、雇用創出やワークライフバランスなど広範な内容が網羅されています。

しかも、図表1の下に出ている通り、農林や環境、産業、交通まで意識するのであれば、福祉政策の枠組みさえ超えた地域振興策の側面を持っていることになり、「厚生労働省の施策の範囲を超えているのでは?」と突っ込みたくなります。

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