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(こちらの記事は当初2021/04/16に公開されたものです)
「ちゃんめろ」
冬には深い雪に覆われる小谷(おたり)村に住んでいると、春の訪れが一際嬉しいものに感じられます。冬には真っ白だった雪景色も3月くらいになると見る見るその嵩が減り、4月に入るとところによって地面が顔を覗かせるようになります。
すると雪が溶けるのを待ち望んでいたように、ふきのとうが芽を出し始めます。雪が無くなった瞬間に顔を出せるように冬の間中待ち構えていたのではないかと思うほどに、雪解けと同時に出てくるのです。
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ちなみにこの「ふきのとう」ですが、ここ小谷村では「ちゃんめろ」と呼ばれています。地元の人たちは、まるで「ふきのとう」のことを「ちゃんめろ」と呼ぶことが自分たちのアイデンティティであるかのように、村外からきた人たちに対して「おらほではふきのとうをちゃんめろと呼ぶだ」とすこし自慢げに説明したりしています(注:「おらほ」とは「おれらの方=自分たちのところ」といった感じの方言です)。そして村内にはやたらと「ちゃんめろ」と名前のつけられた施設があったりする訳です。田舎によくありそうな、"地域交流センター「ちゃんめろ」"といった感じです。
そんな、ある意味ではこの小谷村という地域をrepresentするかのような「ちゃんめろ」。ある人は、雪の下で寒い冬を耐え抜いて春に一斉に芽を出すその逞しさに、またある人はその愛らしい蕾の様子に、それぞれ自分の思いを重ねたりしているのかもしれませんね。だからこそみんなが「ちゃんめろ」という時に少し親しみがこもっているのだと思います。
山の春はほろ苦く
このちゃんめろはいわゆる山菜の一つですが、山菜の中でも先陣を切って出てくるので、私の中では春の訪れを告げる味覚の代表です。
少しえぐみと苦味があるので、そのまま食べるというよりは「ふき味噌」という形で食べられるのが一般的です。もちろん小谷村では「ちゃんめろ味噌」です。
今回は、この「ちゃんめろ味噌」の作り方を写真でご紹介したいと思います。
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いかがでしたでしょうか。味と香りをお伝えできないのが残念なところです。お味噌とお砂糖の甘辛さにちゃんめろのほろ苦さと清々しい春の香りが口いっぱいに広がって、これだけでご飯が何杯も食べられてしまいます。
紡ぎ舎のある小谷村は山菜の宝庫として知られています。村には「山菜加工場」もあって、製品化して販売したりもしています。昔は地元の小学校のPTAのイベントで親子で山菜を採ってきて、それを村の山菜加工場に卸して学校の備品を購入する資金に充てたりしていたこともあったようです。地元のお父さんたちがそれぞれ自分の「誰にも教えたくない山菜採りスポット」を持っているので、たくさんの良質な山菜が採れたのでしょうね。
小谷村はこれからが山菜の本番です。紡ぎ舎の周りでもタラの芽やコシアブラと言った山菜が沢山採れます。夕方に家の周りで採ったタラの芽をそのまますぐに天ぷらで頂く。これが本当の贅沢だなと、小谷村に住んでつくづく実感しています。
取材協力:宿パンセ(https://pensee1977.com)