大河ドラマ「光る君へ」第三十話「つながる言の葉」所感
道長、頑張った。晴明、頑張った。
前話からいきなり三年飛びました。えっと、この間都は平穏無事だったのでしょうか。そして、史実ではこの三年くらいの間に、源氏物語の最初の方が散発的に書かれていた(だから、桐壺以外の光君が若い時の話は、短編的要素が結構ある)ということですが、そのシーンもぶっ飛ばしましたね。
何はともかく、三年後。都を干ばつが襲いました。貴族はともかく、庶民は大変。
道長は右大臣だけでなく、何もできない公卿たちや陰陽寮の人たち(帝にも?)にではなく、もう引退していた晴明を頼りました。まだ若そうに見えますが、兼家パパにも仕えていたのだから、結構なお年のはず。本人は乾きにうんざりしていたようですが、道長の「私の寿命を十年やる」との言葉に、ガチの雨乞いをしてくれました。これ「まことに奪いますぞ?」と言っていたから、実際はそんな(寿命を奪う)ことなんてしていないんでしょうね。
このドラマでは呪詛やリスキーな祈祷をする時、何か命に関わるものを引き換えにするイメージを持っている気がします。そんな設定があるか分かりませんが。明子女王さまが兼家パパを呪詛った時は、お腹の子と自分の憎しみのエネルギーみたいなものをなくしましたよね。今回は、晴明自身が身を削った気がします。寿命をやると言った道長の本気、覚悟を受け取ったから。うーん、伊周くん、何を差し出す羽目になるのやら。
まぁそれにしても、すごい人だったんですね、晴明(今更)。死んじゃったかと思いましたが、一気に白髪おじいちゃんルックになるほどに弱ったまま生きていました。この、一晩で一気に老けて白髪になるというエピソード、あちこちにありますね。
雨が降って一件落着、といったところでしょうか。
まひろより濃いキャラ出てきた
ええ、のちの和泉式部さまです。まちょっと「あかね」という名前に違和感ですが。まひろにしても紫式部は「香子(こうこ?かおるこ?)」だったのではないかという説がありますし、叙位されていない人(=本名がわからない人)も「子」のつくそれっぽい名前にすればいいのに。生まれた時(あるいは裳着の時)に名付けるとして、その時は将来叙位するか分からないのにみんな「子」のつく名前つけるわけですから。為時パパが「まひろ」と付けるのは違う気がしました。藤原のまひろも清原のききょうもちょっと変。あかねさんも、あかねという割には初登場のお衣装が綺麗な水色で、これは「和泉式部」という女房名と合っていただけに、「あかね」が違和感でした。
閑話休題。和泉式部さまですね。まぁ古書に残っている記録もだいぶぶっ飛んでいますし、ちょっと情緒不安定気味な感じがまひろとは正反対なので、ギャルだわ〜。
四条宮で出てきた「やまとうたは人の心を種として万の言の葉となりにけり云々」は古今和歌集「仮名序」の冒頭。その後まひろが吟じた歌と合わせて、紀貫之ではなかったでしょうか。百人一首にもとられてる?
今回は、あかねさんのキャラを立たせるために「そんな難しいことを考えながら歌を?」とおっさってましたが、この当時は「古典を踏まえた和歌や会話のやりとり」は常識。もちろん、あかねさんも知らないわけでもできないわけでもないけれど、超賢いギャルなんでしょうね。薄く透ける衣は、実際御簾の奥では夏の部屋着としてよく着られていたものといいますから、あるにはあったのでしょう。涼しげで綺麗でしたが、公任の奥様にはちょっと怒られていましたね。今で言ったら、みんながおしゃれなブラウス着て来た勉強会に、キャミソール一枚で現れたって感じでしょうか。その後酔っ払った時の衣も水色で素敵でしたわ。
倫子さま
三年たっても、彰子中宮さまは引っ込み思案。まだ覚醒していらっしゃいません。倫子さまはあれやこれやで帝の気を引こうとしているのに、殿には冷たい。史実では、後々のパーティの場で部下の前でもいちゃこいていたようですから、これは変ですね。個人の妄想としては、伊周の呪詛が効いている……気がします。だから、伊周がいなくなったらうまくいき出すのではないかと。道長に惚れ込んで結婚した倫子さまですから。あの、全てを鷹揚とこなす倫子さまに、早く戻ってほしいものです。
もう一つ。紫式部は最初、倫子さまに仕えていた時期があるという説があるそうです。公任のところじゃなくて。そう、藤壺にあれこれものを準備したり、いろんなことを仕掛けたりするのは母親の役目です。本来なら、倫子さまが昔の伝手を色々探してサロンを作ろうとまひろに声をかけるという筋が自然です。
まひろに対するモヤモヤ
が、止まりません。言わせてください、今週も。
・雨が降る前に、井戸が枯れたことさえ気にせず物語を書いていたまひろ。ちょっと待て、その墨をするための水は貴重な水なのでは?
・四条宮で、大袈裟に語っていましたが、紀貫之が残したものだということをちゃんと言ってね。まるで自分の考えのように言うのはやめてね。
・「カササギ語り」はおそらく架空の物語。それにしても「体が小さくて女のふりをしていた男」と「体が大きくて男のふりをしていた女」の話は、とりかへばや物語ではございませんか?これ、あと百年しないと出てこないからね。当時としては良かったかもしれないけれど、脚本としては「パクったでしょ、まひろに」としか言えない。それに、あれえげつない話でしょ。
・「娘のために物語を描き始めた」を前回匂わせておいて、今回娘のために書いていないし、娘より書くことに夢中になっている気がする。ボヤ騒ぎの後も、一見「火が燃え広がったらどうするの!」と危険だから叱ったように見えるけれど、どう見ても「せっかく書いた物語を燃やされた」ことへの怒りが混ざっている。ま、相手にしていないという自覚はある。でも、それを悪いと思ってないでしょ。賀茂神社、一緒に行けば良かったのに。だから、書き直そうと思っても、もう書けないのよ。
・母親としては、やはりちょっと違うと思う。道長のことをまだ愛している設定なら、その子に対してこんなに昭和パパムーブで教育だけして後は怒るママにしているのはなぜ?前回までは、それなりに可愛がっていたように見えたのだけれどね。これだと朝ドラでもうやっちゃっている(そして朝ドラではもう親子関係が修復しつつある)ので、NHK的にこの被りはきついぞ。
・まひろ、ちやはママの部分が全然ない。
・とりあえず、主役が残念になりつつある。道長とのゲス不倫がなかったら幾分マシなはずだったのに。
その他
・男性陣が高確率でヒゲになったから、一瞬誰かと思ってしまう。
・隆家くんは、花より団子。前は道長にしじみ持って来ていた。
・賢子ちゃんがやっていた碁石でのお弾き。平成のはじめにガラスのお弾きでやったぞ!あの遊びは平安からあった?
・結局、道長のところでバイトしてた。
・道長、会いに行くのはいいが、自分からまひろを倫子さまに会わせる気?ある意味、鬼やね。
・三回くらい前から、弟惟規くんのキャラ変についていけない。
今日もお付き合いいただき、ありがとうございました。