30歳になってすぐに仕事を辞めて5か月間無職だった僕が語る充実した無職期間を過ごすためのライフハック

!!!本当にヤバいと思ったら病院に行きましょう!!!
家族や他人、行政を頼る事は恥ずかしい事ではありません。

3月 おわりに

 3月末日、僕は会社を辞めた。簡単な書類にサインをするだけで僕は社員ではなくなったのだ。こんなにも簡単な紙切れで7年半という長い時間を過ごした場所との縁が切れてしまうのだな――とサインしている時には思ったのだが、提出する時にはもう忘れていた。
 会社の事で悩み、苦しみ、それでも藻掻いて藻掻いて頭の中の殆どが仕事の事で埋め尽くされていたが突如としてそれが無くなり、頭の中がスッキリとした。それでも後ろ髪が引かれるような感じがしたのは、やり残した事があったからだろうか、それとも将来への不安があったからなのだろうか。

4月 たぶん鬱

 4月になり、僕は正式に無職になった。どんなに疲れていようとも、寝不足だろうとも始業時間の2時間前には起きていた僕が最初にした事はとにかく眠る事だった。疲れ切っていた僕はとにかく外との接触を少しでも減らしたかったし、それが最も贅沢な時間の使い方だと思っていた上に、何もする事が無かったからだ。しかし、2週間が経った頃突然気が付いたのだ、何に対してもモチベーションが湧かないことに――好きなゲームやパチンコ・スロット、アニメの視聴など、何に対しても全くやる気が起きず、食事ですらも丸1日食べない日があった。ああ、自分はおかしくなったんだなとその時に気付いたのだ。
 このままではいつか死んでしまうなと感じた僕は何か簡単な事でもいいから始めなければと靄の罹ったような脳で考えた僕は横になりながらでも出来る、動画視聴やアニメの視聴から始めようと思い立った。そして真の無職期間が始まったのだ。
 最初に視聴したのはアニメだった。いくつかの映像サブスクリプションサービスに課金している僕は最新の物から昔の物まで、とにかく大量のアニメを見続けた。すると不思議な事に少しずつ思考が明晰化されていくのだ。
「この声優は誰だったかな」「この制作会社は他にどんな作品を作っていたかな」「この作品の放送時期には他にどんな作品があったのだろうか」視聴中に沸いた疑問を使い慣れたスマートフォンで検索している内に、少しずつ脳が活性化しているような感じがした。
 その時、久しぶりにスマートフォンを触っている自分に気が付いた。仕事を辞め、家に引きこもるようになった僕は気が付かない内に社会との接触を自ら遮断していたのだ。自分にとって新しい情報の遮断は脳を麻痺させ、人をおかしくするのだろうか、そこから僕はとにかく新しい情報を取り入れ、少しでも社会に関わるべきだと考えを改めた。

5月 それは躁。ふふ、楽しいね。

 世間がゴールデンウィークの期間や過ごし方について賑わっていたが、僕には全く関係のない事だった。なぜなら無敵の無職だから。4月に打って変わって気分は非常に前向きで将来への不安も全くなく、何でも出来そうな気がしていた。その頃僕は大好きなソーシャルゲームに傾倒していた。僕が歪んだ感情を向けているグランブルーファンタジー、そして時間が余って仕方が無かったのでプレイを再開したプリンセスコネクト。時間は無限だからいくらでもプレイ出来るのだ、僕は幸せを感じていた。これまでは少ない時間でなんとか続けていたグラブルをとにかくプレイしまくっていた。それと同時期に大好きだったVTuberの視聴も再開した。ホロライブやにじさんじなどの大規模な箱、小規模の箱から個人勢までとにかく起きている時は誰かの配信を流しながらグラブルをプレイする――とても幸せな時間だった。
 そして5月16日、ソシャ廃となっていた僕に1通の通知が届く。そう、学園アイドルマスターサービス開始の通知である。正直なところ、ゲーム性は某擬人化競馬ゲームに類似しているし、ローグライトジャンルでは同IPの多作品がいまいち自分に嵌らなかった事もあり全く期待していなかったのだが、長年アイドルマスターを知っている身としては気になったのでインストールする事にした。
 そして1日も経たない内に僕はドはまりしてしまった。読み応えのあるストーリーや魅力的なキャラクター、一見シンプルすぎるように見えるが実は奥が深いゲームシステム、大量に供給される二次創作――僕はのめり込み、サービス開始から殆どの時間をこの学園アイドルマスター(学マス)へと捧げて行く事となる。面白いから仕方がないのだ。

学マスにはおもしれー女しかいない

6月 帰ってきた鬱とオタクの人肌

 気温も段々と上がりじめじめとしてきた頃、僕の生活は学マスに支配されていた。AP(いわゆるスタミナ)を溢れさせないように規則正しい生活を送り、プロデュースが可能になればアイドルを育成し、出現した新しいコミュを読む。楽しい…楽しいはずなのだが4月の頃のように少しずつ気分が落ち込んでいるような気がしていた。間違いなく新しい情報は常に取り入れているし、好きな事をして過ごしている。なのに何故か気分が上がらない――そんな時、友人から一通の電話が来た。近況や体調など他愛もない話だったのだが、とても楽しく、暗くなっていた気分も吹き飛んでしまった。自分が無職である現実や考えないようにしていた先の不安を思い出させない明るい友人の声は僕にとって救いになったのだ。
 僕は思い立った。人と話そう、今の気持ちを誰かと共有しようと。仕事を辞める前、入り浸っていた溜まり場を、あのオタク達を思い出した。カードゲームで遊ばなくなってそれなりの時間が経つがそれでもあのオタク達なら受け入れてくれるはず。そして、間違いなく学園アイドルマスターを遊んでいるはず――そう思い僕は久しぶりに外へ出る事にしたのだ。
 僕の考えは的中した。仲間の殆どが学園アイドルマスターで遊んでいたのだ。何時間も話した。キャラクターや二次創作、制作スタッフの事、学マスに留まらず他のアニメの話―――話題はいくらでも尽きなかった。それから僕は1~2週間おきに週末になるとその場所へ赴きオタク達と話をするようになった。充実した日々だった。僕の知っているオタクはあったけえし優しかった。年上のオタク達は圧倒的な知識量で僕を包み込んでくれたのだ。湿度が高かったのは気候のせい?それとも僕の涙のせいだろうか、それともオタク達の汗だったのだろうか。

7月 一般的な人間に手足は4本しかない

 週末はオタクと話し、それ以外の時間はゲームをして過ごす。あまりに充実しすぎている時間を過ごしていた、そんな7月4日、天下のHoYoverseよりゼンレスゾーンゼロ(ゼンゼロ)がリリースされた。話題のゲームという事でもちろんチェックはしていたがこれまでHoYoverseのゲームがいまいち嵌らなかった僕は全く期待していなかった。とりあえず感想くらいは言えるようにしておくかとPCにインストールしプレイを開始した。案の定ドはまりした。特にストーリーの間に挟まれるムービーが素晴らしく、キャラクターが生きているように見える。ゲームシステムもこれまでの同社作品に比べると短い時間で遊べるものが多く、他のゲームもプレイしていた僕にとって遊びやすい物だった。それからは学マスとゼンゼロ、そしてグラブルとプリコネを遊ぶ日々が始まった。
 毎日サブスクを開き新しい映像コンテンツがないかチェックし、YouTubeやTwitchでVTuberの配信を開きながらソーシャルゲームを遊ぶ…怠惰に怠惰を重ねていたがこれまで出来なかった事を回収するかの如く僕はのめり込んでいた。
 そして7月22日、ブルーアーカイブ(ブルアカ)にホシノ(臨戦)とシロコ(テラー)が実装された。ブルーアーカイブ自体は昔からインストールしているものの、プレイ自体は殆どしておらず無料期間にガチャを引いたりストーリーを読むだけだった。しかし、ストーリーで登場したホシノとシロコというキャラクターがあまりに良く、また過去に引くことが出来なかったミカというキャラクターも同時に復刻され、どうしてもそのキャラクター達が欲しくなり、ブルアカのプレイを再開したのだ。
 2次元美少女たちに囲まれ、幸せな生活を送っていた。これが僕の生活の最適解だと疑わなかった。しかしある日突然気が付いたのだ。そう、仕事をしていた頃のように睡眠時間を削っている事に。深夜までソーシャルゲームをプレイし、午前5時~6時頃には起き、更新されたゲーム内コンテンツをプレイする―――とてもじゃないがまともとは言えない生活の状態で、急に僕を焦燥感が襲った。この状態のまま生活していれば間違いなく社会への復帰は困難だろうとそう思った。
 僕は就活を本格的にする事にしたのだ。職安や転職情報サイトへ赴き、仕事を探し、いくつかの面接の約束を取り付けた。

8月 マジで働きたくない

 8月になり、僕はとある会社の面接を受けていた。販売職だったのだが僕には営業の経験がなく、面接を担当していた社長と希望した店舗の店長も渋い顔をしていた。しかし、その業界にとって全くと言っていいほど知識もスキルもない僕はとにかく自己アピールをするしか出来なかった。
 採用の合否については後日連絡致しますので―――そんな事を言われ面接を終えた僕は、落ちたんだろうなと考えながら帰路についた。何社かはすでに書類選考の時点でお祈りメールを受け取っており、失業手当の支給日数も残っていた僕は、しばらくこのままの生活でもいいかなと少しずつ思い始めていた。
 そして8月も後半に差し掛かったころ、1通のメールが届いたのだ。
前略 弊社と致しましては〇〇様にご入社頂けたらと―――
 嘘だろと思った。いや、絶対不採用の流れだったじゃん。無職期間もっと謳歌しようと思っていたのに、僕の覚悟はどうなるんだ。社会に戻りたくない、僕をもうしばらく無職のままでいさせて―――

仕事なんてしないほうがいい。

まとめ 無職生活を充実させるには

1.自分が病んでるなと思ったら誰かに助けてもらおう!

 初動自体はなんとか自力で立ち直りましたが一時的なものなので他者へ頼るか、それでも難しい場合は病院の受診をしよう!病名が付かなくたって人に話を聞いてもらい、思考を整理して解決策を導き出すのはとても大切なことです。

2.映像コンテンツは偉大!余った時間を無限に潰せる!

 YouTubeやサブスクは本当に偉大です。お気に入りのチャンネルや番組を見つけて余った時間を有意義に過ごしましょう。

3.学園アイドルマスターをプレイしよう!

 本当に生きていくモチベーションになった。本当に素晴らしいコンテンツをありがとうバンナム。そして面白いシナリオを書いてくれたシナリオチームの皆さん、そして倉本千奈さん。

4.ゼンレスゾーンゼロをプレイしよう!

 脳みそを空っぽにして敵をぶった切って気持ちよくなろう!でも零号ホロウは虚化するのでどうにかしてください。

5.異性がたくさん出るゲームをプレイしよう!

 可愛い女の子見てれば元気になります。少なくとも僕は。

6.グランブルーファンタジーはやらないほうがいい

 これは仕事だからやらないほうがいい。


あとがき

 仕事を辞めるにあたって、僕自身に未熟な部分が多々あったと反省しているし、改めようと努力をしている。それでも、運が悪かったな、もっと早い段階で見切りを付けていればなとか色々思うところがある。本当に辛くなったり自分に危険を感じたら間に合わなくなる前にさっさと辞めたほうがいい。でも自分の事なのに気付けない人は本当に気付けないんだと思う。
 仕事を変えたり、一時的に行政の支援を受けてみたり、家族に頼ってみたり――仕事を続ける事も前進だと思うけれど、環境を変えたり、休んで次の準備をする事も前進の一つだと思う。でも、それすら難しい状態の人がいて、上手く立ち回れず潰れちゃって、二度と立ち上がれなくなる人もいる。ここ数日はそんな事をよく考える。
 結局のところ僕は運が良かったのだ。家族に恵まれ、友人に恵まれ、没頭出来る何かがあった。本当にそれに尽きると思う。仕事を辞めてから今まで関わってくれた全てに感謝を。


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