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初心者がレバレッジ投資をやるべきではない理由:科学的&心理的視点から徹底解説

投資の世界に足を踏み入れると、すぐに耳にするのが「レバレッジ」や「空売り」といった言葉です。「少ない元手で大きな利益を狙える」という響きは、初心者にとって非常に魅力的に映ります。特に、短期間で資産を増やした成功者の話や、SNSで目にする「億り人」の事例を見れば、その誘惑に抗うのは難しいかもしれません。

しかし、私自身の経験から言えば、それは甘い罠でした。投資を始めたばかりの頃、私もレバレッジをかけたFX投資や個別株の空売りに挑戦しました。「これなら短期間で資産を大きく増やせる」と信じて疑いませんでしたが、結果は散々なものでした。

相場の急変に耐えられず、何度もポジションを解消し、最終的には2000万円以上の損失を出して退場することになったのです。あの頃の自分に戻れるなら、「まずはリスクを抑えた堅実な方法で経験を積むべきだ」と何度でも言い聞かせたいと思います。
この経験を通じて、私は「初心者にとってレバレッジ投資は非常に危険な選択肢である」と痛感しました。本記事では、初心者がレバレッジ投資を避けるべき理由を、科学的観点心理的観点の両面から詳しく解説します。



1. 科学的観点から見たリスク

レバレッジは資産価格の変動を倍化させる仕組みですが、その裏には初心者が見落としがちなリスクが潜んでいます。

(1) ボラティリティ・ドラッグ(Volatility Drag)の罠

レバレッジを使うと、資産価格の変動が激しくなります。しかし、価格が上下に変動すると、損失の影響が利益を上回るため、長期的には資産が減少しやすくなります。

具体例

  • 資産が100万円の場合:

    • 通常投資: 1日目に+10%、2日目に-10% → 100万円 × 1.1 × 0.9 = 99万円(1万円の損失)

    • 2倍レバレッジ: 同じ条件で → 100万円 × 1.2 × 0.8 = 96万円(4万円の損失)

このように、価格変動が激しい市場では、レバレッジをかけるほど損失が拡大します。初心者はこの仕組みを十分に理解していないことが多く、期待通りのリターンが得られない可能性が高いです。


(2) 強制ロスカットのリスク

レバレッジ投資では、資産が一定以上減少すると「強制ロスカット」が発生します。これは証券会社が投資家の資産を保護するために行う措置ですが、初心者には非常に厳しい制度です。

強制ロスカットの仕組み

  • 例えば、2倍レバレッジをかけた場合、元本の50%の損失でロスカットが発動します。

  • 市場が一時的に急落した場合でも、ロスカットされてしまうと、価格が回復しても再びポジションを取るための資金が不足します。

実例

2020年3月のコロナショックでは、株式市場が短期間で30%以上下落しました。このような急落時、レバレッジをかけた投資家の多くがロスカットされ、大きな損失を被りました。


(3) 手数料や金利コストが利益を圧迫

レバレッジ投資では、通常の投資に比べてコストが大幅に増加します。

コストの内訳

  1. 金利コスト: レバレッジを利用するために借り入れた資金の利息。

  2. 取引手数料: レバレッジを利用することで取引頻度が増え、手数料が累積。

  3. ETFのリバランスコスト: レバレッジ型ETFでは、日々のリバランスにより追加のコストが発生。

初心者の誤解

初心者は「レバレッジをかければ短期間で大きな利益が得られる」と考えがちですが、これらのコストを考慮すると、実際には期待リターンが大幅に低下します。


(4) 市場の変動性と予測困難性

初心者は市場の動きを予測するスキルが未熟であり、特に短期的な変動に対応する能力が不足しています。レバレッジをかけることで、予測を外した場合の損失が非常に大きくなります。


2. 心理的観点から見たリスク

レバレッジ投資は、初心者の心理的弱点を突きやすい性質があります。以下では、初心者が陥りやすい心理的な罠を解説します。

(1) 損失回避バイアス(Loss Aversion)の影響

人間は、利益を得る喜びよりも、損失を被る苦痛を約2倍強く感じるとされています(行動経済学者ダニエル・カーネマンの研究)。

レバレッジ投資の問題点

  • レバレッジをかけると損失額が拡大するため、初心者は強い精神的ストレスを感じます。

  • 損失を回避しようとするあまり、早期にポジションを解消してしまい、結果的に損失を確定させることが多くなります。


(2) 短期的な価格変動への過剰反応

初心者は、短期的な価格変動に一喜一憂しやすい傾向があります。レバレッジをかけることで、この過剰反応がさらに強まります。

典型的な行動パターン

  1. 恐怖: 急落時にパニック売りをして損失を確定。

  2. 過信: 一時的な成功体験により、さらに大きなリスクを取る。

  3. 後悔: 売却後に価格が回復した際、後悔から非合理的な再投資を行う。


(3) 長期的視点を持てない

レバレッジ投資は短期的な利益を狙う性質が強いため、初心者が長期的な資産形成の視点を持つことが難しくなります。

結果として起こる問題

  • 短期的な利益に固執してしまい、長期的な投資目標を見失う。

  • 市場の変動に振り回され、投資戦略がブレる。


(4) 自信過剰バイアス(Overconfidence Bias)の危険性

初心者は、最初に得た小さな成功体験を過信し、「自分の判断は正しい」と思い込む傾向があります。

レバレッジ投資との相性の悪さ

  • 自信過剰により、大きなリスクを取るようになる。

  • 市場環境の変化を軽視し、損失を拡大させる。


まとめ:初心者はまず基礎を固めるべき

初心者がレバレッジ投資を避けるべき理由を整理すると以下の通りです:

科学的観点

  1. ボラティリティ・ドラッグにより長期的な資産形成が困難。

  2. 強制ロスカットで復活の機会を失う。

  3. 金利や手数料が利益を圧迫。

  4. 市場予測の難しさによる損失拡大。

心理的観点

  1. 損失回避バイアスにより冷静な判断ができなくなる。

  2. 短期的な変動への過剰反応で非合理的な行動を取る。

  3. 長期的視点を持てず、資産形成の目標を見失う。

  4. 自信過剰バイアスでリスク管理が甘くなる。


初心者はまず、インデックス投資ドルコスト平均法といったリスクの低い手法で投資経験を積むことが重要です。レバレッジは、十分な知識、経験、そして市場のリスクを理解した上級者向けのツールであることを認識し、慎重に取り扱うべきです。

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