見出し画像

『サイコロジー・オブ・マネー』書評:お金と「上手に付き合う」ための心理学

「お金の扱い方って、結局知識よりも行動が大事なんだよね」。
そんなことを言われても、「いやいや、投資って難しいんでしょ?」「自分にはセンスないし」と思ってしまう人も多いはず。でも、モーガン・ハウセルの『サイコロジー・オブ・マネー(The Psychology of Money)』を読めば、その考えがガラッと変わるかもしれません。

この本は、投資や資産運用のテクニックを教えるものではありません。むしろ、お金との向き合い方や、人間の行動パターンを深掘りして、「どうすればお金と上手に付き合えるか」を心理学的な視点から教えてくれる一冊です。


1. 本書のテーマ:お金は「知識」ではなく「行動」で決まる

ハウセルは、「お金の成功は、知識よりも行動によって決まる」と繰り返し語ります。たとえば、株式投資で成功するには、数学的に正しい選択をするよりも、感情や習慣をコントロールする力が重要だといいます。

特に印象的なのは、次のメッセージです:

  • 「お金の扱い方は、IQではなくEQ(感情的知性)に依存する」

  • 「成功は、どれだけ稼ぐかではなく、どれだけ満足できるかで決まる」

これを聞くと、「自分みたいな普通のサラリーマンでも、やり方次第で資産形成できるかも」と思えてきませんか?


2. 心に残るエピソード:お金の「心理的罠」とその克服法

本書では、実話や歴史的なエピソードを交えながら、お金にまつわる心理的な罠を解説しています。ここでは、特に印象深い3つのエピソードを紹介します。


(1) 清掃員とエリート投資家の逆転劇

アメリカで清掃員をしていたリードさんという男性は、学歴もなく、専門的な訓練も受けていませんでした。しかし、彼は地道に優良株に投資を続け、92歳で亡くなる頃には全米屈指の資産家になっていました。

一方で、ハーバード大学卒でMBAも取得していたリチャード・フスコーンは、金融業界のエリートとして名を馳せていましたが、リーマンショックで破産してしまいます。

このような逆転劇は、ファイナンスの世界では珍しくありません。医者や建築家のような分野では、学歴や専門知識が成功の鍵になりますが、ファイナンスでは「人間心理」や「行動」が結果を大きく左右します。つまり、学歴やスキルがなくても、地道にコツコツ続ける人が勝つ可能性があるのです。


(2) 「十分(Enough)」を知る

「もっと稼ぎたい」「もっといい生活をしたい」と思うのは自然なことですが、その欲望が行き過ぎると、最終的には破滅を招くこともあります。本書では、「自分にとって十分とは何か」を考えることの大切さを教えてくれます。

たとえば、月々の貯金や投資額を増やすことも大事ですが、「今の生活を楽しむ余裕」を削りすぎると、結局は長続きしませんよね。資産形成を頑張る中で、どこで「十分」と感じるかを自分で決めることが、幸せなお金の使い方につながるのです。


(3) 複利の魔法

ウォーレン・バフェットの資産の大部分は、彼が60代半ば以降に増えたものだといいます。彼が特別なのは、投資の才能あったからではなく、その才能を長期感維持し、「長期間投資を優秀な投資家であり続けたこと」にあります。つまり、若いうちから始めて、時間の力を味方につけたのです。

複利の力は、まるで雪だるまを転がすようなもの。最初は小さな雪玉でも、転がし続けることでどんどん大きくなる。だから、「少額でもいいから、早く始めること」が大切なんです。


3. サラリーマンにとっての「貯金」の価値

「目的もないのに、貯金して意味あるの?」と思う人もいるかもしれません。でも、本書では「目的のない貯金」が持つ価値についても触れています。

貯金があることで、選択肢と柔軟性を持つことができます。たとえば、仕事が辛いときに「辞める」という選択肢を持てたり、チャンスが来たときにすぐ飛びつけたりするのは、貯金があってこそ。お金があることで、人生の時間をコントロールできるのです。


4. この本を読んで得られること:お金と人生のバランス

『サイコロジー・オブ・マネー』が教えてくれるのは、お金そのものよりも「お金との付き合い方」です。以下のメッセージが特に心に残ります:

  • 「お金は道具であり、目的ではない」

  • 「成功は、他人と比較することではなく、自分の価値観に基づいて満足すること」

お金は人生において重要な要素ですが、それが全てではありません。本書を読むことで、「お金の心理」を理解し、自分にとっての「ちょうどいいお金の付き合い方」を見つけるヒントが得られるはずです。


5. こんな人におすすめ

『サイコロジー・オブ・マネー』は、以下のような方に特におすすめです:

  • お金の扱い方に不安を感じている人
    「自分はお金のセンスがない」と感じている人でも、行動次第で変えられることがわかります。

  • 投資初心者
    投資の「数字」ではなく「行動」に焦点を当てた内容なので、初心者でもスッと理解できます。

  • 資産形成に行き詰まりを感じている人
    「十分」という考え方や、長期的な視点は、焦りや不安を和らげてくれるでしょう。


まとめ:サラリーマンだからこそ読みたい一冊

『サイコロジー・オブ・マネー』は、投資や資産形成に役立つだけでなく、人生全般において「お金との健全な関係」を築くヒントを与えてくれる一冊です。

特に、日々の仕事や家計管理に追われるサラリーマンにとって、「お金の心理」を知ることは、人生をより豊かにする大きな武器になるはずです。

「自分には無理」と思わず、まずはこの本を手に取ってみてください。お金との付き合い方が、きっと変わるはずです!


いいなと思ったら応援しよう!