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仕事人間になってはいけない理由
私が社会人になったばかりの頃、「仕事人間になってはダメだ」という言葉をよく耳にしました。
当時はよく意味が分かりませんでしたが、今になってその理由が分かってきました。
最初に結論を述べてしまうと、なぜ仕事人間になってはいけないかというと、自分の視野が狭くなってしまうからです。
今回、仕事人間がなぜいけないのかについて解説していますが、私が定義する仕事人間は、自分の業務のみに集中してしまっている人の事を指します。
この記事を書くにあたって当然、仕事人間が頭の中に何人か浮かんでいたのですが、全員に共通するのが自分の業務はしっかり過ぎるほどにやっている割にズレたアイディアや方法論が多かったというものです。
このアイディアや方法論がズレてしまうというのは、視野の狭さが原因だと考えています。
自分の経験の範囲内でしか施策が打てないため、有効な打ち手が出せずに根性論に走ってしまうことになります。
具体的には、売上が足りないから施策としてアポを増やすとか、過去の失注先すべてに架電する、メールを送ったりするというものです。
なぜ、自分たちが望む数の案件が来ないのかという問題を改めて見つめるとか、自社として案件を増やすために例えばWebを強化する、新しいパートナーを開拓するみたいな施策が一切出てきませんでした。
この方はお堅い会社から来た人でしたが、結果現場の士気を下げまくって他所に消えていきました。
ちなみにその方は自分の目の前の業務には熱心に取り組んでいたようです。
しかし、自分がやっていた会社の営業とSaaSの営業の違いを学ぶことなく、かつて自分がやっていた時と同じ営業スタイルを強いてきたことになります。
その後、他社でSaaSの営業経験を積んだ方が入社し、組織を整備することになりました。
この現場の士気を下げまくった方は、なぜそうなってしまったのかというと、仕事人間だったからだと思います。
少しでも読書の習慣があってSaaSなどについて学んでいれば打ち手はまた変わってきたでしょう。
私も休日であっても風呂に入っているときやなんとなく歩いているときなどは仕事の事を考えていることが大半です。
ただ、休日は今の目の前の業務よりも、他からのインプットを優先しています。
その一つの方法が読書になります。
業務に直結するような本はもちろん、会社組織全体に関係するような本、全く関係ない本を読むこともあります。
一つ読書によって最近自分の考えがまとまったことがありました。
それは羽生善治さんについて書かれた本である『いまだ成らず』という本を読んだ時のことです。
この本の中で羽生善治さんが「新しく定石を作りたい」といったコメントをするシーンがありました。
今の職場で定石を知らずに定石を作ろうとしている人たちがいて、私はいかがなものかと感じていました。
この羽生さんのコメントは定石を追及して極めたうえで、そこから逸脱した新しい定石を作るというものです。
そのため、定石を知らずにオレ流を貫くこととはわけが違うのです。
この羽生さんのコメントを見てやはり、まずは定石、セオリーを大切にしようという強い決意ができました。
一見すると自分の業務とつながらない分野から情報を得るというのは、何もビジネス業界に関することだけではありません。
例えば、プロ野球の世界で言えば、野村克也さんがヤクルトの監督になってミーティングを行う時にまず選手に説いたのは人生論や人間論だったという話は有名な話です。
これは野球をただやっていただけではなく、読書やその他の経験からそういった話ができたのでしょう。
そして野村監督時代のヤクルトは黄金時代を築きました。
野球界で言えば、今まさに時代の中心にいる大谷翔平も読書家だと言われていますが、読んでいる本は野球とは一見関係ない本が多いです。
その大谷が憧れたダルビッシュ有は日本のプロ野球界においてウエイトトレーニングやサプリメントの重要性を広めた第一人者です。
これも野球に通じる部分ですが、ダルビッシュ以前は今ほど重要視されていませんでした。
このように自分の業務だけに囚われずに、幅広い知見を得ることが大きな成功につながります。
また、個人的な読書の効果として、新しい方法論やマインドセットを知ることで普段の業務へのモチベーションが上がるという効果もあります。
というように、仕事に熱心な人ほど一旦業務から離れて新しい知識を学ぶことが大切です。
仕事に関する話題はここまでにして、次は、人生全体を向上させる観点からも、仕事人間になるべきではない理由について考えてみましょう。
私が最近読んだ本で『DIE WITH ZERO』という本があります。
基本的な主張は、老後におびえて無駄に金を残さず、良い金の使い方をして死ねという内容ですが、これは時間や体力にも当てはまると思います。
20、30代で海外を旅行するのと、50代で海外を旅行するのと、70代で海外を旅行するのは全く違う経験になるでしょう。
仮に仕事に没頭して70代になってようやく海外に行けても一度の旅行で過密な日程で多様な経験をするのは体力的にも厳しいでしょう。
また、20代で海外に行っておけば、もしかしたら日本ではなく、海外に住みたいという夢を持つ可能性もあります。
このように今しかできない娯楽や、今でないと間に合わない決断というものが存在します。
それは目の前の業務に真面目に没頭していると逃してしまう可能性があります。
もし、仕事が楽しいという人はそのままでも良いかもしれませんが、責任感が強く義務的な業務を真面目に取り組める人ほど余暇の時間を意識的に持つことで自分が人生において何を大切にするかという点を考えられるようになると思います。