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かもしれない弁天

「お婆ちゃん、鳥居くぐったら真ん中の道を歩いちゃいけないんでしょ?」


「よう知っとるなあ。参道中央を歩いていけんっていうんは平成になって決められたんやけど、実はワシも『神社新マナー作成委員会』のメンバーやったんや。ワシの案は採用されんかったけど……」


「ふーん。ちな、お婆ちゃんの作った神社マナーってどんなの?」


「参道を七つに区切ってお参りしたい神様の居る道を行くんや。主神が誰で副神が誰っていうんはこの際無視や。ここでいうと、ワシが立ってる道は『お大黒天様』の道やな」


「お大黒天……。私の所は?」


「お前が立っとる道は『お弁財天様』の道や。それぞれ『お七福神様』の所に通じるようにってな。神社マナー講師の連中は細かすぎるといって却下したくせに、二礼二拍手一礼は採用しやがった。あっちの方が複雑やろうに、な?」


「む、難しいことはわかんないけど、とりあえず私の道を行ってみようよ、弁財天だっけ?」


「うむ、女神様やからお前にはちょうどええ」


「私が女児だからって女神がいいっていうのは短絡的な思考であって、その辺が他のマナー講師にさえ見透かされてたんじゃないかなーって……」


「何をブツブツ(仏仏)言っとるんや。ここ神社やぞ、ほら着いた」


「あれ? ここトイレだけど……」


「お便所には〜お弁天様がおるぅんやで〜」



#毎週ショートショートnote
#かもしれない弁天



悪ふざけです。お気を悪くしてください。

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爪毛川太
爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!