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節分胎教
「君、豆を何粒食べるんだい?
数えていたけどそれ30粒目じゃないか。
君は28歳のはずだろう?」
「あら、ずっと盗み見ていたの? いやーん。
実はね、お腹に子供が……」
「えっ? 僕達の?」
「そう。豆はこの子の分」
「やったじゃないか!
そりゃ僕達はまだ出会って半年もないし結婚もしてないけれど、運命の歯車が噛み合う時ってのはこんなもんさ」
「ええ。春には貴方も父親ね」
「うぉー!」
男は雄叫びを上げ走り出すと周囲をひと回りして戻って来た。
「はぁ、はぁ、君、おかしくないか?
「あら、何が?」
「赤ん坊は春に生まれるんだろう?」
「ええ、そうよ」
「まだ生まれていないなら赤ん坊分の豆を食べる必要はないじゃないか」
「あら、ご存知ないの?
節分の豆は数え年の分食べるのよ。
生まれていないから正確にはまだ1歳ではないけれどいいじゃないの。おめでたいんだから」
「そうか。知らなかった。
しかし、なるほど、満28歳の君は数え年では29歳だから……子の分と合わせて30粒食べたわけか」
「そうなのよ。ねー、赤ちゃん」
「何にせよ。豆はいい。たんぱく質と鉄分が豊富だから。イソフラボンの摂りすぎには注意が必要だが食品として食べる分には問題ない。
そうだ、思いついた。
子の名前は僕に命名させてくれ。
この子は『豆』だ。男の子でも女の子でもいける名だ」
「いい名前貰ったね。豆ちゃん」
「うぉー!」
男がもうひと周りしている間、女は残り5粒も口に運ぶ。
豆はいい。カルシウムも含まれているから。
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