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ハイ、不幸体験機~【掌編】965字

「また、奴らがイジメてきたよぉ、ねぇ、ほら、また、なんか未来のなんか出してよ」

うふふ、君はしょうがないなぁ、ハイ、不幸体験機~。

「ふこうたいけん? それで奴らに不幸を味わせてやるんだね!」

うふふ、これは君が使うんだよ。

「何言ってんのさ! 僕が不幸になったってしょうがないじゃないか。もう十分不幸は味わってんだから」

うふふ、理解できないかもしれないけどよく聞きなよ。これ、使うと、他人の不幸、体験できる、自分の不幸、ちっぽけに思える。夢で体験、起きたらすっきり。

「よくわからないけど……いい物なら試してみるよ」

***

うふふ、どうだったかい?

「ひぇ~好きな女の子がよそのイケメンに取られちゃう体験をしたよ。あんな辛い思いは現実ではしたくないなぁ~。あの心の痛みに比べれば、ガキ大将に殴られる痛みなんか大したことがないように思えたよ」

うふふ、体験中は現実にしか思えなかったでしょ? でも、夢から覚めると他人の体験だって思えるから学ぶこともあるだろう? まあ、君にはそんな期待はしてないけどね。せいぜいすっきりすればいいよ。どうだい、別の体験もしてみるかい?

「うん、どんどんやっちゃってよ」

***

うふふ、今度のはどうだった?

「嫌味な二人組がイジメてくるんだ。たまたま機嫌が悪いだけで殴ってくるんだよ、そんな奴らが近所にいなくて本当によかったよ」

うふふ、じゃあ、別の体験もしてみよう。

***

「今度のも強烈だったなぁ……。テストで毎回0点を取って先生にも親にも怒られてさ。さすがに小学生の身で0点はないよなぁと思うけど。いろいろやってみていかに自分が気楽に生きているか思い知ったよ、僕には悩みらしい悩みなんてないもん」

うふふ、君がそこまで考えられるとは思わなかったよ。さ、どんどんいこう。

「うん、じゃあ、次も強烈なのお願いね!」

***

「ZZZ……」

うふふ、実は、これは他人の不幸を体験できる機械じゃないんだ。本当は、自分の不幸を他人の体験のように認識させてしまう機械なんだ。どんなに辛い体験をしてもこの不幸体験機を使えば他人事に早変わりさ。未来の世界では、企業が従業員に使わせることで営業利益が爆跳ねしてるんだ。どんなにコキ使っても従業員たちは他人事にしか思えなくて不満も苦情もないからね。君もいずれまた、毎日たっぷり使うことになる。あはははははは。


2021年10月


見出し画像に写真をお借りしました。

ドラえもんのパロディのつもりでしょうか。何番煎じだっていう感じですが……。授業中にノートの端っこに書いて友達に見せてワイワイやっているレベルです。

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爪毛川太
爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!